イジメ捜査 7
心理捜査官はドラマで観た曖昧な記憶なので間違っているかもしれません。
逮捕の場面があります。
翌朝、安積は課長に呼ばれた。
「安積、槙野が負傷したんだ、誰か変わりを連れて行きなさい。」
「いいえ、私は一人で行きます。誰にも迷惑をかけたくないので、この事件が終わるまで一人でやらせて下さい。」
「安積、あまり一人で抱え込むな。」
「大丈夫です。それでは失礼します。」
安積は静かに課長室を出た。
安積はーー高校に鑑識の奥田亮とその部下を連れて向かった。地面に落ちた石や硝子、教室の窓のさんまで教室一つ一つを調べた。しかし疑問が湧いてきた。どの教室も硝子が割れていない。どういう事なのか。安積が教室のごみ箱を除くとそこには、硝子を運ぶために包装する紙が捨ててあった。その教室は二年四組だった。
「奥田さん、他の教室を調べる必要は無くなりました。この教室だけを集中的に調べて下さい。」
「わかったよ。安積あんまりやりすぎるなよ。お前さんがいなくなったら、俺たち何のために働くかわかんなくなるからな。」
「私の代わりは何処にでもいますよ。」
「お前さんの代わりなんて何処にもいないよ。俺たちは安積ミツキの居る安積班のためにしか働かないんだよ。なあお前たち。」
奥田は他の鑑識の係員に声をかけると、みんな『はい』っと返事をした。
野村智也は今日もーー署に来ていた。正確には連れて来られたのだった。今回は会議室では無く取り調べ室で話しを聞いた。刑法第四十一条は十四歳に満たない子供は刑法上責任能力をが無いものとして扱われるが、彼は高校二年生年齢で言えば十七歳だ。この年になると、少年院、書類送検が可能になる。これまでも何人も悪事を働き書類送検された学生はいる。
今回の取り調べは結城と竹内が入った。
「野村智也さんはイチカさんとどういう関係だったのですか。話して下さい。」
今日も黙秘を始めた。結城は心理捜査官を中に入れた。
「この方は心理捜査官です。今からいろいろな装置をつけて、質問をします。全てはい、もしくは、いいえで答えて下さい。」
装置の準備をし、質問をした。
「貴方は、野村智也さんですか。」
「はい。」
反応は何も無かった。
「では貴方は女性ですか。」
「いいえ。」
また反応は無かった。そのままいくつか質問をし、本題を聞いた。
「貴方は並木イチカさんを殺しましたか。」
「いいえ。」
装置が反応し、平坦な一本線に波入った。
「貴方は並木イチカさんを拘束しましたか。」
「いいえ、何ですかこの質問。」
また波が入った。
「後すこしです。貴方は担任の二宮に口止めされていますね。」
「・・・・はい。」
波が入らなかった。これは事実と言うことになった。
「わかりました。今日はお帰り下さい。また話しを伺う事があると思いますので、そのときはまたここで会いましょう。」
そう言って、野村智也を家に返した。生活安全課の巡査に野村の監視を任せた。犯人だとばれて、自殺されては困るからだ。
安積と奥田達は、みつけた証拠品、指紋をーー署に持ち帰った。誰も前科は無かった。それもみんなまだ学生だから。
安積は校長にお願いし、ーー高校二年四組の生徒を教室に呼び出した。奥田と二人で一人ずつ指紋を採取していった。不正を行わないよう他の鑑識係員をもうまく使い、全員の指紋をとった。また、行くとき帰るときは地域課の警官に付き添いをしてもらった。
採取したデータを署に持ち帰り、鑑定を行った。結果は三十人学級の六割が関与していた。高校に連絡をとり、逮捕状を請求した。安積はやっと思いが晴らせると思った。
安積は逮捕者を乗せる車には乗らず、歩いて行った。もしかすると、また一人罪を犯す行動に出る人が出てくるのでは無いかと思ったからだった。安積が道を歩いていると、後ろに気配を感じた。安積はわざと気付かない振りをした。結城や竹内、永尾中野でも無い小さな気配だった。安積は道を曲がると後ろから走って来た。曲がると安積の姿は無かった。
