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第百三二話 第九戦隊司令 山口多聞(3)

「ほほう。それでは、たまたま修理ができて、全員退艦したタイミングでたまたま沈没したと?」


「そ、その通りなんですよ!なので、貴艦が偶然来てくれて本当に助かりました!」


 この山口多聞という男、本当に怖い。ロバーツ艦長は山口の迫力になんとかギリギリで精神を保つことに成功していた。


 “これが日本のサムライというやつか・・・・。こんな連中とやり合うなんてまっぴらごめんだ”


 こんな押し問答を続けたが、もちろんロバーツ艦長が“スパイ活動をしていた”などと口を割るはずも無く、おそらく存在していたであろう作戦指示書も海底に沈んだとなれば、これ以上はどうすることもできない。


 “ちっ、このおどおどした態度はスパイをしていましたと白状しているようなものだが、決定的な証拠は無いか・・・”


 こうして、潜水艦乗組員はアメリカ艦艇に引き渡すことになった。


 日本は外務省経由で、第二次ロンドン海軍軍縮条約の遵守を強くアメリカに申し入れるにとどまった。


 ――――


 アメリカ海軍省


「ジャップの巡洋艦は、対潜戦に特化した改装をおこなっているようだな」


「はい、ハルゼー少将。R-9潜水艦からの報告では、後部に水上機の格納庫が増設されていたようです。それに潜航していたR-9が発見されていますので、日本の対潜能力はかなり強化されていると思われます」


「空母を主力とした艦隊編成に対潜能力の強化か・・・。これは、防御に徹しているように思えるな。まあ、軽巡四隻を一ユニットとした対潜タスクフォースなら、高速巡洋艦を当てれば撃滅は簡単そうだ。主砲も14センチがたった二門だけの様だしな」


「はい、少将。万が一開戦した場合、我が軍の潜水艦の活動が阻害されてはなりませんので、日本の対潜部隊を効率よく撃破する部隊編成と、作戦を検討したほうが良いでしょう」


「そうだな。日本の対潜水艦作戦は理解できたが、しかし、我々の戦艦群に対してどう攻略するつもりなのだ?」


「はい、少将。分析チームでは、空母から発艦した雷撃機や爆撃機による反復攻撃を考えているのでは無いかとの意見が主流のようです。来週には報告書が上がってくると思います」


「航空機による反復攻撃か・・・。そんなもので戦艦を撃沈できるのか?」


「戦艦のバイタルパートを抜くのは難しいと思われますが、被雷すれば戦闘能力がかなり制限されます。戦艦の撃沈を目指すのでは無く、戦闘能力を奪うことが目的では無いでしょうか?」


「なるほど。しかし、航空機による反復攻撃では、航空機に相当の被害がでるだろうに。それでも、戦艦を維持するよりは安いと言うことか」


 アメリカ海軍では、日本の航空戦力増強に対して、対空兵装の拡充が図られることになった。また、日本の空母増強に対して、アメリカではヨークタウン級空母の増産が決定された。


 ――――


「アメリカの潜水艦乗組員を助けたのはまずかったんじゃ無いのか?山本中将」


「はい、永野大将。どの程度情報を収集していたかを確認するために、潜水艦の拿捕をおこないましたが、自沈を許してしまったのは残念なことでした。しかし、一度救助艇に乗せた乗組員の口封じをする訳にもいきませんし・・」


 海軍省の一室で、永野大将と山本中将が今回の事件について打ち合わせをしていた。


「それはそうだな。海軍軍人は紳士で無ければならないからな」


「それに、対潜哨戒に特化した巡洋艦であることは露呈しましたが、それは同時に、武装の貧弱な水上機母艦程度だということです。アメリカがそう誤認すれば、それはそれで欺瞞に成功したと言えます」


「確かにな。ただの野ねずみだと思っていたら、実は凶悪なハリネズミだと知ったときの驚きは相当なものだろうな」


「はい、その通りです。球磨型巡洋艦は、短距離対空ミサイルを32発、対艦ミサイルを16発、対潜水艦短魚雷12発ですからね。これが四隻で一戦隊を構成しますので、ほとんどの攻撃を撃退できます」


 ※軽巡北上も球磨型巡洋艦の一隻


「長良型や川内型の改装も急ピッチで進んでいるし、それに、4500トン巡洋艦の新造も順調のようだな」


「はい、宇宙軍から提供された設計図は、信じられないくらいの先進性があると、艦政本部の技官が言っておりました。主機は九七式戦闘攻撃機と同じジェットエンジンを搭載しているのも驚きです。さらに、平面で構成された船体は、レーダー波を逸らし、敵のレーダーに捕捉されにくくするそうです。まあ、その分、かなり高額になっているようですが」


「そう、そこだよ!海軍の予算が議会を通過するのは嬉しいことだが、これだけの予算増をよくもまあ大蔵省が納得したものだ。かなりの額の国債を起債しているのだぞ」


「はい、それについてですが、その国債の引受先のほとんどが、ロシア銀行とリチャード・インベストメントグループなのです」


「リチャード・インベストメントといえば、あれか?アメリカで摘発された大企業の。ニューヨーク株式の大暴落を裏で操っていたという」


「はい。アメリカのリチャードは摘発され実質国有化されたようですが、アメリカ以外の国の支社は独立して営業を続けているのです。そして、そのリチャードグループは、実は宇宙軍の傘下だという噂があるのです」


「なんだと!そんな巨大企業グループが宇宙軍の傘下だと?何かの間違いでは無いのか?」


「はい、噂なのでなんとも言えませんが、それが事実だとしたら、巨大空母の建造や新型兵器開発の予算の捻出に合点がいきます。それに、関東震災の復興国債も大量に引き受けているので、少なくとも日本と何らかの関係があってもおかしくはありません」


「なるほどな。巨大企業グループに秘密兵器の開発か・・・・。しかし、宇宙軍はどうやってそんなことを実現出来たのやら・・・」




第百三二話を読んで頂いてありがとうございます。

国際協調と妥協は大事ですね。まあ、報道されたら弱腰とか言われるんでしょうけど。


完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!


「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!

歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!


モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。


これからも、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 人間は、自分の理解している範囲内でしか、物事を考えることはできません。 アメリカ側の反応は、まさにそれですね。
[良い点]  現在進行中の戦争を見てると意外にそんなもんかと思わないでもない。 [一言]  巡洋艦の活動が困難な状況を潜水艦ですり抜けて仕事をするって話なのに、その対抗手段である対潜艦に巡洋艦をぶつけ…
[良い点] 球磨型巡洋艦は、短距離対空ミサイルを32発、対艦ミサイルを16発、対潜水艦短魚雷12発も装備してるのか。 凶悪な針ネズミと言うべきか、ライオンもたまらず逃げ出すスカンク以上に凶悪な獣と言う…
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