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強行犯特別捜査班 2  作者: 村雨海香
3/7

イジメ捜査 3

 永尾と中野は並木ルカの夫を取調室に連れて行った。

 並木賢二三十八歳、会社が倒産して無職、かなり大きな会社で全国ニュースにもなった。そのお金があるため、昼から遊んで生活できている。しかしお酒が手放せない生活となっている。すなわち、アルコール中毒だ。

 今永尾が取り調べを行い中野が記録係をしている。マジックミラーを通して結城が見ていた。並木賢二は、永尾に何を質問されても答えなかった。黙秘を続けたため、その日の取り調べは終了した。

 結城が時計を見ると、昼を過ぎていた。安積と一緒にご飯を食べようと思い、刑事部屋に足を運んだ。


 昼前竹内と槙野は聞き込みから戻ってきた。安積が取り調べの様子を見に行こうとしとところに戻ってきたのだ。

「で、情報はどうだったの。」

 竹内が答えた。

「ビルの従業員は朝から並木イチカの姿を見てないと言って、通行人は誰も見たことないって言っているんです。」

「朝あのビルに入ったわけじゃないの。」

「従業員が言うには月に二三度、夕方に目撃しているそうです。」

「何処に行ってたかわかったの。」

「いえ、通いの人はそのまま入って行くそうです。多分ですが、ビルの中にある心療内科に通っているのではと思うんです。今は心療内科やカウンセリングで学生の話を聞いているそうですね。」

「その心療内科に話は聞けたの。」

「そこは完全予約制で入れないんです。」

 わかった、と答えを返した。安積は槙野の様子が気になっていた。妙に静かだ。他人が話しているときに、そこまで話すタイプではないが違和感がある。

「ハル、ヒロ、もうお昼だから先に休憩していいよ。」

「ありがとうございます。では先に。」

 須田は微笑んで方向転換した。でも黒木は短く返事をして、その場に立っていた。

「何かあったの。」

 槙野はハッとして首を横に振った。

「いえ、なんでもありません。少し考え事を・・・・・。」

「嘘よね。」

 安積の目は槙野の心を見透かしていた。

「ハル、ちょっと待っててね。」

 安積はそう言って槙野と二人で会議室に入った。ガラス張りだが、完全防音の部屋だ。

 竹内が刑事部屋で待っていると、結城が姿を現した。

「ハル、どうしたの。」

「結城さんお疲れ様です。ヒーちゃんの様子がおかしくて私何度も声をかけようと思ったけど、かけられなくて、そしたらハンチョウが先に声かけて今二人で話してます。結城さんは。」

「二人が聞き込みをしている間に、ガイシャの並木イチカさんの父親、並木賢二が妻を殴った容疑と公務執行妨害の容疑でナツが逮捕して取り調べの様子を見てたの。」

「それって、奥さんがDVドメスティックバイオレンスの被害者ってこと。」

「そうね。イジメの娘にDV被害の妻、倒産してアルコール中毒になった夫、問題の多い家族ね。」

「で、夫はなんて言ってるの。」

「それがね、自分の事だけ話してその他は黙秘しているの。」

「そうなんだ。ナッちゃんとイッちゃんはまだ取り調べ。」

「いや、並木を一旦ムショに入れた。明日もう一回取り調べをする予定よ。二人は多分社員食堂にでも行ってるんじゃあないかな。」

 竹内の遊び心が揺れた。

「結城さんは行かなかったのですね。」

 結城は赤面した。

「ハル、からかうんじゃないの。私は・・・。」

 竹内は少し真剣に言った。

「自分の気持ちに蓋しなくてもいいんですよ。今、LGBT(レズビアン女性同性愛者、ゲイ男性同性愛者、バイセクシャル両性愛者、トランスジェンダー身体の性と心の性が一致しない)が認め始めているそうですよ。」

「ここは職場よ。そんなことできるわけないじゃない。それに本当の気持ちに気付いたときが怖いのよ。」

 竹内は天井を見て言った。

「じゃあ、結城さんにだけ言います。私とヒーちゃんはそういう関係なんです。ここでは相棒としていますが。ある日私達どっちも同じ思いだった事に気付いたんです。」

「しかし、ヒロには大学の同級生の彼氏が・・・。」

「すでに了承済みです。私達籍は入れないって決めてるんです

「私はあの人に届かない。だから、ずっと片思いでいいの。」

 竹内は結城の思いが聞けると、笑って「わかりました」と言って話をやめた。


 会議室に入った安積と槙野は席に着いた。

「ヒロ話してちょうだい。何があったの。」

 槙野は下を向いて答えた。

「・・・一緒なんです。」

「一緒って。」

「私と同じイジメられかたしてるんです。イチカさんはツキがなく死んでしまったんです。」

 槙野は目に涙をため訴えてきた。

「私、そんな子を助けたいと思って刑事になったのに、助けられないなんてつらいです。」

「ヒロ、泣きたいなら泣いていいのよ。」 

 安積は自分の胸に黒木を寄せつけた。

「分かるわ、守りたいと思っても先に死んでしまうこともあるもの。私も入った時はそうだったから。イジメられてる子って相談できないって言ってるの。何されるかわからない、弱い者扱いされると思って自分の心に蓋をしてしまってる。本人からほとんど相談はなくて、だいたいが親からの相談なの。」

 槙野は安積の胸に顔を付け服を握りながら嗚咽をもらしている。

「私がもっと強かったら、・・・私が、私が・・・。」

「ヒロは十分強いわよ。ヒロはなんにも悪くないの、悪いのは、イジメている人達なの。」

 安積はぐっと槙野を抱きしめた。


 安積は槙野が落ち着くまでずっと側にいた。ここまで取り乱したこ槙野の姿を見たのは始めてだった。いつも冷静で物静かな姿の裏に子供のように泣きじゃくる姿を持っていた。


 安積を待っていた結城も、槙野を待っていた竹内も二人が来ないと思い、社員食堂に向かった。二人で昼食をとり、刑事部屋に戻ってきた。二人はまだ会議室にいた。

 夕方結城と中野はーー高校へ向かった。学生達は下校の最中だった。結城と中野は、警察手帳を見せ並木イチカの情報を集めた。

「ちょっとゴメンネ。警察なんだけど並木イチカさんって知ってるかな。」

「並木先輩は二年のダンス部ですよ。それ以外はよく知りません。」

「少しいいかな。並木イチカさんって知ってるかな。」

「二年なんでほとんど関わりはありません。もう少し待てば、二年生も出てくると思います。」

 結城も中野も声を掛けたのは、一年と三年だった。名札の色が学年カラーのようだ。一年は赤、三年は青のようだ。結城と中野は別の色が来るのを注意深く見ていた。


 その頃、二年は並木イチカの担任の二宮真理から話しをされていた。

「彼女の事は誰にも話しては駄目よ。彼女はそれでいい存在なんだから。」

 これがイジメを見て見ぬ振りをしていた教師だ。

 その言葉に納得のいかない生徒と脅える生徒がいた。


 結城と中野は緑の名札を見つけると声を掛けた。その対応は素っ気なかった。

「知りませんよ、あんな暗い奴。」

「クラス違うんで知りません。」

「彼女死んだんでしょ。何の関係もありませんよ。」

 全く答えがでなかった。結城と中野は署に戻ることにした。

 後ろから一人の生徒が跡を付けていた。

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