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私のわがままな自己主張2(プロット)  作者: とみQ
第5章 私らしさは尊いけれど
50/58

2回戦、後半スタート

工藤くんの背番号は4番。

黒のユニフォーム。

相手チームの明北高校は青のユニフォームだった。

5番の人がコートの真ん中で、相手チームの人と向かい合って、審判の人がボールを宙に投げると、真ん中の2人がジャンプしてボールをはたく。


試合が始まると体育館の中に、キュッ、キュッ、という靴の小気味良い音が響き渡る。

はたかれたボールは相手チームの4番の人が掴み、すぐに9番の人にパスを出した。

その選手はボールを地面にタムッ、タムッ、と何回か突いたかと思うと、ヒュッと飛び上がり、ボールをゴールのリング目掛けてフワッと投げた。

するとボールは大きな弧を描いて3メートルくらい離れているのにパスッ、とネットに回転しながら音を立ててゴールに吸い込まれた。

途端に観客がおおっ!と声を上げる。

得点は2点入ったようだ。


バスケットボールの試合は私たちが体育の授業などでやるときとは全然違っていて、選手みんなが役割を持って、統一された動きをしているように思われた。

そして選手たちがボールを扱うと、まるでボールが意思を持って動いているように見えて思いの外楽しいものだった。


ただ今25ー18。


また差が開いた。

黒の6番の人がコートの外からボールを味方にパスして、7番人に渡る。

7番の人がそのままボールを突きながら敵の陣地へと進んで行く。

敵の陣地で明西高校のチームはボールをゴールの近くに入れたり、また外に出したり、パスを回しているけれど、中々シュートを打たないでいた。

もしかしたら攻めあぐねているんだろうか。

そうこうしているうちに、敵のチームにボールを取られてそのままその選手はすごいスピードで、明西高校のゴールまでボールを突きながらゴールを決めてしまった。

ボールを突きながらあんなに速く走れるものなんだ。

相手チームの4番の人、敵チームのエースなんだろうか。


これで27ー18。


どんどん点が離されていく。

大丈夫なんだろうか?


「おいっ!俺に回せっ!」


その時工藤くんが叫んだ。

工藤くんは7番の人の近くまで行ってボールをもらい、ゴールの方を向いたかと思うと、そのまま1人でボールを相手チームの陣地まで持ち込んだ。

さっきの4番の人がマークに付いて来たけれど、一瞬キュッと動きを止めたかと思うと次の瞬間にその人を抜き去って、さらにすぐに工藤くんの前に立ち塞がった人も、途中でくるっと回転したかと思うと、キュッ、バンッと音を立てて飛んで、下からひょいっとボールを投げて、ゴールに入れてしまった。

わっ!と声援が上がり、2点が入ったようだ。


「おっしゃあっ!まだまだ行くぞっ!」


仲間たちを鼓舞する工藤くん。

相変わらずうるさいなとは思ったけど、まあ中々かっこいいんじゃない?とも思ってしまった。


そこからは一進一退の攻防が続いたけれど、工藤くんを中心にちょっとずつ盛り返してきた。

何度か遠くからシュートを決めて3点入る時もあったり、シュートを決めた後、相手がファールを取られて、離れたところから1人きりでシュートを打てるようになったり。

もちろん得点は決められていたけれど、こっちの方が多く点がもらえることが多くて、少しずつだけど、点差は縮まっていた。


現在残り時間1分で41ー37。

健闘しているとは思うけれど、逆転出来るだろうか。

私は何だかんだ言って、手に汗握りながら観戦していた。

中々見応えもあるしね。


「ここ止めんぞ!」


工藤くんが叫ぶ。

攻められているのは明西高校だ。


工藤くんは前に出て、ボールを持っている人にプレッシャーをかける。

相手チームの人は、ボールを突いていたのをやめて、その場に立ち止まった。

慌てて周りの選手がボールをもらいに行くけれど、工藤くんが体を張ってそれを阻止しようとする。

不意に工藤くんの手がボールに当たり、ボールがこぼれる。

工藤くんを始め、相手チームの選手も2人ボールを追いかけるけれど、工藤くんがもう一度ボールをパシッとはたくと、その先に明西高校の7番の人がいて、ボールを突きながらゴールにそのまま向かう。

ゴール前には体の大きな5番の人が立ち塞がって、7番の人はシュートに行けずにいた。

その間に両チームの選手はみんな戻ってきて、体勢をお互い立て直したみたいだった。

だけど、ここで得点を決めたら逆転にぐんと近づく。


「こっちだっ!」


工藤くんが再びボールを受けようとする。

相手チームの人もマークしていたけれど、明西高校の8番の人が体を張って、相手チームの動きを妨害して、工藤くんがフリーになった。


ボールを受けた工藤くんは、かなり遠くだったけれど、そのままシュートしようとした。

それに対して相手チームの人が慌ててジャンプしたけれど、工藤くんは一度動きを止めて、タイミングをずらしてジャンプシュートした。

そのボールは今日一番の大きな弧を描き、ゴールに一度ガコッと当たったけれど、そのまま吸い込まれていった。


「おっしゃあっ!!!」


歓声に包まれて、工藤くんはガッツポーズを取った。

得点は3点入って、41ー40。

1点差。

ゴールにボールを入れると2点か3点が距離によって獲得できるみたいだけれど、これでおそらくどこからシュートを決めても逆転できるのだと思う。


「当たれっ!」


工藤くんが叫んで、同チームの人たちの動きが激しくなる。

時間は後、30秒。


明西高校の選手たちは明北高校のゴール付近でボールを回させまいと必死に食らいつく。


皆、2試合目で疲弊しているのが遠くからでも見てとれた。


工藤くんも必死の形相だ。汗もここから見ても滴っているのがわかる。


それでも、相手チームの動きはまだ1試合目で余裕があるのか、こちら側の隙を突いてパスをうまく回してあっという間にゴール前までボールを運んでしまった。


前に出気味だった明西高校の選手は工藤くんを始め、2人程戻るのが遅れて、4対3の構図が出来上がる。


そのまま4番の人が中に切れ込んでいって、一瞬ゴール前が人で密集したようになった。


その瞬間、狙いすましたようにコートの端に来た選手にパスをして、そこからフリーになった人がそのままシュート。


あっさりとそれが決まって44ー40。


3点のシュートだ。


結局そのまま、時間切れで明西高校は負けてしまった。




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