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ZEROミッシングリンクⅣ【4】ZERO MISSING LINK 4  作者: タイニ
第二十八章 河漢の龍

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25 前村工機



「国家レベル?」


「国家レベルと言っても上級ではないが、一般では張れないレベルだ。」



サルガス、ジェイやファクトには聞こえない位置で話しているが、ファクトには全部聴こえる。ここに入るアジア軍の上官に知らされていない、つまり東アジアも知らないという事だろう。


「ただ施行人は民間だろう。今、この周辺を閉鎖するように指示を出している。ひとまずアンタレスと東アジアに話を付けた方がいい。」


サダルは考える。

ジェイは霊性を覚醒して1年半経つかだ。ジェイより強い霊能者もたくさんいるのに、河漢事業のための調査では見付からなかった。なぜ。誰かが押しているのか。シリウス?



それとも時が来たのか…。何かの条件が満ちたのか…。


「アセン。ジェイ・グリーゼは何か特別な力はあったか?」

「いえ。ただ、覚醒を助けたのがチコ様です。そんな特別な感じではなく、力の発覚を促しただけですが。」

「……アセンには見えるか?」

「場所が確定して、少し集中している今なら…何か見えますね。ただ、文字までは見えないし、普通にしていたら地下構造の中の何かくらいにしか思わないかもしれません。」




しかし、ここに非常事態が起きる。


「っ?!」

サダルと、アセンが驚く。東アジア軍のおじさんもその反応に構えた。

「っえ?」

ジェイが驚いて、ファクトもそちらを見ると、パーと、一気に白い光が一面を覆う。

「うわ!」


サダルがもう少し霊視をしていると、『前村工業』の文字の辺り一面にものすごい光が立ったのだ。


ほとんど霊感のないサルガスにも見えるほどだった。霊性の光は、光と相反する者以外には眩しくは感じない。その光は、上階や地上にいる者にも見える強さで、すぐに地上から連絡が来た。


『アセン?大丈夫か?!』

「議長…大丈夫ですか?」

アセンブルスが呼びかけると、呆けた感じでサダルが答える。



「…結界が…解け…た?」


「?!」

「…は?」

そこにいる全員が「え?解いちゃったの?」という反応だ。解いたらどうなるのかアーツはよく知らないが。



「…………」

サダルにも分からないらしい。なぜ?という感じで考えている。そう言えば放置してしまったデバイスをサダルがもう一度耳に当てる。

「…シリウス。それでこれはなんなんだ?河漢の………

…アジアンマフィアか?!」

『………でしょうね。それ以外そこに入った行政以外の大きな力はないもの。でも遺跡です。』

「でも、なぜ結界が解けたんだ?しかもいつのだ。こんな力があるなんて…。」



その少し離れた所で、ジェイがサルガスの手首に気が付く。

「サルガス…それ違う?右手の腕輪。先の字みたいに赤く光ってる。」


それはロディアから貰ったロディアの父方のお祖父さんの…さらに母の遺品の腕輪であった。

父方の祖父が昔、嫁であるロディアの母に譲っていた。


「え?光ってる?」

「光ってるねえ…。」

ファクトは言うが、サルガスには見えないらしい。


そして、ジェイははサルガスをじっと見てさらに気が付く。

「サルガス、青いよ……」

「は?青い?」

「青くて明るい光を放ってる…。サルガス自体が。」

「は?マジっ?」

サルガスは自分をあれこれ見回すが全然分からない。


「あー、ファクト!お前もだぞ。」

「俺?」

「サダル議長も。」

よく見ると、ファクトもサダルも薄っすら青い光を放っているらしい。

「え?それ、俺には見えないけど。俺とジェイの見ている力そのものが違うのかな?」

ファクトにも光が見えるが、体から発せられる青は見えない。根本的に違うのか。

「議長とサルガスとお前は、全身が同じ感じでモヤっと光ってる。明るい青。蛍光濃い青みたいな感じ。」

「………なんだそれ?」


「議長!これ、結界が解けたらなんかヤバいことがあるんですか?」

ファクトが少し大きな声で叫ぶ。

「いや。目くらましと、霊の危ないのが集まってくるのを防ぐ役割だからな。霊の世界は変わっても、実体の世界は早々には動かない………」




と言ったところで、なぜか地面が揺れる。


ドドドド…


「はい?」

「…はずなんだがな。」

と、サダルはさっき途切れたセリフを付け足した。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォ…………



「ヤベっ!地震?地盤沈下?!」

何か底の方から地響きのような音がする。

「上、避難指示を出しました。私たちも上がりましょう!」

東アジア上官は乗って来たバイクで、サルガスとジェイも他の兵士に乗せてもらい一気に上昇する。


しかし、サダルとアセンブルスは少しだけ上空に上がり様子を見ていた。ファクトも、その様子を共に見守るユラス軍部下のバイクに乗っている。




ガガガガガガガガ!!

