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5玉め!:さぬきちゃん、学校へ乗り込む


萬寿(まんじゅ)、今日は一緒に学食に行こうぜ」


 学校のお昼休み。

 今日の小結はお弁当を持ってきていなかった。


「いいけど。お前が学食なんて珍しいな。お弁当忘れてきたのか?」

「いや、今日は置いてきた。たまには違うものが食べたい」


 ここ数日の小結の弁当の内容を知っている萬寿は、ああ、と声をこぼした。


「もしかして、また今日もうどんとソバのダブル麺弁当だったのか?」

「そうだよ。別に不味くはないけど、本当に毎日毎日同じものを入れられるとさすがに飽きてくる」

「お前の母ちゃんしては手抜きすぎないか? 同じメニューが続いても何かしら一品は別のやつに変えたりしてただろ?」


 作っているのが小結の母じゃないから仕方がないのだ、とは小結も言わなかった。

 じゃあ誰が作ってるんだよ、と聞かれても答えたくない。


「ちょっと色々あるんだよ。聞かないでくれ」

「ふーん? まぁいいや。学食行くなら早く行こうぜ。日替り定食が売り切れになっちまう」


 萬寿とともに小結は学生食堂に向かう。

 その途中で、校内放送のチャイムが鳴った。


『二年B組の俵小結君。ご家族の方がお弁当を持って来てくれています。正面玄関まで取りに来てください。繰り返します――』


「……」

「持ってきてくれたみたいだぞ、小結」


 小結は、ものすごく嫌な予感がしながら正面玄関で待つ家族とやらのところに行った。

 そこで待っていたのは。


「お、いたいた小結クン。はい、お弁当持ってきたよ」

「大事なお弁当を玄関に忘れるなんて、小結さんも案外おっちょこちょいですね」


 Tシャツジーパンスニーカー姿の、麺類天使(居候少女)ふたりであった。


「……小結お前、誰なんだこのふたり」


 俵家の家族構成を知っている萬寿が、不思議なものを見る目で天使たちを見つめる。

 小結は、やっぱりコイツらだったかと思いながら、ずしっと重い弁当箱を嫌々受け取った。





 放課後。学校の校庭の砂場で巨大なお城を作って遊んでいた(姫路城らしい。無駄に上手く作れている)ふたりの天使を回収して、小結は学校を出た。


「なんで、用事が終わったあとも学校で遊んでるんだよ。さっさと家に帰ってろよ」

「一緒に帰りたいからここで待たせてよーって頼んだら、オッケーって言ってくれたんだよ」

「ただ、案内されたお部屋でじっとしているのも退屈でしたので、ちょっと校庭のほうに出たんです」


 勝手に校内をうろちょろするなよ、と小結は思った。


「なぁ、小結。このふたりってなんなの? なんか頭の上に輪っかがあるし背中のところに羽みたいなのが浮いてるけど」


 小結と一緒に帰っている萬寿が、一番の疑問を口にした。


「……俺の従姉妹だよ。最近ウチに遊びに来てるんだ」

「さすがにその嘘は苦しすぎじゃないか? 普通の人類は頭の輪っかとか背中の羽なんて付いてないからな?」


 分かってるよ、けど本当のこと言うのも嫌なんだよ、と小結は唇をへの字に結ぶ。


「おやおや? もしかしてキミ、ボクたちのことが気になるのかい?」

「そのようですね。これは自己紹介が必要なのでは?」


 ふたりの天使は嬉しそうに笑っている。


「小さいほうが頭の中うどんパラダイスのさぬき。比較的大きいほうが頭の中ソバアヴァロンのにはち子だよ。ここ数日の俺の弁当に自分たちの好物を詰めまくってる犯人だ」

「ああ、そういう……」

「ちょっと! 勝手に言わないでくれるかな!」

「しかもなんですか。そのいかにも私たちが悪いことをしているみたいな言い方は」


 善意だからってヒトの弁当を麺でみちみちにして許されると思うなよ、と小結は思っている。

 うどんとソバで二食分食べるのも意外とたいへんなのである。


「よく分かんないけど、俺は萬寿。小結の友達だよ」

「へぇえ? 小結クンってちゃんと友達いたんだね」

「乱暴者だから学校でも浮いてるかと思ってました」


 小結は無言でふたりの頭の輪っかを掴んで、上に引っ張った。


「痛たたたた!? やめ、離せー!」

「首が! 取れてしまいますー!?」


 あの輪っか、頭に繋がってて取れないんだな、と萬寿はどうでもいい知識を得た。


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