表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
強行犯特別捜査班 2  作者: 村雨海香
4/7

イジメ捜査 4

 結城と中野が外から帰って来ると、安積も槙野も会議室から出てきていた。安積の手には、鑑識の結果報告書があった。

「ケイト、ナカどうだったの、ーー高校は。」

「一年生からはダンス部に所属していると聞きましたが後は何も聞けませんでした。」

「どう言うことなの。」

 安積が聞くと中野は怒ったように言った。

「みんなイチカさんがいないものとして扱っています。二年の生徒からは素っ気ない答えとか、私達を嫌う目で見てきたんです。絶対あれ何か隠してますよ。」

 中野は苛立ちを押さえられない様子だ。その時竹内が口を挟んだ。

「それってもしかしてですけど、先生が一枚噛んでるんじゃ・・・。」

 安積は信じられなかった。イジメられている生徒が居るのにそれを知らん顔しているのが。

「ハルどう言う事なの。」

「はい、私が昔担当した事件にあったんです。ニュースで大きく取り上げられなかったので、あまり知られていませんが、学校でイジメがあったのに先生は気付かないふりして放っておいたんです。そのうち先生は「その子だけならイジメてもいい。」って言って更にエスカレートしたんです。その先生産休で休んでいる先生の代わりに入った先生で何も知らなかったのです。イジメられている子がアレルギー持ちだったこと。その子は、重度の乳製品アレルギーで、食べなくても少しかかっただけで発作を起こしてしまう子でした。それなのに先生は強要して彼女に飲ませようとしました。でも飲まなかったんですがその帰り、クラスメートに残った牛乳をかけられ、緊急搬送されたけど間に合わず帰らぬ人になったのです。クラスメートも最初は本当にアレルギー持ちだと思っていたけど、そのうち本当はただ嫌いなんじゃないかって思い出したそうです。」

 全員真剣に聴き入っていたがふと疑問が湧いた。

「ハル、どうしてそんな大きな事件ニュースにならなかったの。」

「それが、その先生のお兄さん国会議員で「妹には罪を償ってもらうが、ニュース取り上げないでくれ。俺の名誉のために。」って言って極秘逮捕でマスコミは気付かなかったんです。その人大臣になる手前まで行っていたので。」

 昔、浜野海という国会議員がいた。大臣候補まで行ったが、選挙法違反で逮捕された。

「ところで、ハンチョウの持っている報告書はなんですか。」

 安積は机の上に報告書を置いた。それは筆跡結果の報告書だった。

「並木イチカさんの遺書を見たとき、見た目にあわず男っぽい字を書くと思ったの。そこでノートを見せてもらった、結果字は全く違った。そこで念のため鑑識さんに鑑定してもらった結果がこれよ。」

 並木イチカは、一画一画しっかり書くというより続け字気味、木や禾、糸などは全て下がはねていた。しかし遺書にはそのはねが見られなかった。

「結果からこの捜査は殺人も視野に入れて捜査するわ。もう一度学校に駆け寄って見ましょう。」

 返事をして自分の仕事にかかろうとしたとき、安積の同期でよき理解者の岩城真警部補が学年を連れて入ってきた。

「あづみんに話したい事があるんだって。」

 岩城は交通課の小隊長つまり係長だ。係長になった今でも白バイに跨がっている。外のパトロールだけでは物足りず署内もパトロールしているのだ。始めの頃は安積の事を呼び捨てにしていたが、結婚してからあづみんと、呼びはじめその名残が今も続いてるのだ。

 なぜこの少女がここへ来られたのだろうか。


 結城と中野の後ろをつけていたのはその少女だった。名前は高見シュウ。彼女は二人の後をつけていたが途中で見失ってしまったのだ。それから近くの警察署と調べここへだどり着いたのだ。中に入ろうか迷っていると、岩城に声を掛けられたのだ。高見シュウは「並木イチカさんの捜査をしているのはここですか。」と質問し岩城が強行犯係に連れてきたのだ。

「シンありがとう。」

「いいてことよ。あづみんのためなら何時でも動くから。」

 そう言って岩城は出て行った。岩城は男で安積は女、昔署内で二人は付き合っているのではないかと噂されたが、二人の同期が昔からそうだった、と言うとその噂は消えていった。そして未だ結城だけが気にしていた。

