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私のわがままな自己主張2(プロット)  作者: とみQ
第3章 動き出した心模様
24/58

帰宅

私はむせかえるような暑さの夜道を、自転車を押しながら、とぼとぼと1人歩いていた。


自転車のかごにはさっき買った猫の時計が入っている。


箱には入っていたけれど、さすがにかごの中に入れて走って中が割れたりしたらいけないもんね。


今日は牛藤でお母さんの本音を聞けて、すごく良かったけれど、その後工藤くんと芽以さんと、美奈の誕生日プレゼントを選びに行って、最後芽以さんとは微妙な別れ方をしてしまった。


次会った時に変な空気にならなきゃいーんだけど。


せっかくバイト先の人たちは皆いい人で、仕事も少しずつ覚えてきて、そんな矢先にこれだもの。


私としては失恋したての友達の工藤くんに、想いを寄せている人がいることがわかって、応援したい気持ちがあるのに、私がライバルみたいな感じになるとか、濡れ衣もいいところだ。


それに、何だか2人はお似合いのようにも思えたし。


見た目がギャルの芽以さんと、ちょっとラフでチャラい印象のある工藤くん。

でもチャラそうなのは2人とも見た目だけで、中身は割りと真面目で恋愛もきちんとしたいんだと思う。


そんな2人が引っ付くのはとても素敵なことなのではないか。


うん。是非ともお付き合いしてほしい。

だからこそ、次芽以さんに会ったときは私ははっきりと応援宣言しよう。


そう。


美奈の時も、そんなことを言って、君島くんに対する想いを募らせて、話をややこしくしてしまったんだ。


これはリベンジよ。

今度こそは友達のためにしっかり恋を応援できる私でいるっていうことの。


よし!決めた!

もう絶対に私はブレないんだから!


確かに今日の工藤くんの行動にはすごく感謝してる。

だから私にとって彼は大切な友達で、親友と呼んでももはや差し支えなくて。


大体ついこの間まで君島くんとごたごたあったばかりで、こんな短い期間で今度は工藤くんと何かあるとか考えられないし。


というかそんなことになったら自分の尻軽さに嫌気が差すわ。


そう!


そうなのよ!


一旦そういうことは忘れてフラットに生活していくべきだわ!


ダメ。ダメ。こんなの絶対に良くないに決まってるから!


よし。


わかった。


だからこそ私はきちんと芽以さんを応援しよう。


絶対にそれがいいはず!


私が改めて決意を固めていると、ちょうど目の前に自分の住むアパートが見えてきた。

到着だ。


自転車を停めて、アパートの階段を上がって、扉を開けると今日はお母さんの方が先に家に帰ってきていた。


「あ、お母さんただいま。」


私は靴を脱ぎながら洗濯物を部屋干しするお母さんに声をかけた。


すると、いつもは手を動かしながら話すお母さんが、わざわざ洗濯物を干す手を止めて、私の方に歩み寄ってきた。


「で!?どうだったの?」


「え?え?・・・何が?」


こんな前のめりなお母さんは初めてだ。

というか親子のくせに急に本性を現した、という方がしっくり来るかもしれない。


「もう!工藤くんよ。デートだったんでしょ?」


「いや、違うから!ただ友達の誕生日プレゼント買いに行ってただけだから!しかも他にも女の子いたし!」


私はあくまでありのままを伝えた。

成り行きとはいえ決して2人きりで行ったわけじゃないし。


「え?そうなの?あなた、ちょっと頑張りなさい。」


「だから!そういうんじゃないからっ!」


なぜかお母さんはすっかりその気になってしまっていた。嘘でしょ。さっき決意したばかりなのに。


ばかりなのに?


