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桜の季節に君を想う  作者: シズマ
桜の季節に君を想う ~2月26日~
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疑念と疑問#04

「独り言は寂しいよ? …はい、これ」


「ん?」


 芳野の手にはジュース。


 わざわざ買って来てくれたらしい。


 とてもありがたいのだが、冷たいコーヒーというのが気に掛かる。


「何故、冷たいの?」


「体温で温めなさい」


「貴方にそれが出来ますか?」


「出来ても絶対にしないね」


「俺もしない」


 対して、芳野は手に持っているコーヒーを何度も握りなおしている。


 きっと温かい方だろう。


 それを考えるなら、この冷たいコーヒーはわざとだ。


 悪意があって買ってきたに違いないだろう。


「交代しないか?」


「別に良いけど、もう口つけたよ?」


「別に構わない」


「それに、凄く甘いけど」


 その言葉に河野が固まる。


 甘いコーヒー。


 別に飲めないわけではない。。


 甘いものが嫌いなわけではないが、コーヒーはブラックしか飲めない。


「いつから、甘いコーヒーが飲めるようになったの?」


「……」


「ほら、交換してあげるよ?」


「いや、いい…」


 自分から出した交渉を決裂させる。


 甘いコーヒーを飲むぐらいであれば、冷たいブラックを飲む。


「ほら、早く飲みなさいよ。冷めるわよ?」


「これ以上冷たくなったら凍っちまう」


 2月下旬の寒空の下で冷たいコーヒー。


 普通であれば温かいコーヒーだろう。


 自動販売機は、全て温かい飲み物。


 ということは店舗で買ってきたコーヒーということだ。


「いただきます」


「どうぞ」


 河野は一気に飲み干す。


 時間にするなら5秒も掛かっていない。


 それほど早く飲み干す。


「大変、美味しゅうございました。」


「それはどうも。」


 嫌味の一つでも言い放つ。


 そうしないと、気が済まない。


「じゃあ行こうか。」


「……」


「返事は?」


「はいはい」


 公園を後にする。


 そのあとも何件もの店を回った。


 荷物は二人で持たなければ、持ちきれない量になった。


 比率は、7:3。


 均等に分けるということを知らないのだろうか?


 買い物を全て済まし、帰路に着く。


 芳野の家に寄り、荷物を降ろす。


 そのあと家に向かう。


 帰宅時間は午後8時過ぎ。


 その日はすぐに眠りに就くことにした。


 玄関の鍵を開けた時にはすでに、やわらかいベッドに倒れこむ選択しか思いつかなかった。


 明日にこの疲れが残らない事を願いながら眠りについた。

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