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桜の季節に君を想う  作者: シズマ
桜の季節に君を想う ~3月4日~
24/29

決心

「夢物語、か。なるほどな」


 薄々はわかっていた。


 ただそれは現実ではなく、どこか他人事のように思っていた。


 でも今ハッキリと理解した。


 すんなりと受け入れることもできた。


 自身でも驚くぐらいにすんなりと。


 きっと夢物語だから。


「ありがとうな」


「どうして?」


「いい夢だった」


「そう。答えを見つけたのね」


「あぁ。考えていた全てが結びついた」


 河野は少女にお礼を言う。


 昨日から巡っていた疑問。


 そのすべてから解き放された。


「これからどうするの?」


「さぁな」


「時間がないよ?」


「じゃあ、君ならどうする?」


「私は消えない」


「明日、君のいる世界が消える。としたら?」


「そういうこと」


 少女は何か考え出す。


 こんな質問をされて、すぐに答えられるだろうか?


「わからない」


 大事件を起こしてみる、とか。


 出来なかったことにチャレンジしてみる、とか。


 やり残したことをギリギリまでやる、とか。


 そう言う人たちがいる。


 でも、実際は何をしたらいいのか分からない。


「そういうことだ」


「そうね」


「したいことは沢山ある」


「うん」


「でも、何をしたらいいのか分からない」


「うん」


「それなら…」


 したい事が多すぎる。


 だから、何をしたらいいのか分からない。


 それは誰でも同じだろう。


 やらないといけない事が多すぎて、何から手を出せばいいのか分からない。


「いつもと変わらないことをすればいい」


「なんで?」


「それが一番、楽しい時間だからだ」


 河野はその一言を少女に残す。


 そして、公園を後にする。


「初めて」


「そうだね」


 少女の横に突然、少年が現れる。


 年は少女と変わらないようだ。


「今まで、見たことのないタイプ。」


「消すには惜しいかい?」


「そんなことないよ」


「本当かい? ニナ」


「貴方はどう思うの? ニア」


「それは分からない」


「私は、嘘かもしれない。そう思ってる」


 二人はそのまま、その場から姿を消した。

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