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私のわがままな自己主張2(プロット)  作者: とみQ
第4章 女の戦い
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答え合わせ

その紙は何の変哲もないメモ用紙だった。

ただ、そこには2つの数字とアルファベットの羅列が書いてあって。


『FT151904T ZX150927Q 』


「・・・これって・・・?」


私は目を見張った。横並びにされた一万円札とメモ用紙。

見比べてみると、私の持っていた一万円札の数字とアルファベットの羅列が、片方のものと全く一致していたのだ。


「そうだねえ。これはめぐみちゃんが昨日財布に入っていた二万円とおそらく一致している。一枚は使ってしまったから確認しようがないけどねえ。」


「一体どういうことですか?」


私は混乱してしまった。昨日財布に二万円が入ってて、そのお金の番号を陽子さんが知っていて。

一体誰が何のためにこんなことを?


「めぐみちゃん。悪いけど、この件はまだ詳しいことは話せないねえ。他のスタッフにも軽々しく話さないでおいてくれるかい?それができないなら今日はもう働かなくていいから帰っとくれ。」


私はまだ完全には話の筋は見えてはいないけれど、陽子さんの意図することは何となくわかった。要するに、私は今疑われているのだ。この二万円を誰かから盗んだのではないかと。


「わかりました。この件は誰にも話しませんので、今日も働かせてください。お願いします。」


私はペコリと座った姿勢のまま頭を下げた。疑われているとはいえ、犯人にされたわけではない。

それに私自身、誰かから二万円を盗んだ覚えもない。

何もやましいことはないのだから、いっそのこと普通にしていた方がいいだろう。


「・・・そうかい。わかったよ。じゃあ今日もよろしく頼むね。あと、悪いんだけど、一度二万円は私の方で預かっても構わないかい?身に覚えのないお金なんだろう?」


「はい。じゃあその一万円はそのまま陽子さんにお渡しします。あと一万円は次の出勤日でもいいですか?」


「ああ。それでいい。めぐみちゃんは自分のお金でないことは認めるんだね?」


陽子さんは私の目を覗き込むように見ている。


「はい。それで構わないです。」


私はそんな陽子さんにきっぱりと答えた。

そもそもそう思っていたのだから、嘘偽りない想いだ。


「・・・わかった。それじゃあ今日もよろしく頼むね!」


それだけ言うと、陽子さんは部屋を出て、ホールへと戻っていってしまった。

とりあえずいつもと同じように私を働かせてくれるらしい。

おそらく陽子さんの中ではまだ答えが決まっていないんだろう。

お互いの言い分を聞いて、少し様子を見るつもりなのかもしれない。


私は最初こそ焦りはしたものの、何となく今回の話の一連の流れが見えてきた。

見えてはいるものの、私自身も、この後どうすべきなのか少し迷っていた。

特にこちらからどうしようというつもりはないけれど、向こうから何か仕掛けてくるとなると、私も対処しなければと思うし。

あとは向こうが実際どういう気持ちでこういうことをしたのかも気になるところだ。


けれど、結局のところ原因は私にあるのだから、出来るだけ穏便に済ませたかった。

そう。今回のことはおそらく私の行動が招いた結果。

私としては相手のいいようにしてもらった方がいい気もしている。

ただ、そうすることが果たして相手のためになるのだろうか。

それを考えると私は迷ってしまう。


はあっ、と短いため息が無意識のうちに口から漏れる。

とにかく今は焦らず普段通りにしていることに決めた。

うだうだ考えるよりは一旦流れに身を任せた方が今はいい気がしたから。


そうしてようやく私は取り調べのような時間から解放されて、口の開いた鞄を掴んで、着替えをロッカーに取りに向かった。

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