「何で、ここ曲がっただろ。」
「刑事嘗めるんじゃ無いわよ。」
安積は曲がったところにある物置に隠れて、来るのを待っていた。視線が奥にいったタイミングを図って後ろに回ったのだった。
「さあ、一緒に高校に向かおっか。」
安積を石で殴ろうとした少年は、安積に手を引かれ学校に連行された。
永尾は黒木の病院で張り込みをしていた。犯人逮捕が目の前になると、手段を選ばない者が現れるのでは無いかと思ったからだ。
黒木はまだICUの中だが、竹内永尾は入ることが許されていた。竹内は張り込みをしているのに、ずっと槙野の側を離れなかった。優しく手を握っていると、一本の指が動いた。
「ヒーちゃん、わかる。ヒーちゃん。」
「竹・・・・内・・・さん・・・・。」
弱くかすれた声で返事をした。
「そうよ、私よ。今先生呼ぶから。」
そういうと竹内はナースコールを鳴らした。そこに永尾も駆けつけた。
意識が戻ったため、ICUを出ることができた。一般病棟に移された槙野の姿は、顔には絆創膏が幾つも貼ってあり、身体には包帯が巻かれていた。
「ナツホ、ヒーちゃんの意識が戻ってよかった。戻らなかったらどうしようって思ってたのに。」
「もう、ハルトは変わらず泣き虫ね。」
「そんなの良いじゃ無い。ねえナツホ聞いてくれる。私がついた嘘の話し。」
「何。良いけど。」
「私、結城さんにヒーちゃんと付き合ってるって嘘ついた。結城さんを元気ずけようとしただけなのに。」
「どうして今その話。」
「実はね、野村智也の持っていた鞄にも並木イチカさんの鞄にも同じキーホルダーが付いてたんだ。だから二人のどっちかは、恋愛対象にでもあったんじゃ無いかって思ったの。」
「さっちゃん話しが飛んだけど。簡単に言うと、結城さんはハンチョウとお揃いのぺんを持っている。好きな人が持っている物を自分も持っていると、同じ気持ちになれたりずっと繋がっていると思える。その傾向があの二人にも表れていた。これは事件の事だけど、その前の話し聞いていい。」
「わかった、あのね事件発生日にハンチョウとヒーちゃんが話していたの。で、その様子を見てた私のところに来たの。私はヒーちゃんとご飯を食べようと思って待っていて、結城さんはハンチョウとご飯を食べようと待っていたの。そのときに私遊び半分で好きなんじゃないかって言ったの。そしたらちょっと怒ったから慰めようと嘘を付いちゃったの。」
永尾は頷いて話しが終わった。
学校では校長担任生徒が教室に集まっていた。中には野村智也もいた。
「鑑識の鑑定結果よりこのクラスの六割が今回の事件に関与していることがわかりました。小石を集めた人、小石を落とした人、そして硝子を割った人です。硝子を割った人の中に怪我をした人がいるはずです。硝子片から槙野巡査長以外のDNAが検出されました。」
安積はクラスで唯一手を怪我している生徒の前に礼状を突き出した。
「貴方を殺人関与で逮捕します。」
クラス中湧いた。安積はそれでも声を変えなかった。
「皆さんそんなに騒がないでください。殆どが殺人関与殺人未遂、で送検が決まっているんですから。」
そして野村智也の前にでて言った。
「野村智也さん貴方を並木イチカさん殺人の容疑でこの逮捕状を執行します。それと二宮真理さん貴方は脅迫罪、傷害罪その他諸々あり、貴方にも逮捕状が出ています。校長教育委員会そして貴方のお兄さんの二宮警視正にも許しが出ています。」
二宮は崩れるように言った。
「お兄さんがそんな事を・・・・。」
「では名前を呼ばれなかった生徒以外警察署に行きます。覚悟はできましたね。」
