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19話 クエスト選びは神頼みです。

「ローゼ。そんなヤツにいつまで構ってやってるつもりだい?」


 はい、きました。ローゼリアがいるなら絶対一緒だろうなと思ってたら、やっぱりセシル・ソルトラークのご登場です。

 

 ローゼリアのような自称天才ではない、本物の天才。


 十三歳から【冒険者の証】を持ち、学園に在籍しながら冒険者ランク『C』にまで昇格した少女。


「えー、いいじゃーん。同じ学園出身なんだし。あ、もしかしてセシル、アタシが他の子と仲よくしてるのが面白くないワケ? カワイイとこあるー☆」

「そういう意味じゃない。彼女が学園を退学になった、相手をするに値しない落ちこぼれだから忠告してるんだ」


 ツン、とそっぽを向くセシル。ムカついた私は、彼女の前に立ち、思いっきりにらみつけます。


「ええ、そうですよね。私、誰かさんのせいで退学にさせられたんでしたっけ」


「ああ。実力不足の生徒には、早々に現実を教えてやらなきゃならないからなあ」

「あれれ、おかしいですね。実力不足でも【冒険者の証】ってもらえるんでしたっけ?」

「それはキミがローゼの手柄を奪ったからだろ? 決まり切ったことさ!」

「はあ?」

「はああああ?」


 私とセシルとのあいだにバチバチと火花が散ります。

 

 あー、ムカつく! ムカつきすぎて鼻血を吹きそうです。至近距離で見るセシルの顔は、怒っていても妙に綺麗で余計にムカつきます!


「まーまー、ふたりとも……。ギルド内でのケンカは禁止だよ?」


 ローゼリアの仲介により、私達はとりあえず離れました。

 

 あー、もう。これ以上、一秒たりともそばにいたくありません。ていうかローゼリア! 仲のいいセシルにも真実を話してないって、どういうことですか!


 もー、このふたりは相手にすればするほど損です!


「私、あなたなんかに構ってる暇ないんです。この街に貢献して、一刻もはやくランクを上げなきゃならないんですから」


「ふうん? もしかしてキミは、特例でのランクアップを狙っているのかい?」

「そうですけど……、それが?」


 セシルはくすりと嘲るように笑いました。


「それは無理だよ。この街、ティアレットに貢献したかどうか――それを決めてるのは、一体誰だと思っているのかな」

「ま、まさか」

「そう。ボクの父、バゼル・ソルトラークだ」


 頭の中が真っ白になりました。冒険者学園理事長、バゼル・ソルトラーク。


 ティアレットや冒険者ギルドにおいても絶大な権力を持っている――それは知ってましたが、まさか特例ランクアップの承認にまで絡んでいるなんて。


「ま、正確にはお父様を含む五人の評議員によって決定されてるんだけどね。お父様が反対すればキミのランクアップなんて認められるはずがない。決まり切ったことさ」


「な、なんで理事長が反対するんですか。私がランクアップするかしないかなんて、理事長にはどうでもいいことでしょう?」


「いいや、キミは学園の汚点なんだよ。退学処分になった者が冒険者になる――それくらいならまだいい。けれど特例でランクアップするなんて、許されるはずないだろう? それこそ学園の伝統に反している」


 また、学園の伝統……。そんなのがなんだって言うんです?

 弱い者を虐げる腐った学園。到底守るべきものには思えないんですけどね。


「セシルー。そんなイジワルしないで、認めてあげたらいいじゃん。セシルが口添えすれば、理事長の考えだって変わるかもしれないんでしょ?」


 ローゼリア、たまにはいいことも言えるんじゃないですか。とはいえストラップはつけませんが。


「さあね……。ま、どのみち彼女は特例ランクアップの審査対象にもならないさ。そもそもそんな功績を残せるとは思えないし、なにより使っている武器がね……」


 セシルは私の背負っているハンマーを侮蔑の眼差しで見つめてきます。ああ、やっぱり彼女は偏見たっぷりな人みたいですね。予想通りで安心しましたよ。


「いいです。要は理事長が反対しようが、鈍器を使っていようが、評議員達が私のランクアップを認めざるを得ない――そのくらいの功績を残せばいいんでしょう? てやんでーです。やってやりますよ、べらぼーさん!」


 私はふたりを無視すると決めて背を向けると、クエストの張り出された掲示板の前に立ちました。


 貼り紙には依頼主とその内容、報酬の金額、それに難度を示すB~Fまでの文字が記されています。


 冒険者は、自分のランクより上の依頼は受けることができません。つまりDランクの私が選べるのは、D~Fまで。

 

 ちなみにAが張り出されていないのは、この街にAランクの冒険者がいないからです。

 

 もし難度Aの依頼だと判断される案件が発生した場合は、別の街からそれに見合う冒険者が派遣されます。


 まあ、Aランクの冒険者なんて、大陸に数えるほどしかいないんですけどね……。

 

 理事長の【剣闘王】バゼル・ソルトラークなんかはAの中でもさらに少数にしか与えられない『特A』ランクだったらしいですが、今は引退していますし。

 

 さて、D~Fまでの貼り紙は、ざっと十枚。モンスターの討伐、薬の素材収集、人の捜索、行商人の護衛などなど。やはり難度の高いもののほうが報酬もいいです。


 Dならひとつ達成するだけで最低でも1000ペルももらえます。

 

 これは大工時代の月収に相当します。めちゃくちゃおいしいです。やはり受けるのなら、難度Dに限ります。


『……【封魔の壺】の匂いがプンプンするわ』

『せやなー。これはあかんで、あかんでー』


 ふいにそんな声が聞こえてきて、私は視線を落としました。鈍器の神様、熊さん二匹が一枚の貼り紙をじいっと見つめているのです。


「……これ?」


 指差して訊ねると、うんうんとうなずく熊さん達。とりあえず、どんな依頼か確認することにしました。

近くて遠いジャンル別5位になんとかたどり着きたいので、

明日は0時頃、9時頃、15時頃、21時頃の4回更新します!

ぜひブクマ、評価などで応援お願いします!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「な、なんで理事長が反対するんですか。私がランクアップするかしないかなんて、理事長にはどうでもいいことでしょう?」 ランクアップが公正に行われないと思われる街で頑張る必要ないでしょう…
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