52話
まず右のテレスのイスから。
正方形の箱?みたいなのが置いてある。
それぞれの面に丸がいくつかついている。
サイコロみたいだなぁ。
しかも割と大きい。
握り拳くらいある。
試しに持ってみる。
うっ。
重い。
予想よりも遥かに重かったので、驚いた。
なんだこれ?
サイコロじゃないのかな?
簡単に振れそうにない。
丸の数は面によって違うみたいだ。
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、23……
って23⁉︎
一面だけ明らかに多い!
ここは6つじゃないのか⁉︎
やっぱりサイコロじゃないみたいだ。
一応投げてみた。
でもなにも起きない。
それから色々調べたけど、特に仕掛けも無さそうだなぁ。
とりあえず保留。
今度は左のアリスのイス。
人型の置物が置いてあった。
素直に人形と言いたかったけど、なんだかこれは人型の置物って感じの雰囲気だ。
絶対に人形じゃない。
そう思わずにはいられなかった。
自分でもよく分からないけど、まぁそういうことで。
とにかくこの人型の置物を見つけた。
どうしようかな。
なんか怖いな。
顔はのっぺらぼうみたいに何もないのに、不思議と表情があるような。
それでその表情を僕はよく知っているような。
えらく無気味な置物だ。
これに触ったら最後、もう戻れなくなるような。
どこから戻れなくなるとかそういうことじゃなくて。
気持ちの問題、みたいな。
得体のしれない恐怖と震えが僕を襲い、全身を包み込んでいくような気がした。
このまま動けないのか。
でもなぜかここで諦めたらダメなような気がした。
こんなに不気味で怖いのに、どうしてか勇気が湧いてくる感じがする。
心の奥から。
手を伸ばせと。
そういう勇気が。
その気持ちのまま、僕は人型の置物を手に取っていた。
さっきまでの恐怖や震えはもう無い。
人型の置物がにこりと笑ったように感じた。
気のせいかもしれないけど。
笑った、
よう、な。
…………




