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少女#02
「夢…?」
小鳥の囀る声が聞こえる。
記憶にかかった靄に反して清々しい朝だ。
窓の四隅は白く曇り、室内と外気の温度差を感じることができる。
吐く息は白く。
木々は葉を付けていない。
「なんだったんだ?」
重たい体を動かし、顔を洗う。
水道から出る水は、氷水のように冷たい。
そのおかげで、しっかりと目が覚める。
タオルで顔を拭き、食事を取る。
いつもと変わらない。
「……」
起きはじめつつある頭で夢の事を考える。
あの少女は一体誰なのだろうか?
夢としては変に記憶がはっきりしていた。
会った事はない、それは間違いなく言えることだ。
しかし、知らないわけではない。
いや、知っている気がするだけかもしれない。
そんな思考を巡らす。
「桜が咲いたらお別れ…」
少女の言葉を繰り返す。
さっぱり意味が分からない。
何故、桜が咲いたら別れるのか?
「夢の話…」
夢の話。
何とも片付けやすい、良い言葉だ。
夢だから関係ない。
現実で聞いた言葉ではない。
だから、そこまで考える必要がない。
夢なのだから。




