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ZEROミッシングリンクⅣ【4】ZERO MISSING LINK 4  作者: タイニ
第二十六章 探していた胸の内
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7 まとめて結婚してしまう



3か月のアーツ第3弾前期試用期間が終わる――



ファクトやサルガスたちがベガスに来て、1年3か月プラスその間の準備休息期間各1週間。


この間に第1弾アクバル蛍夫婦にも、早産で第一子長女が生まれる。

実は蛍は妊娠中期からずっと入院していた。帝王切開で生まれ体調も戻らないため、蛍の母も大房から手伝いに来てしばらく静養している。子供は元気だ。


ソアに続き、なんとイータも第二子妊娠。

「この忙しい時にお前は~っ」と、なぜか攻撃を受けるタウであった。


そしてカウスの妻、エルライも第二子を出産。第一子に続きこちらも男児である。

カウス長男と、元東アジア軍の教官マリアスの子アル。歩き出したどころか無表情でどこまでも歩き回り、あちこち登って大変なタウ長男ターボ君。

そこに加え、何もかもが新鮮で何もかもが楽しい、ザルニアス家ジョアの子供シーバイズとビオレッタや、伯母メレナの子3人。


幼稚園や学校がない時間、事務局のそばに作った子供のフリースペースは、事務局員の子供たちも集まり大混乱である。そこから続く中庭は改装して公園になり大型アスレチックも設置。小学生も遊べる大きさのものの横に、園児用がある。


なお、西アジアの元女子寮の子たちや、南海の青年組の方も何人か出産した。




そして恐ろしいと分かったのは、ユラスの新参、ザルニアス家ジョアの妹メレナ。

超絶バリバリの仕事人であった。


商売をしに来たのかと思えば、なぜか端から端までベガス構築を調査。ズバズバ質問もしてくる。アーツメンバーが子供と遊んでくているのをいいことに、巨大スラム河漢の現在の活動地域にどういう教育施設を建てていくのか意見を出していき、現場に行きたいとまで言う。


「あの。女性…しかも小さな子持ちのお母様が行く場所ではありません…。」

「子供も行くわけでないでしょ?それに兵役していたから大丈夫。カフラー様やチコ様の元にいたんだよ?とにかく、河漢になかったのは住居じゃない、教育でしょ。年代や層別に見ていきましょ。」

と、この始末。




そしてそして、さらに恐ろしいことにあの婚活オバちゃん。


ヴァーゴだけでなく、20代後半のアーツメンバー数人を結婚させてしまったのだ。中には20代前半の者もいた。これまでの期間に、決まった者は全員お互いの両親に挨拶に行った。


大房のオバちゃんもびっくりである。


真面目で性格も気もいい北西アジアの子たちが元々人気であったが、シグマは知っている。

北西アジアの子たちは非常に逞しい。何もしなければ冬は寒くて死んでしまう地域。馬に乗り農作物や家畜を育て、都市部の子でも鳥を捌け、火も起こして丸焼きにもできる。そして、ボックスカーどころか昔からのマニュアル四駆、トラックも運転できる子たちが多いのだ。さらに勉強してみれば計算のできる子も多い。かわいいお嫁さんを大切にするつもりで、尻に敷かれるのは男の方だと目に見えている。

ただ、幸せな尻に敷かれ方ともいえる。


もうめんどいから披露宴はまたまとめてしてしまおうという、だいたいのメンバーの一致により前のようにレストラン貸し切りでお祝いをすることに。これが定型になりつつある。これで祝儀もお祝いも会費のみの無礼講である。


教会での結婚の祝福はほぼ前もって終わっていたため、宴会だけでいいか?という事だったが、リーブラ父がバージンロードを歩きたい!と大騒ぎをしたのだ。ちょっとファンキーな40代前半のまだ若いお父さんである。兄妹でも通じそうなパパだ。


