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ZEROミッシングリンクⅣ【4】ZERO MISSING LINK 4  作者: タイニ
第三十三章 出発

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97 今日のラムダは絶好調



「ええ、素晴らしいお話でありました。」


なぜか、フォーラム会場の控室の1つで椅子にふんぞり返っているサダルと同じテーブルに着く、ファクト、ラムダ、リゲル。会場に戻ろうとしたら側近に声を掛けられここに連れてこられたのだ。


演説していた時にファクトが見えたらしく、呼ばれた上に顔しか知らない、顔も知らない軍人ぽい人たちにも囲まれ、そんな中で感想を求められる。


「別にお世辞はいらん。分かりにくかったかどうか、アジア人にはどうかとか。聖典知識や信仰がない人間にも通じたかとか。」

手元にある甘めのえびせんを食べながら聞かれる。

「いえいえ、滅相もございません。自分は生まれた時から聖典を読んでいるのでよく解りました。それ以外の人にはどうだか分かりません。」

ファクトは姿勢を正して頭を下げる。カウスたちと違って、指示がないとピクリとも動かない護衛たちもサダルと同じくらい恐ろしい。余計なことは言わないのが得策である。


「本職で毎日読んでいそうな坊主どもにも、通じないことは多いぞ。」

「さようでございますか?分かりやすかったですが?」

「教会なんてプレゼントが配られる記念日しか通ったことがなかった、ラムダ先輩に聞いてみてください。」

「え?僕?」


「……じゃあラムダ…だな。感想があれば。」

「え?すごく感動しました!!愛にあふれた神の世界を、サダル議長を通じて感じました!!」

「………。」

愛という言葉が出てくるとは予想外だったのか、サダルが若干引いている。

「なんだそれは。嫌味か?」

「いやみ?『反響』とかはよく分からなかったんですけれど!感動です!この思いこそが反響でしょうか!」

「霊性かサイコス持ちか?」

「ほとんどないです!」

「なら通じにくいかもな。行動や頭の中が今の時代よりダイレクトで返ってくると言う事だ。」

「宇宙空間は空気抵抗とかないから、連動してるんですか?」

「…そのイメージ通りでも間違いではない。抵抗がないわけではないがな。」

 

「宇宙時代が本格的にスタートした時、サダル議長のその愛もみんなに伝わるかもしれないですね!!」

キラキラ21歳に、若干どころかかなり引いているサダル。闇属性過ぎて、ラムダが眩しいのかな……とファクトは思う。

「…そうだな。その前にそんな時代が来る頃には、私が自分の言葉で滅んでいそうだがな。自分の言い分に従えば…。」

「え?なぜですか?」

「………」

純粋な目で聞いてくるラムダに困惑気味だ


ファクトとリゲルには意味が分かる。自分がそう言う風にしか相手を思っていないから、それが自分に返ってくると言う事だろう。因果応報、自分の言葉で自分が滅びると言うことだ。


つまり、サダル的には本当はどうでもいいのだ。めんどくさい世の中など。でも与えられた責任は果たすだけだ。



「議長の様な方とご結婚できて、チコさんも幸せですね!初めはどうかと思いましたが、番長にも愛を分かち合える人がいて安心します!」

「っ?!」

今まで不動で立っていた護衛たちの方が動揺する。


「…。」

何も言わずに、こいつ正気か?という顔でラムダを見ながらハードポテチを食べるサダル。

「チコさんとのご結婚はどうですか?!」

「……っ?!」

護衛の動揺が収まらないし、なぜかグイグイ来るラムダ。いたずらな妖精でも憑りついているのか。


「…あまり女性と結婚した気分にはならないな……」

誰もが触れてこない話題を子供に直球されるので、こめかみに手を置き思わず素で答えてしまう。

「………。」

室内が沈黙する。それは辛い…のか?