と、恐ろしいことに商店街の一部が一気に崩れていった。

「あ~!」

既にシャッター街でも、ファクトはなんだか悲しい気分になる。が、それどころではない。


そして、地盤をガっと押し上げて出て来たのは、何か層のような開閉口だろうか。

押し上げた層の下にあった、まさに『前村工機』という大きな文字のシェルターか建物らしき物の上層であった。


誰もが唖然と見ている。



そして、

ジーーーーーーーーーーーー

と音がする。開閉確認のためにわざと動作音を付けているのだろう。


「…。」

「!?」

「何なんだ?!」


「…。」

完全にサダルも困惑してた。

少なくとも数十年眠っていたと思われる……地下の部屋なのか基地なのか。河漢スラムができる前か、それとも河漢というアンタレスの半無法地帯であり空洞で、マフィアが何かを築き上げていたのか。全体が自然に底上げされるのは地震など地盤の変動以外にはありえないだろうから、一部が上に稼働したのか。


「カウス、何かチコに聞いているか?」

「いえ。青龍の方は何も言っていなかったと思います。ただ、アンタレスでこの規模を動かせるのは青龍の方かと。元々のここの所有は青龍です。」

「河漢の電気を引っ張っているのか?…自家発電か?」

あまり昔の技術だと、眠っていた施設にこんなに一気に電気を起こせるのだろうか。一般のバッテリーでなく大元から電気を持ってこないとこんな昔の設備は動かないだろう。しかし、河漢は電気の不正使用も多い。住民に抜かれていると思っていた電気の一部は、もしかしてここを動かすためのものだったのか。



しかもさらに驚くことに、その電気がある程度溜まったのか、上部層が動いてからその中の『前村工機』が勝手に開き始めたのだ。

ウィーンとゆっくり開いていくので、みんな見ているしかない。



大きな赤いゴシック体で前村の下に工機とあり、前村と工機で天に向いたのオープンドアの左右が分かれる。20メートルくらいありそうな、超大きな丸い扉だ。



「なぜ?!」

ファクトでも分かるが、未知数の物が調査前に開くなんてヤバすぎる。

しかも、誰が操作しているんだ。自動?プログラム?


開いていくと同時にうまく散らなかった瓦礫が開いた大型ドアの隙間に落ちていった。


核ミサイル、生物兵器、核シェルター…

それとも、人間の…

やめてくれ。どれも出ないでくれ!!せめて答えは核シェルターにしてほしい。


と心で叫んだところで、全てが止まった。

それ以上は動かない。




「な…何?」

恐る恐る中を見るが、何かごつごつ置いてある空間が微妙に見え、他は暗くて中まで見えない。中は自動で動かないのか。電気が付いたらいいのに。


ユラス兵がビーで内部を照らすと、上部ドアの直下には何もないようだ。そして、少しビーで様子を見てからそのまま内部に入って行く。ユラス人、一応レーダーで物質の確認をしながら進んでいるが、怖いもの知らず過ぎる。死ぬと思わないのか。


そして横の方を照らすと…。


「車両?…メカでしょうか?」

レーザーを当てて、兵士がサダルに伝える。ここで全部の会話が聞こえているのは、伝心が聴こえるアセンブルスとファクトだけだ。

「調査をぱっと見た感じ…兵器というより…ワラビーっぽいですね。」

ワラビーは、カンガルーの頭と尻尾がないような形状のロボットである。名前はかわいいが軽量サイズでも軽自動車半分ぐらいのサイズはあり、大きなものだと大型トラックほどある。

この商店街が出来る前の物としたら、完全にクラシックタイプだ。


「議長、どうします?動かないし大きな反応も周辺にありませんが入ります?」

「……ほとんど夜だな………明日か?」

「でもこれ、明日は東アジアが入りますよ。軍だけならともかく、他のが入るとうるさいし、閉鎖されるかもしれません。」

「…カウスと…上にバイルガルたちはいるか?先のアーツの3人は帰らせるな。上で待たせろ。」

「ならひとまず練りましょう。」


一度全員地上に上がり、安全と思われる場所に本部を張って、東アジアと簡単に話し合う。そして、中を少しだけ見ることになった。アーツはみんな帰らされたと思ったが、援軍の迎えが来るまで臨時設置の本部で待つことになった。VEGA南海の青年リーダーたちもいる。

考えてみれば旧商店街をぶっ壊して扉が開くなんてとんでもないんだが。



「これは…あまり深く考える代物ではないんじゃないか?」

椅子に座って、あらゆる角度から撮った映像をサダルが見ている。驚いたことに、軍は既にこの近辺の全動画を残していた。『前村工機』が開くところまでバッチリで、霊光が写っているものもある。

「…一番怖いのはミサイルや爆破や何かの誘導の可能性があるかだな。」



そして、サダル、アセンをはじめ10人ほどのメンバーで再度下まで降りて行き、そして30分ほどで戻って来た。



そこでの衝撃の言葉。

もう、アーツに隠す気がないのか、細かい言葉まで聴こえないがいちいち隠すことはしていない。



「完全な倉庫だな。ロボットの。」



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