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私のわがままな自己主張2(プロット)  作者: とみQ
第2章 母の想い、子の想い
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夜に電話が鳴って5

私は仕方なく工藤くんに電話をしてあげた。


コール音が5回くらい鳴った末に、彼は電話に出た。


『おい!椎名!聞いたか!?』


真っ先に来た言葉はそんな風で。


「聞いたって何を?」


私は敢えて訊ねてみると、


『いや、今度の高野の誕生会だよ。』


「うん。聞いたけど、それがどうかした?」


『・・・!どうかしたってお前!?どうすんだよ!?』


やっぱりそんな空気感だよね。


「どうしたもこうしたも、行くに決まってるじゃない。親友の誕生日にバイトもないし。工藤くんは部活は?」


『いや、まー。午前中で終わるんだけどよ。なんつーか。』


「なんつーか?」


歯切れの悪い言葉選びで。


まあ大体想像はつくけど。


「あなたねー。もうフラレたならフラレたでスパッと切り替えなさいよ。女々しいわねー。」


『なっ!?・・・そんな簡単に行くかよ。』


工藤くんは先月の花火大会の日に、美奈に告白をして振られたのだ。

そこから1ヶ月が経ち、その間に共通の友人の君島くんと付き合い始めた美奈には一度和解というか、まあよくある振った振られたで気まずい関係になったものを解消することは出来ている。

けれど、とは言え、まだ気持ちの整理というものはついていないんだろう。

そんな中、久しぶりに4人で誕生会をして、想い人と顔を合わせるのに気後れする、なんてことは想像に難くない。


「はあ・・・。女々しいわね。」


私はもう一度、大袈裟にため息をついた。


『ぐっ!?だから2回言うなっての!け、結構繊細なんだからよ!』


「いや、胸張って言わないでよね。・・・はあー。で?私にわざわざ電話なんかしてどうしたいわけ?」


そうなのだ。私にそれを言うってことは何かしら相談事なり頼み事なりあるのだろうか。


『あー・・・。まあお前も行くっつーなら、俺もまあ参加するけどよ。』


「あ、そ。じゃあそれでいいじゃない。」


ちょうどその頃、玄関の扉が開いて、お母さんが帰って来た。


お母さんと目が合った。


「じゃあこの話はこれで終わりね。じゃあさよなら。」


『え!?あっ!?ちょっと待てよ!」』


「え!?何よ!?」


お母さんが帰って来たので電話を切ろうとする私に食い下がってくる工藤くん。


察しのいいお母さんのいる前で、夜に男の子と電話してるのを聞かれたくなかったので、私としてはもう電話を切りたかった。


何だかお母さんも今日に限ってお風呂に入ろうとはせず、洗濯機を回して冷蔵庫から出した桃を食べ始めたりしている様子で。


『あのさ、女の子の誕生日って何やりゃいんだよ?』


そんな私の心情などお構い無しに彼は質問を投げ掛けてくる。


「え?そんなの私に聞く?」


プレゼントは贈るものも大事かもしれないけど、やっぱり贈る側の気持ちも大事だと思うから。


人から答えをもらって贈るプレゼントに意味なんてあるんだろうか。


しかも友人の。好きな人の。


『いや、お前一応女の子だろーがよ。』


「いや、そーいう意味じゃなくて。」


そんな私の意図とはちぐはぐな答えを返されて。


一応というフレーズもすごーく気になったけど、今はそんなことはどうでもよかった。


今の私はそんな問答をするよりも、早く電話を切ってしまいたいのだ。


少しでもお母さんに会話が聞こえないように、私は立ち上がって部屋の隅へと移動した。


外に出ればいい話かもしれないけど、あからさますぎる気もして、結局お母さんに背中を向ける形で家の中に居座った。


『だから金曜日給料日だろ?俺もお盆にちょっと手伝いしたからよ。臨時収入あるし、買いに行かね?』


「え?工藤くんと2人きりで!?」


私は思わず大き目の声を上げてしまった。


慌てて口をつぐんで、チラッとお母さんの方を見るとバチッと目が合った。


完全に家の中で話しているのが裏目に出てしまい。


『んだよ。』


「・・・あーもう。わかったわかった!付き合ってあげるわよ。じゃあ私、その日バイトだから、お店来てくれる?」


私は妙に焦ってしまって、早口で捲し立てる。


『おーっ!そっか!じゃあ俺も部活あっから夕方には行くわ!』


「はいはい、りょーかい。じゃ、またね。」


『おー!じゃーなっ!』


そうしてようやく私は電話を切ることができた。


「はー・・・。世話の焼ける。」


思わずため息が漏れる。


「ふーん。」


電話を切った途端、後ろで桃を食べていたお母さんが口を挟んでくる。


「・・・。」


ちょっとスルー。


「甘ーい。」


「・・・えっと・・・桃が?」


「そうよ?」


何だかいつになくニヤニヤしながらさっとお皿を洗い、服を回している洗濯機に突っ込んでお風呂に入っていく。


くーっ!何でこんなことになんなきゃならないのよっ!


今考えると、別にそこまで焦るようなことでもなかったように思うけれど、そんなことは最早後の祭りだ。


あのバカ工藤!


私はその場で2回程地団駄を踏んだけれど、下の部屋の人に迷惑になると思ってそこで思い止まった。


「・・・バカ工藤!」


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