初出勤3
なんとか怒涛の初出勤も終わり、私は夕方家へと帰ってきた。
「ただいまー!」
「おかえり。」
「あ、お母さん。今日は仕事なかったの?」
お母さんは晩御飯の支度をしながら私を出迎えてくれた。
「いいえ。昼間だけ空いてたから、もうすぐしたら行くわね。10時に帰ってこれると思うから。」
「あ、そうなんだ。りょーかーい。」
「お仕事今日からだったわね。うまくいったの?」
「うん。まあぼちぼちかな?」
「あなたのお友達のいるお店だったわね?今度一度ご挨拶に伺わないといけないわね。」
「え!?そうなの!?」
お母さんがそんなことを言うなんて、ちょっと意外だった。
「当たり前でしょう。一人娘が世話になるんだもの。あなたってがさつだから迷惑をかけないか心配で。」
「あー。はい。そこは否定できないかな。」
私は苦笑いを浮かべる。
「あ、じゃあ行くわね。あと明後日は空けといてね?」
そう言ってお母さんは今日も風のように行ってしまった。
「いってらっしゃーい。」
私は出ていくお母さんの背中に見えてはいないだろうけど、手を振って声をかけた。
ガシャンとドアが閉まって、家の中に静けさが訪れる。
「迷惑をかけないか心配か・・・。」
私は一人テーブルのイスにすとんと腰掛けた。
しばらく壁を見つめてぼーっとした時間を過ごす。時計の針がコチコチと耳につく。
「それってどっちの意味なんだろう。」
座っていたイスがギシッと音を立てた。




