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私のわがままな自己主張2(プロット)  作者: とみQ
終章 エピローグ そして
57/58

工藤淳也の場合

9月2日。


「あー・・・しかしあっちーなー。」


俺は、今日何度目かのそのセリフと共に、だらしなくTシャツをバタバタさせて、天を仰ぐ。


「おい、工藤。やる気がないなら帰るか?」


君島は、そのセリフはもう聞き飽きたと言わんばかりにため息混じりにそんな提案をしてくる。

相変わらず、気の短いやつだ。

気は短いかもしれないが、俺の夏休みの宿題の心配をして、最後の日にこうして手伝ってくれる面倒見の良さはあるんだ。

その辺が絶妙に憎めない。

とはいうものの、俺は夏休みの宿題をするという行為に対してやる気が全く起きなかった。

ここはダメ元でも写さしてもらうよう頼むべきだな。

言うだけならタダなんだから。


「なあ君島先生。」


「駄目だ。」


「いや、まだ俺何も言ってねえけど!?」


「言わなくてもわかる。宿題は自分の力でやるものなのだ。写すなんて全く意味がないのだ。付き合ってやるから早く解け。」


「ぐっ!・・・わーったよ。」


心の中でも読めるのかと思うほど即答で俺の口を封じてくる。

こういう所は椎名そっくりだ。

俺は仕方なく、残った気力を振り絞り、宿題と真面目に向き合うことにした。

はー。バスケに対するモチベの半分でも出せりゃーなー。

とはいったものの、せっかく椎名に応援に来てもらった大会で、途中敗退するほどの結果しか出せないようなことが、モチベが高いと言えるかは疑問だが。


はー。格好つかねーな、ホント。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



30分ほど経って、もうそろそろ3時になるかという頃。

流石に俺の集中力も切れてきた。

我ながら頑張ったぜ!


「よし!ちょっとここらで休憩しようぜ!」


「まだ30分しか経っていないが?」


「いや、待て待て、君島先生よ!この俺が30分もマジで勉強に打ち込んだんだぜ?今までだってそんなこと一度でもあったか?」


俺は自信たっぷりに君島に言ってやった。


「いや、何故そんな自信たっぷりなのかは不明ではあるが・・・。・・・ふう。わかったのだ。じゃあ少し休憩だ。おやつでも持ってくるから待っていろ。」


そうして案外あっさりと提案を受け入れてくれる君島。何だかんだ話のわかるやつだ。

君島はリビングに行き、俺は君島の部屋に1人取り残された。

君島の部屋に来たのは実はこれが初めてだ。

殺風景で、取り立てて何もない部屋だ。

アニメのポスターとか飾ってあれば、ネタになったんだけどな。

そういう趣味はないらしい。

両親は仕事でいないため、今は家に俺たちしかいない。

ちっ!君島のヤロー。両親共働きだと彼女連れ込み放題じゃねーか!

って、それって高野になんのか・・・。

俺は妙に生々しい想像をしていると思い、流石にそんな考えは葬り去るべく首を振った。


「ん?何をしている?工藤。眠いのか?」


そこへタイミング良く、君島がお盆にチョコチップクッキーと紅茶を乗せて、戻ってきた。

どうやら眠くて首を振っていると勘違いしたらしい。


「い、いや・・・。まあ、そうかな?」


「は?」


「何でもねーよ!とにかく腹減ったからそれ早くくれよ!」


「・・・遠慮の無い奴だ。」


「何言ってんだ!こういうのは遠慮なく食わねーと、せっかく出してくれた人に申し訳ねーだろ?わざわざ用意してくれたんだ、秒殺で食ってやるぜ!」


俺はガツガツとクッキーを頬張り始める。

君島は大げさにふーっ、とため息だけついて、それ以上は何も言わなかった。


「そう言えばさ。」


俺はクッキーをかじりつつ、呟くように口を開く。


「椎名は宿題大丈夫なのかな。アイツもちゃんとやってなさそーじゃん?しかもバイトも始めたし。」


俺は何の気なしに椎名の名前を出す。まあ昨日も会ってたし、共通の知人だしな。


「ああ。それなら問題ないのだ。」


君島は即答する。

俺は少し焦った。

何で君島が椎名の宿題事情なんか知ってんだ?

