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私のわがままな自己主張2(プロット)  作者: とみQ
第2章 母の想い、子の想い
13/58

茜ちゃんとデート!?

8月19日。


茜ちゃんとの約束通り10時に映画館の前に着いた。


昨日のテンションから察するに、とっくに着いているだろうとは思っていたけれど、当の本人はまだ到着していないみたいで。


念のため着いたってLINEを入れて、5分程待っていたけれど、それでもまだ茜ちゃんは現れなかった。


そして既読もつかない。


映画の上映時間は10時40分なので、まだ余裕はあるけど、万が一寝坊だといけないと思って私は茜ちゃんの携帯に電話をしてみた。

興奮して眠れなかったとかいう落ちもあるかもしれない。


すると、携帯の着信音が近くで聞こえて・・・。


ただの偶然かとは思ったけど念のためその音のするほうを見ると、柱の陰に隠れてこちらを伺っている茜ちゃんの姿があった。


「え?何してるの?」


ばっちり目が合った私は近づいていって声をかける。


「お姉さま。おはようございます。」


茜ちゃんは腰を折って丁寧に挨拶してくる。私服の茜ちゃんは黒を基調にして所々赤が入ったノースリーブのスカートがふわふわしているワンピースにこれまた黒を基調にしたケープを羽織って、靴は赤いヒール。髪は垂らしており、花の髪飾りをつけて、幼さの引き立つような格好だった。


というか、ゴスロリだ。


「え?何してるの?」


「きゃっ!お姉さま。2回聞きましたね!というか、そんなの決まってるじゃないですか。ちょっと遠目から茜のことを待っているお姉さまの立ち姿を眺めてきゅんきゅんしていたのです!」


「いや・・・そこは待ち合わせにちゃんと来ようよ。」


この子の変わり様には戸惑いつつも微笑ましく思っていたけれど、まさかここまでとは。

前言撤回だ・・・。


「はっ!お姉さま!気を悪くしてしまいましたか!?こんな茜のこと!踏みますか!?」


「いや。踏まない。」


「え!?そこは踏んでいただいても!」


「えーっと・・・。行こうか。」


私は頭が痛くなる思いをこらえつつ、映画館に向かうことにした。

スタスタと歩いていく私に、茜ちゃんは悪びれる様子もなく嬉々として付いてくる。


「きゃっ!遅刻した茜を叱ることなく先へ行こうとするさりげない優しさ。さすがお姉さま。素敵です!付いていきます!どこまでも!」


「いや・・・付いてくるのは映画館までにしてね。」


私は頭を抱えそうになったけれど、そこはお姉さんである自覚を持ちつつ何とか堪えて歩く速度を遅めるだけにとどめた。


するとそれをまた彼女は私のさりげない優しさだと解釈したようで、ぴったり引っ付いて腕を絡めてきた。


・・・疲れる。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


映画を見終わって。


「お姉さま。良かったですぅ~。茜は3回泣きました。」


「うん。面白かったね!ただちょっと私的には苦手な感じだったかもなー。」


映画を観て、その世界に惹きこまれることで、私は自身のテンションを取り戻すことに成功していた。


「そうなのですか?」


茜ちゃんは意外そうに聞き返してくる。


有名監督の新作アニメ映画ということ以外、予備知識を入れてなかった私は、映画が家族の愛情とそれに伴う成長の物語みたいな感じだったので、片親に育てられた身として共感できる部分が少なかったのだ。


子供が親に構ってもらえず泣きながらいたずらをしたり、言うことを聞かなかったり、とかいうのもどっちかというとなんでそんなことするかなーみたいな気持ちになってしまったし。


絵とかは丁寧に描かれていて、綺麗だなーとは思ったけど。


「あ、でも誘ってくれてありがとうね!また行きたい!」


「そんなことを言ってもらえて茜は幸せです!お姉さま!愛してます!」


そう言って腰に抱きついてくる。ついでにちゃっかりお尻と露出している太ももをさすってくる。


コラコラ。ロリおやじ。


「はいはい。わかったから。じゃあせっかくだからちょっとお茶して帰る?」


私は茜ちゃんのえろい手つきを払い除けながら、小腹を満たす提案をする。


「はい!」


茜ちゃんは当然のことながら2つ返事でオッケーしてくれた。


そうして私たちはモール内のカフェへと向かうのだった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「お姉さま。」