 安積は、高見シュウを刑事部屋の接客スペースに座らせ話しを聞いた

「私達学校で口止めされていますが、私言います。」

入って来たときは弱気な感じだったが、話しはじめると真っすぐに安積と結城を見ていた。

「イチカさんは自殺したんじゃありません。殺されたんです。」

 安積は少し驚いた。警察しか知らない事を知っていたから。

「どうしてそう思ったの。」

「はい、イチカは二年の六月頃に転校してきました。高校に入ると転入するのは難しいのですが、この学校は、そういった子や障がいを持っている子も受け入れているのです。SDGS(持続可能な開発目標)の平等な教育を受けさせるに取り組んでいるんです。転入してきた生徒や障がいを持っている生徒は授業料や入学費が安かったりします。普通に入っても結構安いんですが・・・・・・、あっ、すみません学校の話ばかりで。」

 安積は笑って言った。

「いいのよ。詳しく聞けた方が嬉しいから。」

「ありがとうございます、イチカは転入してきてからずっと、イジメられていました。今までいた人の中に別の人間が入るなんてまるで、狼の群れに羊をほうり込むようなものです。でも彼女は羊なんかではありませんでした。気が強く、正義感の強い子でした。」

「彼女はずっと一人だったの。」

「いえ、彼女が入って来るまでイジメのターゲットは私でした。彼女、私が一人だったことに気づいて話しかけてくれたんです。私は「貴方もイジメられてしまう」と言ったんですが、「イジメる方が悪い君は何も悪くないよ。」と言われたんです。そこから私達は友達になりました。」

 更に詳しく話しを聞くとイジメの内容は凄まじかった。

「イジメが本格的に始まったのは七月頃でした。その頃から物の隠してが始まり、暴力、暴言とエスカレートしていきました。今ではたんぼに落とされたり、建物から飛び降りろと命令されていたんです。私は助けたかったんです。でも助けられなかった。またイジメられるのが怖かったから。」

 一度イジメられた子に現れる現象だ。やっとイジメから解放されたと思うと、別の子が狙われている。助けたい、でも助けると自分もまたイジメられると思う事だ。この現象は見ている側にも起こる。

 安積は高見シュウの話しを聴いたあと、車で送るよう中野に言った。


 安積は永沼元警部のいる部屋に向かい、今回の事件について話しをした。そしていつも言う台詞がある。

「課長、潜入捜査の指示をお願いします。」

 永沼はいつも即決で答えをだす。全てわかった、と答えて指示をするのだ。

 今回は並木イチカを殺した犯人の逮捕、クラスの様子、それから先生の様子を見ることだ。安積はずっと「二宮」という苗字に引っ掛かっていた。

 安積は刑事部屋に戻り電話が終わるのを待っていた。今回の潜入捜査で誰を連れて行くか考えていた。結城と中野は既に生徒に顔を見られている、永尾は並木賢二の取り調べ・・・・・・と考えていたが脳裏に泣きじゃくる姿が焼き付いていた。