「……?」

今ひとつ意味が分からないラムダだが、あんなチコなので夫に甘える、夫に甘えさせるのは恥ずかしいのかと解釈する。

「お互い照れてるんですね!!」

「……。」

意外な答えがきて、もう返答さえない。照れて地球4分の1向こう側のオリガンまで行ってしまう妻がどこにいるのか。



『なんで今日のラムダは無敵なんだ?』

こっそりファクトはリゲルに尋ねる。

『あ、先シリウスから直接イベント招待のメールが来てたからな。俺にも来てたけど。』

『…なるほど。』



「……。」

サダルは目の前にあった、口の中がパチパチする綿あめを千切ってを食べ、この場の空気を変えるようにとんでもない提案をする。


「ファクト、リゲル。」

「はい!」

「お前たち、明環(めいわ)第一にプレゼンに行かないか?」

「明環?!!!」

珍しくリゲルが驚く。


「明環第一って?」

??のファクトにリゲルが説明する。

「アンタレスで一番トップの高校だ…。」

アンタレスでということは…下手をしたらアジアで1、2番、世界でもトップクラスかもしれない学校である。

「えーーー!!!!!無理ですっ!!」

塾にも進学にも全く関心のなかったファクトは、有名高校の名前など正直知らないが、その辺りの高校から、アジアや世界トップの大学に進む者は多い。


「藤湾のを行かせるより、おもしろいと思うが?」

「いやいやいやいやいやいや!!!藤湾でお願いいたします!!」

自分も藤湾に転校したのに、心はまだ裕福層地域の横、平凡な公立蟹目(かにめ)学生気分である。



「別にお前たちだけで行けと言っているわけではない。」

「え?何を語るんですか?!懸垂20回を目指すには?とか、トドメをささない程度のショートショックの使い方とかですか?!そういうのしかできません!!」

「ファクトは教育専攻じゃないのか?」 

「普通教育に関しては、彼らに語れるものなどありません!!

ベガス軍や特警連れて行った方が絶対に盛り上がりますよ!俺、最初に南海広場をバイクで走って来た皆さんを見た時、超興奮しましたから!これは人生最高の1ページだって。

コマちゃんがまさか撃沈されるとは!!オオームを沈めるナルシカかと思いましたもん!!!絶対に明環も感動します!!」

アーミー好きの血が騒ぐも、明環は全くのって来ないであろう。ここですら、皆引いている。


「ベガス構築の話に決まっているだろ……。」


「それなら絶対に藤湾のイケメンイケ(じょ)辺りを持っていった方がいいですよ!

優しくてかわいい女の子が一番かな。陽烏ちゃんみたいな。だいたいああいう学校の何割かは、下の学校をバカにしているので、俺が行っても舐められます。

導入はかわいい子で大人しくさせた方がいいです!多分、大房や河漢みたいにナンパする系はいないと思うので。」


実は昔、トップクラスの小学校に体験で行ったことのあるファクト。様々な闘争心を持たれ大変だったのだ。しかも、全然向上心がなかったので、最初はライバル心を持たれていることにも気が付かず、「学校終わったら遊びに行こーぜ!」など言って周りをイライラさせていた。彼らは放課後も夜まで勉強である。


参南(さんみなみ)は文化部も多くて雰囲気もいいって聞いたよ?」

ラムダもいくつか良さ気な高校を上げていく。参南は先進的で解放された学校だ。


「そんな感じで、考えておいてくれ。卒業するまでに10クラスは行けるだろ。」

「いやいや、カーフにお願いしてください。あいつなら目で殺せますので、エリート校の野郎どもでもいけます。」

「ニッカなら説明もうまいよ。」

「………。」

リゲルは言いたいことはあるが、これ以上絡むと面倒なのでファクトを放置することにした。


「考えておいてくれ。」

サダルはそう言うと席を立った。



実はサルガスたちも、学校やゼミに呼ばれて既に大学など、時には自治体や営利団体、企業も回っている。ベガスだけ回していた時と違って、巨大な混沌、河漢は多くの人手が必要であった。




***




「彼はどうですか?」


刑務所の特殊な一角で、ポラリスとシャプレーはデータを見ながら所長に話を聞く。後ろにはアンドロイド、スピカがついていた。


「非常に模範的ですね。目立って頑張りはしないし、だらしないところはありますが、全く問題はないです。」

東アジアに保護された、シェダルのことだ。


「演技っぽさは?」

「そうですね…そういう感じがしなくもないですが、悪意は感じないと言うか……。あまり世の中にも執着していないというか、かゆみや痛みがなく生きていけるならどこでもいいといった反応でして。本人もそう言っていました。」

「………。」


「頭も非常にいいです。もう漢字入りの聖典も読めますし、暇だからと空いた時間は映画やドキュメンタリーを観たり、図書を読み漁っています。」


シェダルの様子見と体の調整に来た2人は、面会の前に映像を見る。



現在、身体は一般的な会社員成人男性の平均ほどの力もない。

ただ、気になるのはサイコスだ。


響は、外部から相手を制する力を持っている。シェダルはおそらくコントロールできないし、仕方も分かっていない。ケースバイケースでしかないので、コントロールできる力なのかも分からない。下手に自分の力を自覚させてもうまくいくのかも分からない。啓発して、かえって右にも左にもいかなくなることもあるかもしれないのだ。

DP(深層心理)サイコス自体の体系論も確立されていないのだから。


文字で確立されてはいないが、世界で最も心理世界介入の手がかりを持っている1人は響である。



「やはり響史の協力がほしいな…。」

シャプレーはつぶやく。


シェダルをこのままにするのか、ある程度訓練を入れるべきか。それを検討している。



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