【急募】なろうのチート使い共をぶっ潰す方法
※無双やチートを悪いように言っていますがそれはあくまでも、やられる側の主観なので必ず無双やチート小説が面白くない、つまらないと言っているわけではありません
「ヒャッハァー!!!お前をぶちのめしてやるから覚悟しやがれぇー!!!」
どこを見ても単色の大地が続く荒野を歩く男を発見するやいなや、それを取り囲むように、たくさんの悪魔が現れた。
数は200ほどいて、紫の体にフォークのような武器という、典型的なものだった。
背中の翼をパタパタさせながら、様子を伺っている。
「俺に挑もうっていうのか?バカな奴らだな」
そいつは囲まれてもなお、余裕の表情を見せ、剣を悪魔たちに向ける。
たくさんの数にも余裕の表情を見せていた。
「この軍勢に勝てるとでも思ってるのか??哀れな奴だな」
「調子に乗るのは勝ってからにした方がいいんじゃないか??ほら来いよ」
「ははは、余裕で居られるのも今のうちだ。行くぞ!!人間!」
襲いかかってくる軍勢にひるむことなく、男が剣を一振りするとたくさんいた悪魔は半分ほどになった。その光景に悪魔達は何が起こったのかわからずに唖然とするばかりだった。
「一体......なにが?」
悪魔の一人が混乱する中、そう呟く。
その男はニヤリと笑った。
「お前ら俺は倒せねえ。なんたって俺は最強なんだからな」
「ま、まさかお前.....無双系の主人公か!?」
「その通り〜」
持っている剣をくるくると回しながら答える。その「無双系」という言葉に悪魔達は動揺を隠せなかった。
「小説家になろう」の小説に、主人公が無双をする、いわゆるチートというものがある。
ステータスが通常の値では無いとか、技や攻撃によるダメージが明らかに異常だとか、様々な力が備わっているだとか種類は様々だ。
そういう類のものは、その名前の通り敵を爽快に倒して行くのが定石になっていた。
「俺は全てにおいて完璧だ。相手の攻撃も通さず、なおかつこちらの攻撃はお前らを一瞬にして葬ることのできる。誰にも倒すことができないってわけだ」
「くっ.....」
「でどうする?素直に謝れば見逃してやっても良いんだけど?ま、束になってかかっても絶対勝てないだろうから、そっちの方が賢い選択かもな。ははは」
「来いよ」と煽るように4本の連なる指を折り曲げる。悪魔達は無謀にもその男に突っ込んで行った。
負けると分かっていても、ストーリー上、戦いを挑むしかない。何よりあそこまで言われて「逃げる」という選択肢はすでになかった。
「やっちまえ!」
リーダー格の悪魔が男に人差し指を向け、そう命令すると、複数の悪魔が飛びかかって行った。
だが案の定、悪魔の数が減るだけで20、10と減って行き、ものの数分で壊滅して行った。
「くっ、貴様ァ.....」
「いつでも来い、相手になってやる」
ボロボロの悪魔に対してそんなキザなセリフを吐き、男は持って居た刀を背中に背負った。そして背を向いて歩き出した。悪魔はその傷だらけの体に手を当てながら、ただ呆然とそれを見るだけだった。
「どうにかして、あいつを倒す方法は無いものか?」
城の内部で、リーダーの悪魔がそう叫んだ。それに対して他の悪魔たちは「無理だ」や「勝てるわけない」などというネガティブなセリフを小さく口々につぶやいていた。
小さな声も聞き逃さないリーダー格の悪魔は、それらを聞いてはぁ、と一つため息をついた。
「そもそもなぜ奴らはそうやって絶対主人公が勝てるような小説を好むのか。こちらからからしたら勝てもしない主人公様()の接待をしなければならないから面倒なだけだ」
「結構人気らしいですよ。そういうの」
この手の無双系の小説は人気があり、様々な人が様々な構図で描いている。
チートの勇者に立ち向かうという無謀な事をやる仕事というのもあまり面白いものでは無い。能力値を下げるなどのことも考えたが、まず素早さで勝つことができず、こちらに動くことできる機会はほぼ無いに等しい。
運良く攻撃をせず、相手の攻撃や防御などの能力下げ、いわゆるデバフという奴を行なっても、元々のステータスが高すぎて、焼け石に水だった。
また、先ほどのよう大勢で挑んで体力を消耗させようにも、その体力自体がバケモノじみていてほぼ無意味。
ある時は即死の呪文を唱えてみた。これはその名の通り相手をHP関係なく死亡させるというもの。まあこういう類のものはボスキャラなどの強キャラクターには通じないのが普通で、予想どおり耐性があった。
「何が『いつでも来い、相手になってやる』だ。あんなチート使って勝てて嬉しいか。あんな卑怯な事していうセリフじゃない」
「まあ、確かにそうなんですけどね」
「何か奴に勝つ方法はないのか!?クソっ!!」
机を叩いて声を荒げる。だがやれる事といえばこうして嘆くのみ。そんな無力な自分に失望するしかなかった。
「ふっ、お前は所詮俺の『かませ』でしかないんだ。何回来ようとお前に勝てる可能性はゼロだ」
「ぐぬぬ.....」
「言っただろう。何度やっても無駄だと」
「おのれ.....」
毎度のごとく同じようなセリフを聞く。
あれから何回負けただろうか。その圧倒的な力で何度も、何度も敗北をきしてきた。そしてその度にここに戻って来る。何度負けただろうか。もう数え切れないほどの敗北でそう思うこともなくなり、「勝利する」ということも次第に考えることが無くなってきた。
ジリリリリ!
今日もあのベルの音が鳴り響いた。これは、出番があるという合図で、悪魔にとっては主人公様()の接待をしなければならない。
「さて、行くか」
だが、もういつものような悲観はしない事に決めた。
少し考え、無双主人公にはやられる役というものも肝心であるとわかって来たような気がする。そう考えると少しは楽になる。やはり敵というのはやられてこそナンボだということすら思えて来た。
悪魔は今日も「主人公のやられ役」として活躍をしている。
開けっ放しの大きな扉から、外に出ると、曇った空から少しだけ太陽が顔を出していた。