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第百九六話 イルクーツク攻防戦(3)

「ソ連の野戦砲を沈黙させたぞ!戦車連隊、前進だ!」


 西少佐率いる戦車連隊は前進を開始する。ボリショイ・ルクからイルクーツクまでの回廊は細く、そこを突破する上でソ連軍の野戦砲が障害となっていた。それをロケット弾攻撃によって無力化することができたので、安心して前進できる。


 もちろん、敵航空機の襲撃にも備えて、九七式自走高射機関砲も随伴している。


 さらに、戦車連隊の先頭には地雷処理車両と地雷処理戦車を配置して、地雷への対策も万全だ。ただし、その分進軍速度は低速となってしまう。


 ――――


 地中貫通爆弾を投下した九八式重爆撃機は、一度バイカリスクの滑走路に帰投し、すぐに爆弾を搭載して再度出撃をする。滑走路を無力化したので、次はソ連軍戦車部隊の動きを封じるのだ。


 60機の九八式重爆撃機は対装甲車クラスター爆弾を搭載し、ソ連軍戦車の上に爆撃を敢行する。このクラスター爆弾は、500kg爆弾ほどの大きさの外殻の中に10発の子弾が入っており、設定された高度に達すると子弾が分離し、パラシュートでゆっくりと降下する。そしてその降下中に、レーザーセンサーと赤外線センサーによって装甲車両を見つけると、目標に向かって爆発し“自己鍛造弾”を発射するのだ。これは、アメリカ軍の“CBU-97 SFW”を参考にして宇宙軍によって開発された。


 さらに、別部隊の60機は地雷投射爆弾を搭載し、ソ連軍戦車の予想進路上に地雷をばらまく。この地雷は小型だが、T34の履帯や底面装甲を破壊するには十分な威力を持っているので、これでソ連軍戦車の動きを封じることが出来るはずだ。


 ――――


 1939年11月23日午前6時


 まだ辺りは暗い。ソ連軍陣地では、日本軍からの攻撃によって情報が錯綜していた。


「砲兵部隊はどうなっている!正確な情報を報告しろ!すぐに日本軍が来るぞ!」


 日本軍からの砲撃は30分程度で終わっていた。野砲からの砲撃としては攻撃時間が極端に短いが、砲兵陣地とは連絡も取れず、どうなっているかは全くの不明だった。


「第3から第8砲兵陣地はほぼ全滅です!野砲は無事ですが、兵士が、兵士がほとんど戦死か重傷です!」


「野砲は無事なのか!?それなのに兵士だけ死傷とはどういうことだ!」


「生存者からの報告では上空で爆発があり、その後、手榴弾か擲弾が降り注いだということです」


「手榴弾の投射だと!?そんな事ができる兵器が日本軍にはあるのか?」


 ソ連軍でも「モロトフのパンかご」と呼ばれる、クラスター爆弾の様な物が実用化されていた。これは航空機から投下され、回転しながら落下する途中に60個の焼夷弾を、遠心力によってばらまくという物だ。ジューコフは似たような兵器を日本も実用化しているのだと考えた。


 そして、さらなる悲劇が報告される。


「第一第二第三戦車連隊が爆撃を受けています!」


「くそっ!日本軍め!随伴の高射砲で応射だ!一機でもいいから撃ち落とせ!」


 最前線に配置していた戦車連隊が、爆撃を受けているとの報告だった。もちろん、航空攻撃に備えて高射砲部隊も随伴させている。しかし、高空から攻撃を仕掛ける日本軍爆撃機に対しては無力だった。


 ――――


 1939年11月23日午前6時30分


「味方の戦闘機は何をしているんだよ!」


 日本軍の爆撃に耐えながら、必死で高射砲を撃ち続けてはいるが、まだ空は暗く、どこに敵機がいるのかわからない。サーチライトにも引っかからない。しかし、爆弾が落ちてくると言うことはこの上空に日本軍機がいるのだろう。


 この部隊は戦車連隊に随伴している小部隊なので、いくら高射砲を撃っても効果は知れている。こういう時こそ味方の戦闘機に来て欲しいと思うのだが、友軍滑走路が破壊されて航空支援が出来ないことは伝わっていなかった。


 ――――


 1939年11月23日午前7時


 ジューコフは考える。航空戦力は滑走路が破壊されて期待できない。日本軍はこちらの攻撃の届かない所から一方的に攻撃を仕掛けてきている。このまま指をくわえていれば、徐々に漸減されて作戦能力が奪われてしまう。


 辺りは十分に明るくなってきており、これなら大規模な地上軍の移動もできる。もう、決断するしか無かった。


「全軍前進だ!損害を恐れるな!ボリショイ・ルクまで押し返して、一気に殲滅するぞ!」


 戦術とは呼べない戦術。そこには連携や作戦など何もない。ただ数の暴力で押しつぶすだけだ。


 日本軍がどんなに強力でも、140万人全てを殺すことは出来まい。例え140万人中130万人が死んだとしても、日本軍を殲滅できれば我々の勝ちだ。


 ジューコフは最も被害が多くなる作戦、しかし、確実に日本軍を殲滅できる作戦を実行することにした。


 ――――


 1939年11月23日午前8時


「梅津司令。ソ連軍の様子が変です。イルクーツク周辺に待機していた戦車や装甲車のほとんどが前進を開始しています。それに、戦車や装甲車の上には多数の歩兵が乗っています。その他、トラックや軽車両にも歩兵を満載してこちらに向かっているようです」


「なんだと。全軍で進撃だと?」


 九八式重爆撃機によって100両以上の戦車を破壊したが、情報によれば1600両もの戦車が残っているはずだ。それに、軽装甲車やトラックは9,000両が確認されている。これが損害を顧みずに突撃してくるとなるとまずい。


「西少佐に連絡だ!戦車連隊は回廊を抜けた所で進軍を停止!戦車壕と塹壕を作ってソ連軍を迎え撃つ!接近してくるソ連部隊には、後方からロケット弾を打ち込め!航空支援も要請だ!」


第百九六話を読んで頂いてありがとうございます。

140万の歩兵が・・・・・・


完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!


「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!

歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!


モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。


これからも、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] ソ連ではいくら兵士がいくらでも畑から収穫できるとしても、130万も無駄死にさせたらモスクワへ強制連行されて銃殺刑一択でしょうけどね笑
[良い点] 『140万人中130万人が死んだとしても、10万人が生き残って日本軍を殲滅できれば我々ソ連の勝ち、、、』 ソ連って国はこれだから、、、 こんな国は滅びればいい。 [一言] 35mm90…
[一言] まさに人海戦術……。 どんな対応をするのか楽しみです。
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