夜に電話が鳴って2
美奈からの電話を切ると、その間に電話が鳴っていたことに気がついた。
今日は多いな。
着信を確認すると、茜ちゃんからだった。
この前一緒に出勤して和解?した時に携帯の番号を交換してたんだった。
あら。珍しい。なんだろ。
私はすぐにかけ直した。
『もしもし!お姉さまですか?』
1コールで茜ちゃんは電話に出た。早い。
「ヤッホー!茜ちゃんから電話なんて初めてだね!」
『きゃう!嬉しいです!ああ・・・いい声です。お姉さま。』
しかし茜ちゃんの変貌ぶりには驚いちゃうな。最初はあんなに嫌われてたのに。
「はいはい。で?どした?」
『はい!お姉さま。明日お暇ですか?』
「ん?まあ、明日はバイトもないから特に予定はないけど。」
『やっぱり!茜はお姉さまの出勤は全て把握しておりますので、大丈夫だと思ってました!お姉さま!好き!』
いや。茜ちゃん。全て把握って。
「あ、うん。で?どこか行きたいの?」
『はい。実は・・・茜は観たい映画があるのです!』
「あ、そうなんだ。どんなの?」
『あの・・・それが・・・お恥ずかしながら、アニメの映画で観たいものがありまして・・・。同級生だとなんだか誘いづらいので、一緒に行ってもらえないかと・・・。ダメですか?』
あー。同い年だから格好つけたいみたいな感じかな?
「今やってるのだとあの有名な監督さんの新作のやつかな?」
『あ、はい!そうです!それです!』
「それなら私も観たかったんだ!というかそれなら大人も普通に観てるから恥ずかしくないと思うけど。」
『あ、はい!でも、茜はお姉さまと行きたいのです!』
「ふふ・・・。わかったわかった!この椎名お姉さまが付き合ってあげるわよ!」
私は何だかかわいい妹が出来たみたいで嬉しかった。志穂姉と三姉妹ってどうかしら?
『さっすが椎名お姉さま!じゃあ明日10時に映画館入り口でどうですか?』
「オッケー。いいわよ。じゃあまた明日ね!茜ちゃん!」
『あ、はい!あ、お姉さま!』
電話を切ろうとすると茜ちゃんに引き止められた。
「ん?まだなんかあった?」
『あの・・・好きですよ?』
それを最後に電話が切れた。
ツー、ツー、ツー、という電話の音を聞きながら私は思った。
「これって恋人同士のヤツじゃない!」
無性に虚しさが込み上げるのを止められなかった。




