木之下 光#03
軽く話を流されてしまう。
必死に弁解しようと思った河野が馬鹿らしい。
木之本はこういう奴だ。
前から分かっていた。
なのに過剰に反応してしまった。
「それで話を戻すが」
「くだらない話じゃないよな?」
念を押す。
くだらない話なら聞く必要はない。
むしろ、時間の無駄だ。
「まぁ、聞いてから判断してくれ」
「うん」
「その少女と出逢ったのは、つい最近」
木之本は話し出す。
自分が出逢った少女について。
それに耳を傾ける二人。
「まず、その少女の服装だが…」
しっかりと、確実に。
一字一句間違えないように、二人に伝える。
普通に聞いている分には、おかしいところは何もない。
何が不思議なのかも分からない。
しかし、夢の少女と照らし合わせると、どうだろうか?
木之本が話す少女の話。
似ている。
夢の中の少女と。
白いワンピース姿。
冬場だというのに、季節感のない服装。
「そして、少女が言ったんだ。」
河野は、その言葉に反応する。
もしかするなら…。
そんな期待を持ちながら。
「貴方の大切な人は、桜が咲いたらお別れ」
「それってどういう…」
「!?」
河野は思わず立ち上がる。
その反動で、椅子が倒れる。
視線が河野に集中する。
河野は、椅子を立て座りなおす。
「どうした?」
「凄く驚いてたけど…」
「いや…、何でもない」
なんでも無いはずがない。
桜が咲いたらお別れ。
その言葉に反応してしまった。
自分でも驚くぐらいに、反応を見せてしまった。
「そこで、俺は訪ねたんだ。」
「何を?」
「その、『大切な人』の事だ。」
河野はしっかりと聞く。
木之本の言葉に、全てが隠されている。
少女の謎も。
桜が咲いたら別れる理由も。
そう思うから。




