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俺とキミたちのオンライン!!  作者: 五河陽太
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アイツが俺に告白かよ!?

大幅修正しました。内容がどう違うかは読んでのお楽しみということで!

場所は変わって、俺たちAAEの拠点、喫茶「宿り木」に変わる。

 俺たちはギルドと銘打っているが、現在、活動しているのはサブマスターの俺とマスターのクラップだけ。

 実はこのギルド、設立するためにクラップがお金で人を集めて仮のメンバーで創設した俺とクラップだけのギルドだ。

 だから、メンバーも俺たち二人だけだ。

 本当なら住宅地にLLサイズのハウスをドドーンと買いたいけど、俺たちはそこまで金持ちじゃない。だから、冒険者が最初に集まる街、「始まりの街」の路地裏にある古びた喫茶店が憩いの場になっていた。

 俺はNPCのマスターに「コモド牛のミルクで作ったミルクティー」を注文する。品を受け取って路地側のバルコニーに座るクラップの前に座ると、話題を切り出した。

「クラップ、採掘師でシーズナルイベントに参加した意味はあったのか? 俺たち記録外だぞ」

 クラップは二枚目な顔を邪悪に歪めては、卓上に品を出す。

「アキト、見ろ。この品は採掘師だから取れる名品だぞ。その名は『水仙(すいせん)向日葵(ひまわり)』。シーズナルイベント中のダンジョン内に稀に出現するレア中のレア石材だ。コイツを売れば、かなりのガマ(通貨単位)になる」

「汚ねぇ。最初から意味があって採掘師で参加したのか?」

「当たり前だ。この品はワタシの物だ。アキトにはやらん。無双で楽しんだだろう? ワタシはこの情報を聞き付け採掘師を即レベル十五まで上げた。この品を売ってハウスのための資金にしよう!」

「それはいい考えだ!」と二人で盛り上がっていると、そこへ一人の少女が近づいて来た。

 クラップが気付き、不信そうに声をかける。

「キミは見かけぬ顔だな。初心者(ルーキー)か? だが、キミは装備品やアイテム系を全く持っていない。キミは何者だ?」

 少女は俺とクラップの顔を交互に見ては心底困ったように答える。

「私、今日、初めてこのゲームを始めたのです。ですが、所持金と装備を悪質なギルドに騙されて全部取られてしまったの。冒険を続けたいのですが、どうしたらいいのか解らなくて――」

 やられた子か。

 このFTO内にも様々なギルドが存在するが、全てが善良なギルドではない。

 初心者をターゲットにした悪質な犯罪者紛いの連中がいるのも確かだ。

 何だかんだで、このFTOも稼働して五周年が来ている。相応の業者や悪質なギルドが存在する。防衛策を運営側も考えてはいるが、犯罪者側が一枚上手を行っているのが現実だ。未だに被害に遭った事例は後を絶たない。

 俺は可哀想だが心を鬼にして答える。

「助けてあげたいのが本心だ。だが、悪質ギルドに引っかかった君が悪い。まず、ゲームマスターに相談しな。その後、課金するなり友達に(すが)るなりしな」

 断腸の想いだった。

 実際、被害に遭った者はGM(ゲームマスターの略)に報告すれば大抵はゲーム内補助金が出されて窮地を脱することができる。また、証言から悪質ギルドに制裁を与えられるので、運営側も被害者の証言を大切にしている。

 だから、一時の感情で補助するのはナンセンスだ。正規の手続きを踏みさえすれば問題ない。

 俺はそう考えていたし、それが正しいと信じていた。

 だが、考えの違う者は身近に存在するものだ。

 クラップは両腕を広げてはオーバーリアクション気味に話した。

「そうか、辛い想いをしたな! ならば、この水仙向日葵を売ればよい! オークションにでも出せば相当の値が付く! 貧困など一瞬でオサラバだ! 少女よ、困ったらまたここに来ればよい! 私とアキトは君を歓迎しよう!」

「おい、クラップ! このレア石材は俺たちのハウス建築の資金にするんじゃなかったのか!?」

 机を叩いてクラップを詰問する。

 クラップははにかんだ表情で語る。

「水仙向日葵ならまた、シーズナルイベントに参加すれば手に入る。対して、少女の危機は今、生きるか死ぬかの瀬戸際だ。アキトよ、キミはそんなに器が小さかったか? 冒険は助けあってのものだろう?」

 君はいつも信念を貫き通す奴だ。

「勝手にしろ! 後で出ないと嘆いても知らないからな!」

 クラップは微笑んで、メインメニューを空中に展開して少女にトレードを申し込む。

 少女は不思議そうな表情でトレードを完了させると、何度もお礼を言っては去って行った。

 クラップはお人好しで、格好いい奴だが、後で絶対に後悔する奴だからな。

 結果は的中し、水仙向日葵は二度と俺たちの前に姿を現さなかったのはまた、別の話だ。

 クラップはNPCに黒麦ビールを注文して持って来ると「素晴らしい出会いに乾杯」と俺に乾杯を迫って来た。

 面倒だが、渋々乾杯に付き合ってはカップを合わせる。

FTO内でも飲食は可能だ。

 ゲーム機が食べた内容を脳波で感知して味覚や食感を再現してくれる。だが、現実世界での空腹感は満たせない。現実世界にログアウトすれば一気に空腹感が襲ってくる。

 クラップがビールを飲みながら真剣に語る。

「そういえば、アキトは高校生なのだな? ワタシも高校生なのだぞ?」

「嘘を吐くな。偶には、ログアウトして現実世界に戻れよ、オッサン」

「そう言うな。こう見えてワタシは現実世界では美少女なのだ。だが、現実世界に戻るのは拒否だ。ワタシはこの世界が大好きでな。自由気ままに冒険が出来て、キミがいる世界をこよなく愛している。現実世界などクソゲーだ」