「何?おとーさん?教会で祝福は貰ってるんだから式はもういいじゃん。今回人が多いからそんなことしなくていいよ!」

「はあ?お前はバージンロードを何だと思っているんだ?!ジェイ君、君は親不孝者だと思わないのか?!」

「…はあ。」

「大事に育てた娘を…君が受け取るんだ!何が「はあ。」だ!」


「あいつ、妻の父親にもう少し気が利いたことを言えんのか。義父になる人だぞ。」

アーツメンバーが呆れる。娘の親友みたいに仲のよかった父親に少し気を利かせられないのか。さすがの下町ズもそこまで淡泊でも非礼でもない。


「10年20年後には、君が同じ思いをするんだぞ!」

「10年はまだ早いです。」

「言い訳するな!」


そこで、余計なおじさんが乱入。

「ジェイ君!君の披露宴なら都内のホテルを貸し切ってでもするのに、こんな宴会場でまとめて済ましてしまうなんて!」

ロディア父である。今かわいがっている教え子であり同志あるジェイと、ロディアの大切な友達であるリーブラには豪華な式をしたいのだ。

「こんな宴会場とはなんだ!あっちの花札じじいの店よりは上品だろ?!!」

打ち合わせのお店のおっさんと花札じじい2まで乱入。おじさんたちで大騒ぎになるのだった。





結局、最初に簡単に式をすることになる。


前よりかなり大勢のギャラリーがいて、もうお祭り、イベントである。そしてなぜか、いつもの如くレストランの前の商店一帯には動物の丸焼きや屋台が組まれている。移民の入り口で、教育が済んだら出て行かなければならないのに南海から去らない移民のおじさんたちは、便乗商法根性が逞しい。



女性の着替え室は大人数で盛り上がり、美容師やメイク学校の子たちも来ていた。格安、もしくはカットモデル状態で無料である。


「リーブラは、こっちの色の方がいいかな…。」

「緊張するね!」

ヴァーゴの新婦はユラスと西南アジアの間の国の子で、もともと自国VEGAの現地スタッフだった女性である。ヴァーゴの1つ上の33歳だ。

「ヨーワさん!キレイ!」

隣りで素朴そうなお母さんとお祖母ちゃんが泣いていているが、自分の婿が(いか)つすぎるからではない。男家族は仕事や兵役で来れないし、やっと娘を送り出せる。ちょっと強そうなヴァーゴの母が二人を慰めていた。


ライやファイもメイクや衣装を手伝っている。

「す、すごい…。3倍盛れている…。」

つけまつげにアイライン。変わり過ぎた自分にビビっている花嫁もいた。

「ライやファイも早くお嫁さんになってね!」

ライたちの職場の子はアギスと結婚する。



その後、父親のいる子たちは父と、そうでない子は相応の代理とバージンロードを歩いて新郎の前まで来た。


「ヴァーゴ!」

ファクトが手を振るが、返事をしないヴァーゴ。緊張しているのだろう。

「はは!あいつ笑えるな!」

ヴァーゴ祖父が面白がっていた。



「リーブラ。」

緊張しつつも嬉しそうに名前を呼ぶジェイに、娘を渡さない父。渡す手が震えている…。挨拶もまともにできんくせに、こんな時に娘を呼ぶのかと。

「…ちょっと、おとーさん!」

「うう…、仕事に行くって言って、なんで結婚しますってことになるんだ?しかもあんな淡泊な男に………」

淡泊というか、コミュ障気味である。

「お父さん!往生際が悪いですよ!さっさとジェイ君にあげてください!」

ロディア父が、父のクセにジェイの味方である。


リーブラは父に抱き着いて頬にキスをし「ありがとう」と言ってから、ジェイの方に行く。

「ジェーイ!!」

何故か泣くのはラムダ。お前がジェイ父か。


ちなみにジェイは家族と疎遠だったので親を無視するつもりでいたが、ロディア父に叱られて報告に行った。静かそうな両親が席の方で見守っていた。




そして今回、盛大の囃子(はやし)を受けたのはこの二人。


アセンブルスとサラサもここで一緒にしてしまったのだ。

みんなドン引きである。7億人口のユラス議長の側近なのに。中央区に行けば世界の一流ホテルもあるのに。やめてほしい。


「サラサさーん!奴の弱点を見付けたらこっそり教えてください!」

鬱陶しいカウスなのである。

「サラサさん、超キレイ!」

「超かわいいっす!」

女子に交じって、かわいいと言っている男はシグマ。

「こんな時しか、サラサさんをつっつけないからな。今の内に媚びを売っとけ。」


ユラスは本来結婚式は大きくするが、アセンブルスは一般家庭の出のため、もうここで披露宴も完結という事でいいだろうとユラスの祖父母と両親、妹を呼んでいた。こちらも優しそうな両親で涙している。サラサは片親で、母がサラサの伯父親子と共に遠方から来ていた。


