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桜の季節に君を想う  作者: シズマ
桜の季節に君を想う ~2月27日~
15/29

木之下 光#04

「少女は正確な事は教えてくれなかった」


「でも、何か教えてくれたのか?」


「そうだ」


「どんな人なの?」


「そうだな…」


 木之本が河野を見る。


 何かを考えているようだ。


 そして、ゆっくりと口を開く。


「河野みたいな奴だな。少女の言葉を整理するなら。」


「俺?」


「こんなどこでもいそうな男が、光の大切な人?」


 冗談交じりに言う芳野。


 やや聞き捨てならない言葉が聞こえたが、一度飲み込むことにした。


 それよりも表情や言葉には見せないが、精神が揺れている。


 夢の言葉は、河野に向けられた言葉。


「今年の桜開花予想は三月半ばだ」


「なんでそんなこと知ってるの?」


「俺予報だな」


「当てにならないな」


「心配はいらない、正確なデータを元にしている」


 正確なデータ。


 一体なんなのだろうか?


 でも、木之本の予報が正しいというなら。


「桜が咲いて、河野に異変が起きたら、少女は凄いな」


「なんでだ?」


「将来は占い師、もしくは、預言者だ」


「いわれた身にもなってくれ、なぁ亜子。」


「た、たしかにね」


 芳野の声に元気がないように聞こえる。


 気のせいだろうか?


 何か深刻な事を考えているような、そんな感じだ。


「そう当たることではないだろうがな」


 木之本はそんな言葉で話を締める。


 そして、感想を促すように二人を見る。


「まぁ今までの中では面白かったよ。作り話っぽかったけど」


「そうだね。木之本にしては珍しくね。作り話っぽかったけど」


「珍しくって言うのが余分だし、作り話でもないからな」


 そんなことを言ってるが、満足そうな顔をしている。


 感情を表に出しやすい奴だ。


 見ただけで感じ取る事ができる。


「さて、授業だ」


 時計を見ると、授業の始まる時間を指していた。


 各自に適当に座る。


 そして、いつもと変わらぬ態度で授業を受ける。


 河野だけは、他の事を考えているようだった。


 放課後になり、急ぐこともなく帰路に着く。


 その時も、朝のことを考えていた。


 木之本が言った、朝の言葉。


 確実にそれは河野を指している。


「桜が咲いたらどうなるんだ?」


 ただ、それだけが疑問。


 それだけが、謎に包まれたまま。

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