「言うなぁ。だが、楽しみだってあるぞ? その、彼女を作ったりとか……」

「アキトよ、なぜ尻すぼみになるのだ? ハッキリ喋れ。もしかしてアキトは彼女が居た経験がないのか?」

「うるせぇ! 俺は頑張って告白しようとしたんだ……。した、だけだけどさ」

「それを俗に言う『ヘタレ』というのだ。アキトはFTO内では格好いい。だが、現実世界ではヘタレなのだな」

「ヘタレ言うな! 廃人よりマシだ! 俺だって思ってくれる子がいれば彼女くらいすぐできるんだ! そういうクラップはどうなんだよ!? 現実世界では相当な美少女なんだろ?」

 クラップは俺の嫌味を受けてもどこ吹く風だ。寧ろ、賛辞的表情で受けてはドヤ顔で両腕を組む。

「ワタシはもう想い人がいる。どんな異性が寄って来ようが一途に想い続けるだけだ」

「心は乙女なんだな。そんな格好いい奴、このクソッタレの世界に存在するのか?」

 クラップは組んだ腕を盛大に広げて歌劇のヒロインの仕草で語る。

「鈍感な奴よな。ワタシが好意を抱くのはアキト、キミだよ」

 ……。

「えぇ!?」

 三年間、苦楽を共にしてきた相棒から告白された!

 正直、気持ち悪い! 身震いがするレベルだ!

 だって、あのクラップだぞ! 無駄に恰好いいアバター、言動がイケメン、いつもインしている駄目人間確定の廃人の相棒が告白してきた。

 本人が中身は高校生で美少女と語っているから本当かもしれないけど、廃人の言動は狂ってるのが普通だ。

 頭の中で想像しようとするが、全くイメージがわかない。

 寧ろ――、

「気持ち悪い!!」

 本音が漏れてしまった。

 だってそうだろう? 三年間、中身がオッサンだと思っていた相手に告白されたらそう帰す。自然な反応だ。

 クラップは右手で両目を隠しては声高らかに笑う。

 気が狂ったか?

「そう答えたか! ワタシの心にクリティカルヒットだぞ! 乙女心を考えて物を言うのだな。ワタシだって恥じらいながら本心を語ったのだぞ? 少しは真面目に答えてくれてもよいではないか?」

「だって、相棒に告白されても全く嬉しくない。三年間の付き合いだぞ? いい所も悪い所も知り尽くしている。そんな相手に恋心なんて抱けるか?」

「正論だな。だが、ワタシは違うぞ? アキトが前衛で苦戦している時は共に苦しんだ。アキトの雄姿を一番身近で視て、感じ、結果、恋した。何処が変なのだ? 自然な流れだと思うが?」

「クラップが乙女って時点で抵抗があるんだよ。オッサンだと思っていた相棒が同じ高校生の女子だった辞典で、どう反応していいか困るんだが?」

「ならば、オフ会をしようではないか。ワタシとアキトのオフ会だ。それなら文句はあるまい?」

 オフ会!?

 つまりは現実世界で会うんだよな?

 クラップは空中にメインメニュー画面を展開しては、メッセージを打ち始めた。

 しばらくすると、頭の中にメッセージ着信音が響く。

 俺もメインメニュー画面を展開してメッセージを確認してみると、四月十二日と会う日にちと焼き肉屋と場所、一七時と時間、簡単な内容が記載してあった。

「クラップは俺と同じ市内なんだな。このメッセージを見て初めて気づいた」

「キミは何と非情な奴だ。以前、『同じ市内在住だ』と暴露し合ったではないか。そこで、高校生と考えればこの程度の範囲内なら活動出来ると想定可能だ」

「変な知恵ばかり働きやがって……。仕方ない、これも相棒の頼みだ。会おうじゃないか。その代り、美少女じゃなかったらハウス購入してもらうからな」

「望むところだ。だが、ワタシに惚れたら交際してもらおうではないか」

 お互い額がぶつかるくらいまで詰め寄っては睨み合う。

 コイツにだけは負けたくない!

そうこうしていると、脳内に目覚まし音が鳴り響く。視界には幾重ものウィンドウが展開される。そこには幾重にも「食事時間!!」と出ていた。

 クラップに「一旦、落ちる」と知らせて、軽く額同士をぶつける。

その後、メニューウィンドを空中に展開して「ログアウト」を選択する。

浮遊感が再度襲って来て、OSが脳内に介入しているのを感じる。

視界は暗転し、気付けばファンタジーな世界から意識は遠ざかっていた。


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