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俺とキミたちのオンライン!!  作者: 五河陽太
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この二人がメンバー!?

久しぶりの投稿になります!

楽などしく読んでもらえたら嬉しいです。

感想などを宜しくお願いしますね。

大幅修正→03/15

「アキト! 右だ!」

 凛とした男性の声を受け、仄暗い空間に横一閃の剣尖を走らせる。

 剣尖は見事に右に迫っていた、異形の存在の腹を切り裂く。異形の存在のHPバーが一気に減ってゼロになると同時に異形の存在は四散した。

 眼前に広がるのは洞窟内の様子だ。

 異形の存在を一匹屠ったが、同じ容姿をした仲間が他にも闇の中で蠢いていた。

 血のように赤い双眸からは、俺たちを殺す事しか考えていないのが容易に解る。身体中を囲む青い鱗は強靭な鎧だ。並大抵の力では弾かれる。手に持った銛には人間の首が括りつけてあり、異形の存在の残虐さが感じ取れた。

 ここは水のダンジョン「カゲクラ」。異形の存在は「サギハン・ロード」だ。このカゲクラのダンジョン内はサギハン・ロードの大群で進むのが困難な状況だ。

 こんな絶望的な状況下で、パーティーメンバーは、俺と相棒の二人しかいない。

 俺の職業は「デュエリスト」と呼ばれるアタッカータイプの職業(ジョブ)で前衛を死守している。

俺は最初から、前衛で戦うのを目的としてフルダイブ型MMORPG「ファイナル・タクティックス・オンライン」を始めた。

だから、デュエリストの経験は長い。メイン職業と宣言していい時間を費やして育てた職業だ。

 迫って来るサハギン・ロードを一刀のもとに屠りながら、相棒に声をかける。

「クラップ、俺たちにこの『シーズナルイベント』はちょっと似合わない気がするんだが、何で誘った?」

 クラップは俺の所属するギルド「AAE」のマスターだ。コイツには二つの特徴がある。一つ目はマスターらしい仕事を全くしない。二つ目は常にこのゲームにダイブしている。

 付き合いは三年と結構長い。現実(リアル)では絶対にフリーターだな。ロクに仕事もせずにFTO(ファイナル・タクティックス・オンラインの略)にどっぷり浸かっているに決まっている。

 華奢だが二枚目なアバターのクラップは大笑いをして、話しを切り返してくる。

「アキトは何を言っている? このシーズナルイベントはワタシとキミにピッタリなイベントだと思わないか? 『二人の相性診断! タイムアタックダンジョン踏破!』はワタシたちコンビで最高の相性と記録を叩き出すしかあるまい!」

 クラップはさっきから全く働いてない。

 それはその筈。

クラップはメイン職業の「アークメイジ」ではない。見た目は白を基調とした半袖、半ズボン。ピックを背負い頭には黄色で電球の付属したヘルメットを被っている。

クラップの今の職業は採掘師だ。戦闘職ではなく、副業(クラフ)(ター)と呼ばれる内職系の職業だ。当然、戦闘力はない。

シーズナルイベントといっても幾多のパターンが存在し、戦闘不要のイベントもあるが、今回は戦闘必要イベントだ。

だが、クラップは戦闘を俺に全て任せ、一人嬉々としてピックを振るっては洞窟内を掘り漁っていた。

 幸い、シーズナルイベントだから敵のレベルは物凄く低く設定されている。だから、俺一人でも簡単にサハギン・ロードを倒せる。

 本当の難易度なら八人パーティーを組まないと進めない難易度の魔物(モンスター)だ。

「働け、アキトよ! ワタシの為に雑魚を馬車馬の如く駆逐せよ!」

「最早この時点で相性関係最悪だろ!? 俺たちの間でイベント崩壊してるよ!」

「何故だ? ワタシはアキトが全部倒してくれるとばかり考えていたからメイン職業で来てないぞ? ワタシの今の採掘師レベルは十五だ!」

「副業する気すら感じられねぇな!? 参加ギリギリレベルの副業職って役立たずの極だよ!」

「だが、安心しろ! アキトが危機になったらと考え、回復用のあんまんを九九個持っている! キミがピンチに陥ったら即座に投げよう!」

「嫌がらせだろう! しかも回復量って一〇〇ポイントだろ!? 焼石に水だ!」

「おっと、そうこう言っている間にアキトをサハギン・ロードが攻撃している。あんまん、あんまんっと――」

「あぁ、うぜぇ! 敵もうぜぇけど、相棒が今日は何よりもうぜぇ!」

 サハギン・ロードの攻撃は痛くないけど、後方からクラップがあんまんをすぐに投げてくる。光り輝くエフェクトが本当に鬱陶しい!

 両手に持ったショートソードでサハギン・ロードの大群を蹴散らしていく。

 このシーズナルイベントは最深部に至った二人の時間で何かいい事があるらしい。

 物欲はないけど、こんな簡単なイベントで死ぬのは絶対に嫌だ。

 デュエリストの本領発揮場面はダメージを与える役割「DPS」として機能する時だ。今みたいに一対多数は得意じゃない。普段ならクラップが魔法で一掃して残った敵を倒すのが俺の役割で基本戦術だ。だが、クラップは今、採掘師で穴を掘っている。

 この、役立たずが!!

 イベントはまだ始まったばかり。

 最初に時間を費やすつもりは一切ない。

 身体と右側に捻ると同時に、両手に持ったショートソードを右側に巻き込む様に大きく回す。

 クラップは初期動作で俺の意図を察して、後方に退く。

 これからウェポンスキルを発動させるのだ。

 FTOには職業に合わせた様々な武器が存在する。その中でもデュエリストは両手剣で二本一組のショートソードを使用する。他にも大剣を使用するダークナイトや、槍を使用する竜騎士等様々な職業が存在し、その数は一〇〇種とも運営側は公表している。

 それら武器を使って特定の技を使うのを「ウェポンスキル」と呼んでいる。

俺が今から発動させるウェポンスキルは「グラディエート・ダッシュ」だ。身体を回転させながら前進すると同時にショートソードも身体に合わせて回転させて進む前方直進型の攻撃だ。だが、威力が弱く、敵を倒し切れず囲まれる可能性が高いので滅多に使わない。

 だが、敵の弱いシーズナルイベントなら何の問題もない。

 身体を正確に動かすと、このFTOを統括するOSがスキル発動の意を汲み取って、ウェポンスキル発動補助を行ってくれる。ショートソードを振り抜くと同時に身体を回す。すると、不思議な浮遊感を感じる。これはダイブ型の特徴でOSの補助が脳波に介入し、電気信号を脳が浮遊感として受け止めている。つまり、正常にスキルが発動した証でもある。

 猛回転で前方に突っ込み、サハギン・ロードを駆逐していく。視界は回転しそうだが、前方をしっかり捉えている。

 十メートルばかり進んだところでウェポンスキルが終了する。

 回転が止まり、浮遊感もなくなる。

 スキルを発動させた後には、サハギン・ロードのいない道が作られていた。

 そこをクラップが猛ダッシュで通る。

「流石、ワタシが認めた相棒だ! この場でウェポンスキルを発動させ雑魚から道を作るとは! さぁ、進め! ワタシの天下のため――」

 あ、台詞の途中でサハギン・ロードに突かれて死んだ。

 そりゃ、幾らプレイヤースキルがあっても、採掘師じゃあ死ぬ。非戦闘職業だし。

 こうして、何の為に参加したのかよく解らないシーズナルイベントは幕を降ろした。


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