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桜の季節に君を想う  作者: シズマ
桜の季節に君を想う ~2月26日~
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芳野亜子#02

「準備できたの?」


「いや、まだ出来てない」


 部屋の奥を覗き込みながら質問をされる。


 その質問に対し、即時に答える。


 別に考える事もない。


 今の現状をそのまま伝えるだけ。


「普通はさ、出掛ける時間までに準備ってしない?」


「一般的には、そうするだろうな」


「あんたは、一般じゃないのか」


 そんなやり取りをする。


 別におかしい事はない。


 これが普通なのだから。


 普通だからこそ、相手も責めたりしない。


「今から準備する」


「早くしてよね」


 家の中に招く。


 流石に外で待つのは辛いだろうし、こちらとしても辛い。


「久しぶりに家に上がったかも」


「そうだっけか?」


「大体、2ヶ月ぶりかな?」


「そんなになるのか」


 会話をしながら、準備を進める。


 一緒に出掛ける、と言ってもショッピングに付き合うだけ。


 本格的に、何処かに出掛けるという訳ではない。


「あ…」


「どうしたの?」


「いや、表札ほしいなって思い出した」


「一人暮らしで必要?」


 一人暮らしだから必要だとか、必要じゃないとかの話ではない。


 大学に入学してから、一人暮らしを始めた。


 前から一人暮らしをしてみたいと思っていて、一人暮らしに良い幻想を抱いていた。


 親の束縛から解放されると聞けば、口うるさく言われることもなくよく思えるかもしれない。


 しかし実際は楽しいことばかりでもない。


 一人という自由と引き換えに、全てを自分でこなさなければいけない。


 一人暮らしを始めると、親の有り難味が良くわかる。

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