「リーブラ~、幸せになれよ。」

ちょっと切ないサルガス。隣にはロディアがいて喜んでいる。

「リーブラきれい!今までの結婚式で一番うれしい!!」

「今度はサルガスとロディアさんこそね。」


「まだ婚約のクセに…。しかも口約束…」

少し離れた所でパイがまだロディアに闘志を燃やしていた。



そして、音響室ではやはりこの二人。

「ホントは、俺もチコさんにサッサと結婚しろって言われてたんだけどね。」

「そうですね。一番落ち着いてほしい人です。」

モアのいる上の音響室に来たファクトは、モアに率直に言う。その横には昨年のジェイに代わり、先ここに上ってきたラムダがいた。


「でもさ、今まで()()で結婚って、相手に不誠実すぎない?自分のことながら!」

誰も長持ちしなかったが、モアはフラフラ10人は付き合って来た。霊線も絡んでいるわけで、その分反省も含めて女性どうこうよりも、まずは修行がしたいと言ったのだ。それで合気道も始めた。


「そんで、もう少し自分を鍛錬したいとユラスに行ったわけ。向こうで間違いを起こしたら即結婚か即死なので戒めになるし。」

戒めのために、恐ろしいユラスに身を置いたのだ。

「でも、モアは結婚してもしなくても落ち着かなそうだけど。」

「…ファクト、お前俺のことを何だと思ってやがる…。この1年ちょい、女と手も繋いでいないぞ。」

「僕なんて、記憶にある歳になってからは、イベントガールのお姉さんと握手した記憶しかありません…。」

寂しそうなラムダ。

「あ!でもシリウスとも握手もしただろ!」

「そっか!」

それで満足なオタクラムダである。



下ではエリスが祝福の祈りを捧げている。


正道教やユラス教が多いため、この間は以前以上に厳粛な雰囲気になる。



そして、写真。


花嫁が多いというこの状況。もう撮影会である。

家族写真を撮ってしまうと、あとは女子撮影会。男子置いてけぼり、サラサどん引きの盛り上がりで花嫁ばかりがお揃いポーズを決める。サラサはもちろん有無も言わさず付き合わされ、場外女子たちも乱入。


この日は合気道の師匠ジュニアとハウメアも参加。ジュニアは道場の人たちと別で式を挙げたので今回は見物だったが、ハウメアはベールを被せられてみんなと写真を撮られまくっていた。



前のように、後ろで眺めていたチコは、とりあえずアセンブルスが結婚したことにホッとする。

「これを機にみんな結婚してほしい…。」

「すごいですね。アセンブルスが結婚したって、ユラスで大騒ぎみたいですよ。」

アジア組は結婚しないと評判だったので、実はユラスも大騒動である。

しかもアセンブルス。一部の人間は彼がチコを慕っていたのを知っていたので、さらに驚きだ。チコに結婚させられてしまうとは。


「よし!本土を大逆転しよう!」

何か訳の分からない気合いを入れるチコであった。



そしてやっぱり退場曲はこの曲…を勝手にかけるファクト。

超荘厳に迫力の『黄金のリング』である。


「やっぱこれで決めないと!」

「ファクト!貴様、また勝手に入れやがって!!」

怒りのモアだが、ファクトはこうやって言う事を聞かないムカつく奴なのだ。


会場の方はと言えば、この名曲に超大盛り上がりのギャラリーとノリノリのリーブラに対し、ノリ方が分からない真面目な一部西アジアっ娘たちが、戸惑ったまま踊らされていた。



後方や会場外には、下町ズに知り合いもいるという事で、犯罪歴のない、もしくは懲役などが済んだ河漢メンバーたちも見に来ていた。元バカ息子の部下たちも軍人たちの近くで見ている。


「マイラ!今度はお前だ!」

「え、だからイヤですってば。」

とにかく、マイラ辺りを結婚させたいチコなのである。


コンビニ男もファイに出会わないように、遠目でステージやバージンロードを歩き父から受け取る新郎新婦をボーと見ていた。ナンパ男の中には結婚したメンバーと知り合いだったのか手を振っている者もいた。



商店街が張り切ってくれたので、たいして準備もしてないなかったのに、全てが順調に進んでいくことにホッとする新郎新婦、そしてリーダーたち。



ただひとつ、今回リーブラが気になること。


「………。」

切なそうにドアを見るが、その姿は現れない。

「リーブラ。大丈夫だよ。」

ジェイが優しく言う。



そう、それは響がいないことだった。



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