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ZEROミッシングリンクⅣ【4】ZERO MISSING LINK 4  作者: タイニ
第二十七章 山裾の輝き

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16 『傾国防止マニュアル』の復習

※性的な話、不快になるセリフなど出て来ます。ご注意ください。


今回聖書のお話が出て来ますが、作者の解釈でなんちゃってです。物語としてお楽しみください。

聖書初期人物はややこしいのでそのままの名前で書かれています。この物語では、聖典と名を変え、初期以外は創作になってきます。参考は聖書の共同新約などです。






今日は、ベガス、河漢、大房など15歳以上男性で生命身体神学を学ぶ。

基本、アーツはほぼ成人であるためだいたいが参加するが、今回女性も希望者は参加できる。



「ま、そんなわけで、河漢はこの時代にも夜の店が盛んだったので、基本気を付けないといけません。」

アーツリーダーたちは、河漢でお酒ついでに女性をあてがわれたのを思い出す。あれは恐ろしい。好きな女を選んでいいというのだ。女性も積極的で。周りに仲間がいなかったら、サラサの忠告がなければ、性欲関係なく訳も分からず取り込まれていたかもしれない。最初に優しさと酒と勢いで人の脳内を低迷させようとしたのだ。


そんな事を知らない気の抜けた連中はテキトウに講師の話を聞いている。半寝の者。鼻をほじって余所見をしている者、デバイスを見ている者。

「1回でも霊線を歪めたら………」


そこで周りを見渡した教官が1人、講師に手を挙げる。

講師が頷くと、大きな会議室にガス式銃型爆音機をぶっ放した。


ドバンッ!!!


と、全員あまりの音にみんな止まってしまったり、立ち上がったりしている。


「なんだっっ?!」

「あ゛っ?!!!」

「奇襲かっ??!!」

何かの襲撃かと思う人や教官の気が狂ったのかと思う者もいた。どこからどこに弾が飛んだのかみんな見渡している。


そこで背広が板についた講師が手を叩く。

「はーい。皆さん!寝るからですよー。安心してください。爆音機です。ここちゃんと聞いておかないと、欲に流された時点で、ベガス構築も住民権もおシャカです!性犯罪はベガスでは最重罪です。君たちが当事者にならないように言ってるんです。」


「………。」

全員ぽかんとしてしまう。


あまり見たことのない教官だが非常に恐ろしく見える。

「あれじゃね。」

教官が持っている大型のピストルを指す。

「ヤベーよ。ガス式だろ。あの下の。ここで爆発したらどうすんだ。」

「俺らは害鳥か。」


教官は何ともない顔で銃からガスを外し、耳栓を取っていた。言いっぷりは楽しそうなのに、クスリとも笑わない…怖い…。



「はい!こっちに注目!

河漢は誘惑が多いし、女性の方から来ることもあります。皆さん、あのマニュアルは読んでいますよね?」

『傾国防止マニュアル』であろう。聴きすぎて嫌になる。

「最初から陰部を触ってくるのも普通ですから、ウキウキしても付いては行かないようにね!」


「絶対に夫婦や決まったパートナー以外と関係を持たないように。

職員、短期仕事の方もダメです。そういうので、なし崩しに全部持ってかれます。ここでの仕事を受け入れ、これを聞いた以上、()、君たちには霊性に責任が生じました。」

ここのメンバーは試用期間は禁欲を約束している。

「童貞やフリーの方もどうしてもの時は基本自分で処理してください。それは仕方のない事です。神が作った体なので、そういう事は神が一番理解しています。」


「で……聖典信仰の方は絶対に外で人と発散してはダメです。正道教、ユラス教…ヴェネレもいるのかな?絶対にダメです。君たちは結婚まで1人で乗り切って下さい。別に童貞でも恥ずかしい事でも何でもありません。」


「またまたヤベーこと言ってるよ。」

「だから、ここの人たちこえーって。俺が浮気してたの知ってんだぜ?大房民ですら知らなかったのに。」

一方では大房民たちが騒ぎ、一方で河漢の荒れていそうな若者はいろいろ茶化している。

「センセー!本や動画はいいですか?」

「相手を尊ぶ、不健全でないもので我慢してください。」

「ご返答キターーーー!!センセーノリがいいっすね!!」

「モノ使っていいですかー?」


しょうもない事を言っているので、女性は別室にしておいてよかったと思うまともな人たち。

スクリーンで聴いているので、雑談までは拾っていないはずだ。多分。

ラムダやジリたちは知識としては初心(ウブ)ではないが完全に引いている。アーツABチームは怖い象徴だったのに、この人たちに比べたら非常に紳士でまともであったことを知る。


そういえば思い出す。大房の高校ってこういう風だった……。


「何度か言ったように、関係を結ぶと霊線が繋がります。

本来、人には1本しか繋ぎ合う霊線はありません。それがたった1本で綺麗に繋がると、未来の運命がよりクリアになっていくんですよ。つまり、皆さんの子供たちです。クリアであればある程、より良いものが直接あなたやその子たちの守護に入りやすくなるんです。

