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ZEROミッシングリンクⅣ【4】ZERO MISSING LINK 4  作者: タイニ
第二十六章 探していた胸の内
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8 あの人はいない



「まあ、重要なことはだな。ハゲでも結婚できたという事だ。」


披露宴会場ことレストランで、半分おでこが後退しているライオが男子ズに熱弁していた。


今回結婚した中に、第1弾C2チームのライオもいた。彼は大分禿げてしまったが、なんと今回唯一のユラス人をお嫁に貰ったのだ。全く目立っていなかったのに、「ユラス人=恐怖」でしかないアーツの勇者になってしまった。ただし、いつも見ているような強烈な方々でなく、目立たないタイプの普通の優しそうな人である。


「でも、ライオは仕事ができそうだもんなー。」

「ハゲでもイケている禿げと、普通の禿げと、貧相な禿がいる。」

まだ禿げてはいないが、20代からやや薄いメンバーが切なく言う。

「大丈夫だ。そんなことはないから…どうにかなる!初めは自分も「えっ」という顔をされたが、話してみたらけっこう丈夫だった!」

「…ふーん。そんな事あるのかな。」

「重要なことはだな…相手の話をちゃんと聞くことだ。二人で一緒に人生を歩く、ということを心がけることだな。」

「…なるほど…。」

「俺はうまくいかなかったけど…。」

「まだ1人目だろ。頑張れ…。」

披露宴一角が、新郎のアドバイスコーナーになっている。



その近くでヴァーゴ祖父が、超楽しそうだ。

「やっっっっとウチのヴァーゴが…!!こんな素敵なお姉様と!」

「しかもヴァーゴよりしっかりしてそうですよね。」

「ううっ。ウチの太陽!救世主!女神!!」

褒められまくりで照れている妻ヨーワ。


そこで、全員ある1人に注目する。

茶髪、茶色い目の大房アーツにはなかなかいないタイプの爽やか青年。ヴァーゴ祖父の横で楽しそうに軽いカクテルを頼んでいる、現アストロアーツ飲食店側の店長ジジェである。


「じいさん…。なぜ連れてくるんっすか…。」

「そうですよ。絶対に呼んではいけない人物…。」

大房メンバーがヴァーゴ祖父を連れ出し、こっそり責める。

「え、俺も来て、大房の常連客たちも行くってことで、しかもそいつらに誘われて行きたいって言ってるのに、断るわけにもいかんだろ?」

「ダメっすよ!ここに来たら最後。次期試用期間に参加してしまうというジンクスがあるんです!」

「だから今回は文系を選んだから大丈夫だよ!なあ、ジジェ!」


「え?何ですか?」

「あ、こいつ。2代目店長のサルガスと、3代目シャウラ!」

ついでに二人を紹介してしまうじいさん。

「初めまして。今、アーツの方で店長をさせてもらっていますジジェと申します。」

それぞれ自己紹介をしている。少なくとも、このストリートファイトに出て来そうな顔ぶれを見てしまって、アーツベガスに来たい文系はいないであろう。アーツの存在意義を疑われる面々しかいない。ここに見た目が格闘系のタラゼドや蛍の夫アクバルが加わったら完璧である。奴らは立っているだけで人を殺れる。



「あっ、この前ウチに来てくれた子!」

ジジェは、サルガスたちの近くにいたファイに気が付き声を掛ける。

「どうも。」

「お久しぶりです。この前、お茶だけだったからまた料理食べに来てね!ほら、あの人と。

……今日来てないの?あの黒髪ロングヘアの…。」

という言葉に、一瞬固まる周囲。そして怪訝な顔をする、少し離れた所にいたキファ。


「今日はいないよ。」

誰かが答える。

「そういえば見ないよね。響さん。」

「響さんって言うんだ。」

ぱぁと分かりやすくうれしそうな顔をする。アーツ大房ズにはいない、なんというか本が似合いそうな、素直な好青年タイプだ。こいつに任せたらあの適当ファンキーな店がシックなブックカフェとかになりそうだ。気に入らない。