安積はすこし微笑んで恐ろしい事を言ったのだった。
殆どのメンバーはそのまま送検され、少年院少女園に入った。野村智也はイチカさん殺害の取り調べを受けた。取り調べは安積、記録に結城が入った。マジックミラー越しに病院から戻ってきた竹内と永尾、中野がいた
「貴方はどうやって並木さんを殺害しましたか。」
「いつもの診療が終わって帰るときに後ろから襲い、猿ぐつわを噛ませました。そのあと屋上へ連れていくと喧嘩になったんです。」
「それはどんな喧嘩だったの。」
「恋愛問題です。俺はイジメを受けていたイチカの事が好きでした。だから俺は誰もいないとこで告白しようとしました。しかしイチカが暴れて何もできなかったんです。そして気づいたらイチカは落ちてて、その場から急いで逃げました。父は知っていて、すぐに自首を進めてくれました。でも二宮先生には口止めされました。そこから何にもわかんなくなって、ある日気づいたら渋谷のビルに立っていました。イジメていたのは好きだから見て欲しかったんです。でもそのうちクラスメイトは本格的なイジメへ方向を変えたんです。だから俺は護りたくて告白しようとしました。」
「では、高見シュウさんの事はどうなの。」
「高見シュウをイジメ始めたのはよく覚えていません。俺は殆ど関わらなかったので。高見シュウは先生の言い間違いからスタートしたんです。イチカが転校してきたのは六月、あの先生が来たのは四月の最初で個名を間違えたところからだったんです。」
安積は席を立ち野村智也の側に行った。
「貴方いろいろ苦しんでいたの。相手に支配され自由のない世界だったのね。でも罪はしっかり償ってもらうわ。でもこれは殺人じゃなくて、過失致死よ。運悪く並木さんは転落してしまったんでしょ。」
「はい。落とすつもりはありませんでした。好きな人を殺せなんかしません。」
安積は結城に後の処理を任せ、取調室をでた。
外で永尾と竹内が話していた。
「何か今回の事件丸でハルトの仕組んだ事件みたいね。」
「そんなことないよ。たまたまだよ。」
中野は頭にはてなを浮かべながら聞いていた。
事件が解決し、安積は槙野の病院に顔を出した。
「ハンチョウ、ご迷惑をおかけしました。」
「良いのよ、ヒロが無事でよかった。」
「事件は解決したんですか。」
「ええ、そこで貴方にお願いがあるの。」
槙野は目をぱちぱちさせ、安積を見た。安積は鞄から紙とペンを出した。
「身体は元気でしょ。ヒロの得意なイラストでシュウさんに感謝状を贈ろうかなって思って。勇気を持って私たちのところに来てくれたからね。」
ヒロは紙とペンを受け取り感謝状を描きはじめた。安積は元気そうな槙野の様子を見て、帰っていった。
槙野が退院したのは、三日後の事だった。まだ全ての傷が癒えたわけではないが、だいぶ良くなっていた。槙野は安積に完成した感謝状を渡し目の前にいる高見シュウに渡した。
「シュウさん、貴方の証言で事件が解決しました。ありがとうございました。」
高見シュウは受けとると、かわいいですねと笑った。周りにいるメンバーは拍手をしていた。
結城は竹内に話しかけた。
「ハル、この間言ってた事って本当なの。」
「この間の事。」
「ヒロと付き合っているって言ってたけど。」
「ゴメンなさい。実はあれ嘘なんです。結城さんを元気づけようとしていたんです。」
「ハル、あんたって人は。」
強行犯係に結城の叫び声が響いた。普段おとなしい人が悲鳴をあげるなんて誰も予想していなかった。安積も槙野も驚いていた。
相手に見えない顔をみんな持っている。それをただ隠しているだけ。それが表に出たとき、自分のことが相手に伝わるようになる。
これで第二部を終ります。読んでいただきありがとうございます。
次の投稿で最後です。投稿はかなり先になると思います。