そしてとあるカフェにて。


「はい。あーん・・・。」


茜ちゃんは頼んだケーキを一口私に差し出してくる。ほんのり頬に赤みが差して、潤んだ瞳が愛くるしいけど・・・。


「ん?」


私は敢えて気づかない振りをする。


「お姉さま。あーんです!茜の愛を食べてください!」


「いや!言い方がまどろっこしいから!」


そう言いつつも、食欲に負けてパクっと食べた。

ショートケーキなんだけど、上品な甘さが口の中いっぱいに広がって幸せな気持ちになった。


「おいしー。」


茜ちゃんはキラキラした目でフォークを紙に包んでしまい、店員さんに新しいフォークを貰いにいこうとしたので慌ててフォークを奪い、ケーキをすくって食べさせた。


「あんっ!お姉さまとチューしてしまいました!茜の初めてが!お姉さまとだなんて!」


この子・・・。本当に工藤くんの妹かしら・・・。


「ところでお姉さま。」


そんな私の気持ちを察してかそうでないのか、茜ちゃんは笑顔を崩さずに聞いてきた。


「お姉さまは想いを寄せる殿方はいらっしゃるのですか?」


ショートケーキをまた一口頬張る。おっと?


「なんかいきなりねー。」


「はい。でも茜的には最初から気になっていたことなので。」


またまた満面の笑顔。

この子、中々策士ね。

まあ色々気持ち悪かったのは本気かもしれないけど。

というか兄妹揃って気持ち悪いと思ってしまった!?


「それは工藤くんをたぶらかしてると思ってたからかな?」


私は余計なことは考えていないかのように、質問に質問で返す。


「あっ!でもそれはもう茜の中では間違った情報となってますので!ご心配なく!」


まあ別に心配はしてないけどさ。


「うん。いるよ。」


「え!?いるのですか!?」


茜ちゃんは目を見開いた。そんなに意外?


「まあ正確にはこの前までいた。かな?」


「・・・?もう忘れてしまったのですか?」


「そうねー。その人はね、私の親友の共通の知り合いで、今2人は付き合ってるからね。」


「え!?お姉さまが負けたのですか!?」


そういう言い方をされるとなんかグサッとくるものがあるんですけど。

まあ茜ちゃん的には私が負ける相手がこの世に存在するのか的なニュアンスだから喜ぶところなんだけどね。


「負けたというか・・・、まあ、そうかな。結局私、その親友には敵わないって思っちゃったし。想いの深さが全然違ったもん。」


「想いの深さですか?」


そう。私はあっさりと身を引いた。元々は2人を応援するつもりだったし、そもそも今思えば何で好きになったのかさえよく分からない。

うーん。ぶっちゃけると、好きっていう気持ち自体がよくわかっていないのかもしれない。


「うん。あの子はね、ずっと前から一途にその人のことを追いかけ続けていたの。ただただずーっとその人のことをね。最近知り合ったばかりの私が入る余地なんて、最初からなかったんだよ。」


「・・・お姉さまはそれでいいのですか?」


「え?」


「茜は想いに長いとか短いとか、深いとか浅いとか、そんなの関係ないと思うんです。どっちの想いが強いとか。そんなの誰も判断できないではないですか。大事なのはどうしたいか、自分がどうなりたいかではないかと思うのです。それならば確実に自分で判断できます!」


私は2個年下の、この子の言うことにハッとさせられてしまった。


それと同時に、本当にこの子はただただ自分の感情にまっすぐな子なんだなーって感じて。


工藤家の人達はみんなそうなんだね。

兄妹揃って色んな所が似てるや。


・・・ちょっと羨ましいかな。


私はレモンティーをストローで飲み干しながら、


「・・・茜ちゃん。」


「はい。」


「ありがとう。私のことを想ってくれて。」


私の精一杯の笑顔で応えた。

茜ちゃんはそんな私の表情を見て、一度驚いたように目を見開いて、そのあと真面目な顔でこくんとだけ頷いてくれた。

そんな彼女の手を優しく握ると、俯いた顔が上がって目が合う。


・・・。


・・・私は。


「私は大丈夫。」


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