決心
「夢物語、か。なるほどな」
薄々はわかっていた。
ただそれは現実ではなく、どこか他人事のように思っていた。
でも今ハッキリと理解した。
すんなりと受け入れることもできた。
自身でも驚くぐらいにすんなりと。
きっと夢物語だから。
「ありがとうな」
「どうして?」
「いい夢だった」
「そう。答えを見つけたのね」
「あぁ。考えていた全てが結びついた」
河野は少女にお礼を言う。
昨日から巡っていた疑問。
そのすべてから解き放された。
「これからどうするの?」
「さぁな」
「時間がないよ?」
「じゃあ、君ならどうする?」
「私は消えない」
「明日、君のいる世界が消える。としたら?」
「そういうこと」
少女は何か考え出す。
こんな質問をされて、すぐに答えられるだろうか?
「わからない」
大事件を起こしてみる、とか。
出来なかったことにチャレンジしてみる、とか。
やり残したことをギリギリまでやる、とか。
そう言う人たちがいる。
でも、実際は何をしたらいいのか分からない。
「そういうことだ」
「そうね」
「したいことは沢山ある」
「うん」
「でも、何をしたらいいのか分からない」
「うん」
「それなら…」
したい事が多すぎる。
だから、何をしたらいいのか分からない。
それは誰でも同じだろう。
やらないといけない事が多すぎて、何から手を出せばいいのか分からない。
「いつもと変わらないことをすればいい」
「なんで?」
「それが一番、楽しい時間だからだ」
河野はその一言を少女に残す。
そして、公園を後にする。
「初めて」
「そうだね」
少女の横に突然、少年が現れる。
年は少女と変わらないようだ。
「今まで、見たことのないタイプ。」
「消すには惜しいかい?」
「そんなことないよ」
「本当かい? ニナ」
「貴方はどう思うの? ニア」
「それは分からない」
「私は、嘘かもしれない。そう思ってる」
二人はそのまま、その場から姿を消した。