アストロアーツの、勝手にいつの間にか仕上がったファンキーというコンセプトを犠牲にしても、絶対にこいつをアーツベガスに入れてはならないと決意するアホどもであった。



この場でただ一人。ファイだけは響がいないことに違う意味で胸が痛んだ。






…うーん。響先生もチビッ子もいないんだな。


別の場所でウヌクが仕方なさそうに一人肉を食い、人と話すのも面倒なので隅っこでただ周りを見ていた。

そこに現る個人的に仲良しになったと思っているチビッ子そっくりのチビッ子少年。

「ウヌクさん!一人でさみしくないですか?!」

「あ?トゥルスか?あっち行け。さみしくねーよ。」

ムギの弟トゥルスだ。

「えー!寂しいですよ!」

「マジうるせーな。俺のバリア内に入れるのは響先生だけだ。半径1.5メートル内から出ろ。」

「孤独なんですね!」

「…話の通じない男は嫌われるぞ。」


と、そこでトゥルス兄貴を探しに来た、たくさんのガキンチョを引き連れたジョアの息子シーバイズ。

そんな本物のチビッ子一団が、傍から見たら仲良しの二人に気が付いてしまう。


「こんばんはー!トゥルス兄ちゃんのお父さんですか?!」

「は?何を?!俺がどう見たら親に見えるんだ!しかもこいつ中坊だぞ。」

「パパですか?」

「違う!せめてお兄さんと言え!!」

ショック過ぎるウヌクである。ただ、年齢は26。ユラスでは大体子持ちの歳である。

「…う、う~えん!怖いよ~。」

ジョアの娘ビオレッタが泣き出し、メレナ末っ子も泣き出す。

そして、なぜか泣き顔と質問攻めに飲み込まれるウヌク。

「お兄さんのお子さんはどの子ですか?この子?この子?」

勝手について来たたくさんの子たちを指していく。

「いないつーの?!」


「あ?何?!ウヌク子持ちだったの?!」

「隠し子?!」

「ロー!お前ぶっ殺す!!おい!ティガ!助けろ!」

「お父さん!頑張って!」

近くに来たティガたちに助けを求めるが爽やかに断られる。


この後、子供集団に囲まれたウヌクは、しょうがないのでラムダ、リゲルを探し出し、しばらく子供の面倒をみるのであった。




そしてVEGAの(つづみ)やユラス軍、タウなどの大人チームたちは、なぜか婚活おじさんと盛り上がっていた。

「あの、おじ様。ウチのマイラに手を出さないでくれますか?」

キレ気味のチコ。

「だってね、カーフ君たちはちょっと若過ぎるでしょ?目はつけておくけど。」

そう、VEGAの女子職員を部下の結婚相手にゲットできなかった婚活おじさん。部下は男子だけではない。今度は女性に見合う男性を見繕い始めたのである。


「マイラやザギたちは、ユラスでもかなり大きな家門なので、ヴェネレには重荷だと思いますが?」

普段国際結婚大歓迎のクセに、なぜか婚活おじさんには張り合ってしまうチコである。

ユラス人とヴェネレ人こそ、国境を越えた愛で一つになってほしいものだが…、婚活おじさんにだけは先手を取られたくない気分なのでしょうがない。



「じゃあ、サルガス君、イオニア君やゼオナス君辺りちょうだい。タチアナ君やライブラ君でもいいよ。皷君は既婚者だっけ?」

その他、一緒に仕事をしている南海の移民代表の青年たちの名が挙げられていく。なぜそんなに知っている。

「人は物じゃない!」

チコは、ドンっと机を叩く。


「はい!はい!はい!ってっ結婚させた人がよく言いますね。」

「…カウス。お前がヴェネレに行くか?」

「…やめて下さい。私、既婚者です…。」


そして、入口にガヤガヤと人が入って来て、チコが姿勢を正して立ち上がった。

アーツメンバーがなんだろうと見ていると、数人のスーツや軍服の男たちがチコやエリスに挨拶をしている。彼らはアセンブルスやサラサの方に向いていた。どうやら東アジア軍の偉いさんたちや、あまり顔は見たことがないがユラス軍の面々らしかった。マリアスたち教官もそこに出向いて敬礼をしていた。

サラサたちを祝福しに来たのだろう。にこやかに笑っている。




レストランの外も夜のお祭り状態。


今回は西アジア人のお嫁さんが多いせいか、そんな感じの人たちが親族知り合い関係なく料理や酒で盛り上がっていた。


「ファクト!」

仕事を終えたタラゼドがいつもの如く外にいたファクトを捕まえる。


「あ!お疲れ!」

「…響さんは?」

「気になる?」

「まあ…。いつもこの辺ウロウロしてんだろ。」

ファイと何かあったことも含めて気になる。


「なんかいないんだよね。研究室を閉めてインターンも終わったから、息抜きの旅行に出てるって話だけど。」

「でも、リーブラの結婚式だぞ。誰よりも来たがる人だろ?終わってからでいいのに。」

ずっと一緒だったリーブラの式に出ないのは違和感がある。


「…そういえば、いつもだったらサイコスにも何かしら反応するのに、呼んでも出なかったな…。」

「…そうなのか?」


少し考えながら外にあるテーブル席に座った。

「なんか料理持ってこうか?」

「頼んでいいか?」

「うん。ローストビーフとかすごいのがあったから。ごぼうとアスパラ肉で巻いてあるのもうまかった。あと、アヒルもめっちゃうまい。」

「お前、肉しか盛らないだろ。野菜も少し入れておいてくれ。」

「OK~!」


それからタラゼドは響に電話を入れる。

でも、何度掛けても不通だ。


「はあ…。」

いつもだったら、会場が一旦お開きになる前に、外でウロウロしているあの人。

そんな響がどこにもいない。


繋がることもないデバイスをじっと眺める。



「ここにいたんだ…。」


その時横から呼ぶ声がした。



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