疑念と疑問#04
「独り言は寂しいよ? …はい、これ」
「ん?」
芳野の手にはジュース。
わざわざ買って来てくれたらしい。
とてもありがたいのだが、冷たいコーヒーというのが気に掛かる。
「何故、冷たいの?」
「体温で温めなさい」
「貴方にそれが出来ますか?」
「出来ても絶対にしないね」
「俺もしない」
対して、芳野は手に持っているコーヒーを何度も握りなおしている。
きっと温かい方だろう。
それを考えるなら、この冷たいコーヒーはわざとだ。
悪意があって買ってきたに違いないだろう。
「交代しないか?」
「別に良いけど、もう口つけたよ?」
「別に構わない」
「それに、凄く甘いけど」
その言葉に河野が固まる。
甘いコーヒー。
別に飲めないわけではない。。
甘いものが嫌いなわけではないが、コーヒーはブラックしか飲めない。
「いつから、甘いコーヒーが飲めるようになったの?」
「……」
「ほら、交換してあげるよ?」
「いや、いい…」
自分から出した交渉を決裂させる。
甘いコーヒーを飲むぐらいであれば、冷たいブラックを飲む。
「ほら、早く飲みなさいよ。冷めるわよ?」
「これ以上冷たくなったら凍っちまう」
2月下旬の寒空の下で冷たいコーヒー。
普通であれば温かいコーヒーだろう。
自動販売機は、全て温かい飲み物。
ということは店舗で買ってきたコーヒーということだ。
「いただきます」
「どうぞ」
河野は一気に飲み干す。
時間にするなら5秒も掛かっていない。
それほど早く飲み干す。
「大変、美味しゅうございました。」
「それはどうも。」
嫌味の一つでも言い放つ。
そうしないと、気が済まない。
「じゃあ行こうか。」
「……」
「返事は?」
「はいはい」
公園を後にする。
そのあとも何件もの店を回った。
荷物は二人で持たなければ、持ちきれない量になった。
比率は、7:3。
均等に分けるということを知らないのだろうか?
買い物を全て済まし、帰路に着く。
芳野の家に寄り、荷物を降ろす。
そのあと家に向かう。
帰宅時間は午後8時過ぎ。
その日はすぐに眠りに就くことにした。
玄関の鍵を開けた時にはすでに、やわらかいベッドに倒れこむ選択しか思いつかなかった。
明日にこの疲れが残らない事を願いながら眠りについた。