 今回は安積と槙野で潜入することになった。

 安積のデスクの周りには班員が集まっていた。捜査中安積が席を外すとよく見る光景だ。安積は槙野を見て言った。

「今回は貴方よヒロ。」

 槙野の目は真っ直ぐ安積を見ていた。返事をしたその声は意志があった。

「今回の潜入目的は、並木イチカを殺した犯人の逮捕と、クラスの状況、それから先生の様子を見ることよ。」

 話しをしていると、永沼が刑事部屋に入ってきた。

「安積、ーー高校と連絡がとれた。今なら大丈夫だそうだ。行けるか。」

「はい、ヒロ車の運転をお願い。」

 安積は、槙野と永沼を車に向かわせ急いで準備した。

「ケイト、あとの指示はお願いね。」

 そう言って安積は飛び出して行った。時刻は定時だった。

 結城達は、安積達が戻って来るまで報告書の製作を行うことにした。時間が空いたときにしかこういったことはできないから。


 学校に着いた安積達は、真っ直ぐに校長室に向かった。

 この学校の校長室は一階にあり、直ぐに入れた。

「失礼します。ーー署の安積です。」

「安積さん、お待ちしていました。どうぞこちらへ。」

 安積槙野永沼は校長室の接客スペースに招かれた。安積は警察手帳から名刺を出した。

「こちらは刑事課課長永沼元です。そしてこの度潜入させていただきます、安積と槙野です。」

「ーー高等学校校長、藤木ケイトです。」

 自己紹介を終えると、藤木は名刺を手に取って、二人を何度も見た。安積はまた同じ事を聞かれると思ったが、放たれた言葉は思わぬ言葉だった。

「偽名は使われなかったんですね。」

「偽名ですか。」

「実は私、偽名を使って生活しているんです。」

藤木はポケットからもう一枚名刺を出した。

「私の本当の名前は、藤木圭胡と申します。ずっと女の子に間違えられていたので、大学に進学してから今の名前を使っているのです。」

 安積は思った。偽名を使えばあんなことにはならなかっただろうと。しかし自分の心に嘘はつきたくなかった。呼ばれて反応ができなくて友達を傷つけたくなかったから。

 安積は切り替えて捜査の話しをした。

「今回の捜査の概要ですが、並木イチカさんが今朝渋谷二丁目のビルから遺体で発見されました。鑑識の調べによりますと、歯の間から糸屑が発見された事により誰かに殺された可能性が浮上しました。」

「イジメもあったんですよね。」

「はい。ところで担任の先生は・・・・・。」

「部活を引き上げてくると言ったので、もうすぐくるはずなんですが。」

 その時ノックをし一人の女性が入ってきた。

「遅れてすみません。」

「二宮先生、お疲れ様です。こちらが二組の担任二宮真理です。」

 二宮は藤木の横に腰を下ろし、頭を下げた。

「ご紹介にありましたが、私二宮真理と申します。」

「警視庁ーー署強行犯係の安積と申します。並木イチカさんの話を伺う前に、先に明日から並木さんの事で潜入捜査を行います。その了承を先にいただきたいのですが、よろしいでしょうか。」

「はい、早く並木さんの無念を晴らしてあげて下さい。」

「もう一つ忠告があります。並木イチカさんが自殺でなければ、殺人罪で生徒の逮捕の可能性もあります。」

 二宮は少し止まって、はいっと返事をした。何か知っているような表情だった。

「もうすぐ部活が終わって、職員会議が始まるまでこちらで少々お待ち下さい。」

 そう言うと校長と二宮は部屋を出て行った。校長は日課の水やり、二宮は部活の事で行ってしまった。

「ヒロ、あの先生どう思った。」

「たぶんあれは何か握ってますね。」

「安積はどう思ってるんだ。」

「犯人はたぶん・・・・生徒です。」


 職員室に招かれた安積と槙野は校長より紹介された。

「こちらは、今回二年二組の並木イチカさんの件で捜査することになった、ーー署の安積さんと槙野さんです。ここでは先生として入ってもらいます。

「ーー署の安積です。お願いします。」

「同じく槙野です。お願いします。」

 二人は頭を下げ挨拶をした。

「では、二人の設定を付けます。安積さんは、育休明けで学校になれるための実習、槙野さんは教育実習生ということで、後、名前安積さんは・・・・」

 よく喋る校長だ。安積は名前のところを遮り本名でいくと話した。


 明日から恐怖の二週間が始まるのだった。


 署に戻ってきた安積達は部下に話しをした。

「明日から潜入捜査に行くことになった。並木さん殺しの犯人はおそらく生徒だと思うの。」

 結城が問う。

「並木さんの担任二宮真理の態度が妙に明るかった、しかし逮捕と言うと暗い表情をしたが、一瞬にやけたように見えたの。」

「それだけじゃ生徒が犯人なんて分からないのでは。」

「生徒は逮捕できるけど、私は逮捕できない。って事ですね。」

 竹内が言った。

「どうしてそんな事がわかるの。」

「二宮真理、兄は本庁捜査一課の課長、二宮ハルトです。」

 竹内のパソコンに写しだされていたのは、警察組織の資料だった。年齢も職も一致していた。安積の胸の霧も晴れた。

「よくやったはねハル。明日から私とヒロは居ない。ケイトとナカは並木賢二の取り調べ、ハルとナツは彼女の目撃情報を追ってちょうだい。今日はもう遅いから解散よ、お疲れ。」

 安積がそう言うと各自荷物をまとめて帰って行った。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