誕生日プレゼント2
「雑貨屋さんっていっても、・・・色々あるわね。」
「そだなー・・・。」
そうなのだ。
一重に雑貨屋といっても、小物とか置き物だけでなく、本や駄菓子やアクセサリーなど様々だ。
まあ駄菓子とか本とかはさすがにプレゼントからは外すとしても、この中から選ぶだけでも時間を費やしそう。
「じゃあさ、15分後にここに候補を選んで集合でどう?」
私は皆で行動だと埒が開かなそうだったのでそんな提案をしてみた。
「おし!じゃあそうすっか!」
「りょーかい!」
そして皆思い思いの場所に散っていった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「ふむ。」
私が置き物のコーナーを見ていると通路の奥で芽以さんがぬいぐるみのコーナーで目をきらきらさせながら見ている姿があった。
「ねえ。工藤くん。」
私は何故か変な被り物が置いてあるコーナーにいた工藤くんに声をかけた。
「おっ!?どした?個々に選ぶんじゃねーのか?」
「うん。そーなんだけどさ。せっかく芽以さんにも選ぶの手伝って貰ってるんだし、お礼に何か買ってあげたら?」
「はっ!?何で?別にこっちから頼んだ訳じゃねーし。そんな気遣わなくてもいーだろ?」
「うーん。まあ・・・そうなんだけどさ。」
私もこの時ばかりはちょっと無理矢理過ぎるかと思い、素直に引き下がった。
私ってば余計なお世話だよね。何やってんだろ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
15分経って。
「じゃあみんないっせーので見せあいっこしましょ!」
「おう!」
「オッケー!」
私たちはお互いの顔を見合わせて後ろ手に選んだ品を隠している。
「いっせーのーでっ!」
それを合図に、後ろ手に持っていたプレゼントの候補を一斉に見せあった。
見せあったのだけど・・・。
「・・・工藤くん。」
「ん?」
「何ソレ。」
「・・・ゴリラの被り物だけど。」
「・・・却下。」
「え!?まじ!?」
「そりゃそーでしょ!なんで高校生の女の子の誕生日プレゼントがゴリラの被り物になるわけ!?意味わかんない!」
「え?あーし的にはアリだったけどな。」
いきなりアリ発言をする芽以さん。
・・・芽以さん!?
「芽以さん話がわかんなー!」
「淳也くんも中々いーセンスしてっから!」
「いや、そーかな・・・。」
あなたたちけっこうお似合いじゃない・・・。
「で?芽以さんは?」
私は工藤くんのソレは一旦スルーして、芽以さんの方にも聞いてみる。無駄かもしれないけど。
「あーし?あーしはゴリラのぬいぐるみ!」
なんでゴリラかぶりしたんだろ・・・。
「おーっ!それもナイスチョイス!」
「そーっしょ!寝るとき抱くと安心できそうっしょ!?」
なんだか変にテンションが上がる2人。
いや、そもそも。
「・・・あの。私の友達ゴリラ好きじゃないんで。」
「え!?そーなの?早く言ってよ!じゃあヘビにしといたのに!」
「え!?高野ってゴリラ嫌いなのか!?強いのに!?」
・・・あんた振られてよかったわ。
「いや・・・多分ヘビも好きじゃないかな。」
「え!?首に巻いたりできるけど!?」
「いや・・・だとしてもダメかな。むしろダメかな。」
私は頭が痛くなってしまった。
この2人めっちゃ気あってんじゃん。
てかもう2人でゴリラグッズ買って帰んなよ。
「で?椎名、オメーのは?」
何だか真面目に選んだ私がバカみたいだけど。
「あー・・・。猫のデジタル時計にしてみたんだけど。」
以前何度か美奈の家に行った時に、部屋に時計がなかったので少し不便だったのを思い出して、選んでみたんだけど。
この分だと賛同を得られそうにないなー。
「おー!?そうか!そういう感じか!」
「超かわいいじゃん!この猫のふざけた顔といい、この黄色と茶色の色合いといい!めぐみ!ナイスチョイス!」
思った以上に賛同が得られた。
芽以さんに至っては親指を立ててウインクまでしてきた。
「あ、そう?じゃあこれにする?」
値段も3000円と手頃だ。あとは当日ケーキでも買って行けば十分だろう。
「おー。それにしようぜ!」
という事で、一時はどーなるかと思っていたプレゼント選びも無事終了した。
「そー言えば芽以さんて誕生日いつなんですか?」
私はなんとなく聞いてみた。
「ん?あーし?あーしは9月17日。」
意外に近かった。
「え!?もうすぐじゃないですか!」
「うん。まあね。」
「じゃあそこもお祝いしましょうね!20歳は節目ですし!」
「そ?じゃあちょっと期待してんね!」
芽以さんはチラチラと工藤くんの方を見ながら喋っている。
芽以さんって思っていたよりもずっとかわいい人だなあ。
「んで?椎名はいつなんだよ?」
相変わらず空気の読めないやつだ。
「私は別にいーでしょ。いつだって。」
私は適当にはぐらかすことにした。
「何だよそれ。」
「そーだよ!めぐみ!あーしも知りたい!」
・・・。芽以さんにそう言われては答えない訳にはいかない。
「・・・。10月29日です。」
「なんだ、椎名もけっこう近いじゃねーか!しかも肉の日とはね!」
何で私の時だけ食いついてくるかなー。
「もう!うるさい!バカ工藤!」
「何だよ!今日はバカバカ言い過ぎだろ!」
「別に声に出して言ってないわよ!」
「心の声がだだもれなんだよ!バカ工藤って顔何回もしてただろ!」
「え・・・。・・・気持ち悪い。」
「き・・・気持ち悪いはやめて。傷つくから。マジで。」
「はー・・・。」
そんな私たちのやり取りを遮って芽以さんが盛大にため息を漏らした。
「いーなあ・・・。2人超仲良しって感じじゃん。マジ羨ましーんだけど。」
気付けば芽以さんがちょっと、いや、だいぶ落ち込み気味だった。
なんか・・・しまった。
「芽以さん。私たち、ただの腐れ縁みたいなものなので、そういうこと言われても困ります。」
「そうそう!それな!仲悪くはねーけど、そんな羨ましがられる程のもんでもねーから!」
何か自分で言うのはいいけれど、相手にそういう言われ方をすると煮え切らない気持ちになるのはなぜだろう。不思議だ。
ちょっと工藤くん殴ろうかな。
芽以さんはそんな私たちの顔を交互に見て、その後ニカッと笑った。
「別に気にしてないって!それより早く買おうよ!それ!」
「あ、そーですね。じゃあ私買ってきますから2人は外で待っててください。」
私は2人とその場から離れ、レジに向かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「お待たせしました!」
買い物を済ませ店の外に出ると、そこにいたのは工藤くんだけだった。
「あれ?芽以さんは?」
「あー。急用を思い出したからって先に帰ったぜ。」
どうやら何だか。・・・うーむ。
「あ、そう。」
「じゃあ俺らも帰るか。」
「そうね。」
「どうした?なんか急にテンション低くね?」
「・・・べっつにー。」
工藤くんはどうしてこんなにも、鈍ちんさんなんだろう。
私は芽以さんのことが気にはなったけれど、心のどこかで安堵したような気持ちも無いとは言えないのだった。
私は工藤くんの半歩後ろを歩きながら、雑念を振り払うように首をブンブンと振り回して歩く。
きっと回りから見たらおかしなやつなんだろうな。