しかも高野という可愛い彼女がありながら、俺の知らない所で2人は実は結構繋がってるんだろうか!?

夏休みの間も連絡取り合ってたり?

もしかして割と2人で会ってたりとか!?

考えれば考えるほど動悸が激しくなる。

俺は気がつくと叫んでいた。


「君島!」

「高野と今日一緒に勉強しているからな。」


「へ?」

「!?」


2人の声が重なって、俺は間の抜けた声をあげる。


「どうした工藤。いきなり大声を出して。」


「あっ、・・・いや、そろそろだべってる場合でもねーぞ!?・・・なんてな。・・・はは。」


「・・・。」


君島は不審な目を向けてくる。


「あ!てか椎名と高野も一緒にやればよかったんじゃね!?」


俺はそっちの話を拾うことにした。

気になるしな。


「ああ。それはそうなんだが、高野がたまには女子2人で集まりたいとか言うものでな。高野がそれで工藤を頼むと私に言ってきてな。わざわざ連絡したというわけだ。」


「あっ!そーいうことか!」


俺は今更になって、以前高野に椎名のことをお願いした件を思い出した。

高野はそれを実行に移してくれてんだな。さすが俺が一度惚れた女だぜ!


「なんだ?工藤。その妙に納得した顔は?」


君島が再び俺に不審な目を向けてくる。


「そう言えば工藤。この前誕生会の後、高野に電話したそうだな。一体何の用だったのだ?」


更にそんなことを言いだす。まあ付き合ってるならそれくらい筒抜けでもおかしくはねーか。


「あ?そんなのお前に言える訳ねーだろ。2人だけの秘密だよ。」


それを聞いて君島の顔色が変わる。


「なっ!?ど、どういうことだ!工藤!ひ、卑怯だぞっ!私の知らない所で!もう宿題は教えられん!」


「いや!?ちょっと待て!マジになんなって!その!理由は言いづらいんだけどやましいことじゃねーからよ!ただの相談だ!相談!」


俺はやり過ぎたと思い、咄嗟に言い訳をする。でも、具体的な所はちょっと言いづらい。

だって相手は椎名の想い人の君島なんだから。

椎名の悩みとかをこいつには知らせたくない。彼女だっているんだし。

でも椎名からしたら君島が相談に乗ってくれたりした方が嬉しいんだろうか。

といっても結局具体的に何を悩んでいたのか解らず仕舞いだったんだけどな。

しかし。んー、俺たち今なんかややこしくね?

てか4人で揃って会いづらくね?

今日みたいな会い方がベストじゃね?

・・・少なくとも俺にとっては。


「むっ?・・・むう。良くは解らないが、まあ工藤がそんな裏工作みたいなことをするやつではないと私は知っているので、今回は目をつむろうではないか。」


「そ、そうか・・・。サンキューな。」


俺は裏工作しないの部分に罪悪感を覚えたものの、これ以上話をややこしくしたくなかったので、お礼だけ言っておいた。

どう俺が悩んだところで、明日になれば新学期。

嫌でもお互い毎日顔を合わせるようになる。同じクラスメイトなんだし。

しかし君島も罪作りな男だよな。なんだろーな。そこまでかっこいいって訳でもねーのに。

そりゃ俺も自分で自分をかっこいいなんてこたー言うつもりはねーけどさ。

それでも高野と椎名両方から好かれてるわけじゃん?

まあ俺もさ、この前芽以さんに告白されたけどさ。

君島は両想いになれてて羨ましーよ。ホント。


「はっ!妙なことで時間を無駄にしてしまったのだ。工藤、それでは再開するぞ!」


君島は手元の時計を見ながら焦り始める。本来ここは俺が焦らなきゃいけない部分なんだが。

そういう献身的な所もこいつの魅力なのかもな。


ふー・・・。

うだうだ考えても埒があかねーよな。


「・・・そうだな!やるか!」


俺は気を取り直して宿題の攻略に戻ることにした。

だがその時、急に鼻の奥がムズムズしてきて・・・。


「は・・・はっ・・・はっくしょーん!!」


俺は盛大にくしゃみをしたのだった。

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