表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/436

第百五七話 チタ反攻(1)

 モグゾンにいたソ連軍部隊は、線路を破壊しながらイルクーツクを目指していた。


 当初は1kmごとに爆弾を仕掛けて、順次爆破をしながら西進したが、イルクーツクまでの距離600kmを考慮すると、とてもでは無いが時間がかかりすぎることが判明する。


 そこで、線路の下に丈夫な鉄骨を差し込み、それを、三連結した機関車で引っ張りながらイルクーツクを目指した。これにより、1日で200kmの線路を完全破壊することに成功する。


 線路破壊は想定の範囲内であったが、ここまで完全に、しかも素早く破壊されたことは、日本軍にとって大きな誤算だった。


 ――――


 チタ近郊の滑走路を、日本陸軍空挺隊員が全力で修繕している。


「急げ!あと3時間以内になんとしても滑走路を使えるようにするんだ!」


 滑走路への夜間空襲とその後の制圧作戦で、滑走路自体にそれほどの損傷は無いが、航空機や格納庫の破片がかなり散らばっている。


 重機が無いので、全て人力による修繕作業だ。少しでも金属破片が残っていて、それが着陸の航空機のタイヤに刺さってしまえば、大事故に繋がりかねない。


 このチタは、フルンボイル飛行場から500km以上離れているので、常に戦闘機を上空に待機させることも出来ない。哨戒機と陸軍九八式重爆8機が上空警戒に当たってはいるが、一刻も早く滑走路を使えるようにしなければならない。航空機が着陸できるようにしなければ、チタの空挺師団が空襲によって損害を被る可能性があるのだ。


 ――――


 ソ連軍のSB爆撃機68機が、チタを目指している。


「戦闘機の援護が無いのはつらいですね、隊長」


「そうだな。イルクーツクから500km離れてるからな。戦闘機の航続距離じゃ帰還ができない」


 ソ連軍のI16戦闘機の航続距離は500km、新型のMig-3でも800kmほどしか無いため、戦闘機の護衛を付けることができなかった。


「まあ、日本軍もまだ空挺部隊だけということだから、心配はいらんだろう。チタも清帝国から500km離れているから戦闘機も来れまい。駅の施設と滑走路に爆弾を落として帰投するぞ」


 ――――


「シュローダー(哨戒機のコールサイン)よりチタ守備隊へ。ソ連軍爆撃機68機が接近中。戦闘機の随伴は無い」


「チタ守備隊よりシュローダーへ。了解した。出来るだけ撃ち落としてくれ。撃ち漏らしはこちらでなんとかする」


 ――――


「あと100kmでチタだ。第一中隊は駅を、第二中隊は滑走路を爆撃する。間違えるな!」


「隊長。前方に航空機です。距離約30,000mです」


 双眼鏡で前方を見ていた機首の銃手が、航空機発見の報告をする。


「大型機のようだな。輸送機か爆撃機か?こちらに向かってきているな」


 おそらく、日本の輸送機か爆撃機だろう。戦闘機が間に合わないので、爆撃機の銃座で防戦をするつもりだろうと思う。


「敵機だ!対空機銃、準備をしろ!」


 対空銃座に準備を促す。敵の銃座がどの程度かはわからないが、目視できる機数は10機程度だ。こちらは68機の大編隊。十分に戦える。


 敵機との距離がどんどん縮まる。そして20,000m程度になった時に、双眼鏡で日本軍機を監視していた銃手が叫ぶ。


「敵機から発砲炎です!」


「なんだと?距離が遠すぎるぞ。ロケットか何かか?」


 ソ連陸軍で開発しているロケット兵器は、射程が10,000mほどあると聞く。しかし、それを空で使ったとしても、とても当たるとは思えない。


「敵大型機は反転して逃げていきます。発射されたのはロケットのようです!こちらに近づいてきます!」


 日本軍の航空機からは、一機当たり8発ほどのロケットが発射されたようだ。そしてそれは、みるみる近づいてくる。


「こんな距離をロケットが飛ぶことが出来るのか?全機回避行動を取れ!」


 全機に命令を出すが、どうやら無線が繋がっていないようだ。日本軍は無線を無力化できる可能性があるとブリーフィングで注意があったが、この事か。


 無線は通じなかったが、全機、ロケット弾に警戒して回避行動を取った。


「こんな遠距離でロケット弾が当たるわけは無いだろう。日本軍め、一体何を考えている?煙幕か何かで目くらましとかか?」


 ソ連爆撃機隊は散開し、ロケットの軌道から位置をずらした。


「隊長!敵ロケットが進路を変えます!あ、あ、3番機に!」


 副操縦士がそう叫んだ瞬間に、左前方を飛行していた3番機にロケットが命中し爆発した。そして友軍機が次々と爆発炎上していく。


「な、なんてこったぁ!」


 近づいてきたロケットは、ものすごい速度で味方機に激突する。そして大爆発を起こした。そこそこの大きさがあったので目視することが出来たが、速度は機銃の曳光弾と同じくらいに思えた。銃弾と同じ速度で追いかけてくるロケットなど、既に理解の範疇を大きく超えている。


 68機いた味方爆撃機は、ほんの一瞬の間に12機にまで減らされてしまった。


第百五七話を読んで頂いてありがとうございます。

ソ連の反攻作戦は?


完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!


「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!

歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!


モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。


これからも、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] すごくいい!
[一言] あ、これもう結末が見えてしまった気がします。
[良い点] おお、1日で200kmの線路を完全破壊するとは、ソ連にも賢い奴がいますねえ。 中々に良いアイデア。 欧州からの帰国の時はシベリア鉄道を破壊しつつ帰国してやりたいと 思いましたよ。 いや…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