なので皆さんも生き方や意識を変えてください。」



そして一覧を映す。

「犯罪、拷問、虐待、不貞、不倫、未成年への性干渉、いじめ、驕りは一気にそれを崩してしまいます。自分と周りの霊線を守ってあげてください。河漢とベガスに関わる以上、非常に重要です。

皆さんがもし、ここで犯罪を犯せば、全部記録に残り、場合によっては世界の共有資料になります。性犯罪は特に気を付けてください。よく言われますが、殺人と同等か、相手にとって霊の歪みはそれ以上になりますから。

宗教で自殺は最も忌避する死とされていますが、性犯罪などで追い込んだ場合は、自殺も加害者の犯した殺人と変わりません。性犯罪自体が重罪です。」


様々な霊構成の画像が流れる。


「欲の処理とだけ考えず、それで誰かを支配したと思っている人もいるでしょうが、性に関しては正道と離脱すれば離脱するほど孤独になります。どんなに人を囲っても、最終的に幸せになれません。心も。そしていつか、相手の立場で相手の衝撃や憎悪も負います。

でも、霊が見えないと、その怖さが分からないんですね。死んだ人が見えないから。」


そして講師、しれッと言う。

「私は見えます。」

「え?」

「あなたたち本人が犯した者でなくとも、女性や子供の霊を着けたままの人がたくさんいますね。男性の霊もあるようですが。」

数人をじっと見て、しれッと怖ろしいことを言う。


「まあ、それもきちんと整理していきましょう。」

「…………」




講師が辿る、ポインターの先を見る。画面がどんどん変わる。


「性は人間構成の本質だから、最も重要で、この荒れた世界では人間にとって、最も弱い部分でもあるのです。

後日、男性だけでの講習もあるので心してください。怖い人たちが経験談を交えてアドバイスしてくれるので、実質的質問、具体例はそっちで聞いてください。」

みんな、今度の講師、誰だ?と思ってしまう。カウスか。もっとヤバい人か。



「あとね、ここでは柔軟な心が最も大切です。


大きな犯罪だけでなく、自身の小さな心の壁さえも、霊世界では大きな障壁です。

これが千年経ってしか神の王国を作れない、人間の愚かさを物語っています。


小さな躓きが後で膨大に膨れ上がって、鶏の声を聴きますからね。


まあ、みんな頑張ってね。心を砕くことは、強さよりも難しんだよ。」







女性だけの別室でぶっすりとした顔で聞くファイ。


昔を思い出し嫌な思いになるが、今度はそれを越えていくのだ。


ベガスには戦争や貧困で性被害にあった人たちも多い。みんな気持ちを吐き出し、情報を共有して、一歩一歩進もうとしている。中には、サバイバーから支援の立場になった女性たちもいた。

自分だけ見てしまったら、前に進めない。たとえそれが今でも未来でも。自分や人を見てしまったら、その人のあきらめや裏切りが怖い。人間だから。今はがんばっていても変わってしまうこともあるだろう。


そこに自分も飲まれそうになる。



だから、もっと大きな天啓の未来を見て進む。フェルミオたちと通った教会のゴスペルの響きを思い出す。


自分を抱きしめてくれたチコの頬を思い出す。



―――止まったり、後退したり、前を見失う時もあるだろう。

でも、うずくまってしまったその場所にも神はいるのだ。


私たちの、鈍くなってしまった感性では見えないだけで。



大切なものを見失わないようにすることは難しい。

だから、『変わらないもの』をしっかりとつかむ。


自分の持っている力ない愛ではなく。

自分を支えてくれた永遠に変わることのない、絶対に変わることのない天の愛で。


あふれてあふれて、抱えきれなくなったほどにあふれ出てくる愛。


それが本来の天恵だ―――




タラゼド家でファイを抱きしめた時、チコはそう言った。


『チコさん。私に構ってる場合じゃないでしょ?ユラス(おさ)の夫人だよ?』

『いいよ。今、目の前にいるのはファイだから。

私の中にあふれるものは、全部ファイにあげる。』

こんな私に構う事はないのだ。実は後日、チコはもう1回タラゼド家に来たのだ。



『……チコさんは自分の運命を恨まない?』


チコは目を細めてにっこりした。

『そうだね。嫌になることも、投げ出したいこともあるよ。でも、そんな私をポラリスは娘にしてくれたから、今度は私が返したい。』

『ファクトのお父さん……?』

『そう。ポラリスはね、一番イヤだろう立場の私に家族をくれたから!』


なぜチコが嫌なのだろう。その辺はファイはちょっとよく分からない。自分はチコのことが好きだからだ。


『ポラリスにはなかなか返せないけれど、でも、何かの形で返していきたいから。

私の胸に溢れる愛は、神から貰ったものだから。


気分で尽きたりすることのない、永遠のエネルギーで………。


今はそれを……全部、ファイにあげる。』



自分の目の前で笑ったチコは、すごくキレイで………顔とかのことではなく、なんと言えばいいのか。

すごくうれしそうにファイを抱きしめた。




●仕事でお酒は危険。こんなに危険。

『ZEROミッシングリンクⅠ』20 お酒は禁止の理由

https://ncode.syosetu.com/n8525hg/22

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