だからこそ、そんなことで揺らいでいる場合じゃない。


「ふーん。あなたも私の子ならそれなりにモテると思うわよ?お尻とか太ももとかいい感じよ?」


「あの・・・そういうこと我が子に言うことじゃない気がするんですが・・・。」


なんか敬語になってしまった。


「まあ、結局の所はあなたに任せるけど、なんならここも使っていいんだからね!その時は連絡だけはしといてね。」


そう言ってお母さんは、再び洗濯物を干し始めた。


・・・いや。ここを使うって何によ・・・。


そんなツッコミを心の中で入れつつ、ちょっと前に私は、未遂で終わったとはいえ、君島くんとナニにこの部屋を使おうとしたことを思い出して、あの時の行動が改めてどうかしてたなあと思うのだった。


「ねえ、お母さん。」


「ん?」


お母さんは洗濯物を干しながら返事をする。


「お父さんてどんな人だったの?」


隣の部屋の押し入れの中に、私が赤ちゃんの頃の3人で撮った写真が飾ってあるから、顔は見たことはあるけど、人となりまではわからない。

そんな話、したこともなかったし。


「正義感が強くて、熱血感溢れる人だったかな。」


「ふーん。」


「でもね。勢いで突っ走っちゃうところもあったから危なっかしくてね。」


お母さんはテキパキと服をハンガーにかけて干していく。


「放って置けなかったの?」


「・・・まあそんなとこかな?」


「ふーん。」


「お腹の中にあなたがいることもわかってね。」


「え!?できちゃった結婚!?」


確かにお母さんは現在38歳と高校2年生の娘がいるにしては若い。

結婚も早いとは思ったんだ。


「ええ。当時は回りにも色々言われたけど、あの人に絶対幸せにするから結婚しようって言われてね。親の反対を押しきって結婚したの。というか、半分駆け落ちみたいなものね。」


まあお母さんと一緒に、お父さんのお墓参りに行くことはあっても田舎に帰るとかいうことは今まで一切ない。

お互いの両親と連絡を取り合うことすらしていないのかもしれない。


「え・・・でもお父さんそんなこと言った割にすぐ死んじゃってるし。」


私が物心ついた頃にはもうお父さんはいなかったから、結婚して2、3年で亡くなったことになる。


「そうね。でもちゃんと幸せよ。だってあなたがいるもの。」


私は急にそんなことを言われて言葉に詰まった。

ホントに今日はどうしちゃったんだろう。


「・・・お母さん。いきなりそんな事真顔で言わないでよ。恥ずかしいんだけど。」


お母さんがそんな事言ってくれる人だとは思わなかった。

いや、嬉しいんだけどね。


「・・・そうね。私もそんな事今まであなたに言ったことなんてなかったのに。工藤くんのおかげかしらね。あの子のまっすぐな瞳に懐かしさを覚えてしまったのかしら。私も忙しさにかまけてあなたのことを随分とほったらかしにしていた気がするわ。本当にごめんなさいね。」


「う、うん。別にいいんだけどさ。」


ますますむず痒い。


やめてほしい。


「ただ。あなたもいい加減家事とかも手伝いなさい。自分の下着くらい自分で干せるでしょう?」


そう言ってポイッと私の下着を投げてきた。


今度は急に手のひらを返された。唐突だなあ。


「・・・!いきなりそう来る!?勉強一番なんでしょ!?」


そんな私の反論を聞いてか聞かないでかお母さんは更に続ける。


「今思ったんだけど、あと3年もしないうちに私が結婚した年にあなたなるのよね?家事が一切できないとかそっちの方が問題だわ?」


まあ、確かにそうかもしれないけど。私はここは素直に従うことにした。


「わかったわよ!やればいーんでしょ!」


「あとバイト先で包丁の扱いも習い始めるだろうから、ゆくゆくはご飯の支度もしてもらわないとね。」


さらに追い撃ちをかけてくるお母さん。こういう時は容赦がないんだから。


「うぐっ・・・!」


「めぐみはお母さんを楽させてくれるのよね?」


こういう時の冷静な言葉攻めは変わらないな。

いーんだけどさ。


「う、うん。・・・少しずつね。」


私は顔をひきつらせながら答えた。


お母さんは終始楽しそうだった。


こんなに饒舌に親子で会話するのはいつぶりだろうか。


私は自分のブラを干しながら、しみじみと感慨に耽っていた。

そしてそのきっかけを与えてくれた工藤くんに改めて感謝の気持ちでいっぱいになる。


・・・ダメだダメだ!


とにかく私は友達として工藤くんの幸せのためのお手伝いをしてあげるんだから!


私は無意識に自分の下着をバンバンと引っ張っていて、母親に不審な目で見られていることさえ気がつかないのだった。


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