創られた世界
「この世界はね、誰かが創った世界なの」
「創った?」
歴史上の人物のことだろうか?
ここまで技術を発達させた、歴史上の誰か。
「人も、木も全て創られた。どう考えるかは、貴方次第」
「……」
「明日、桜が咲くの」
「明日? なんで分かるんだ?」
開花予想はまだ先だ。
予定が早くなったとしても、明日はない。
「明日お別れ」
「!?」
桜が咲く。
つまり、別れの時。
「なぁ?」
「?」
少女は首を傾げながら、河野の顔を覗き込む。
あどけない仕草だ。
「それは、俺のことなのか?」
さっきの事もある。
そう考えるなら、河野の事だろう。
姿が見えていない。
つまり、存在がなくなる。
「貴方かもしれない」
「かも?」
「貴方かもしれないし、他の誰かかもしれない」
「そういうことか。 …回りくどいな」
少女との会話で、河野は理解をする。
パズルのピースが見つかったようだ。
少女が夢で言った、『ごめんなさい』の意味も。
創られた世界の意味も。
つまり、河野自体も創られている。
存在がなくなる。
それは少女の意思。
だから謝った。
今までの記憶も全て創られた。
出来上がっていた夢物語。
そして、河野かもしれないし、他の誰かかもしれない、存在の消滅。
簡単に考えたら。
河野にとっては、他の人がいなくなる。
他の人にとっては、河野がいなくなる。
そういう事だろう。




