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僕よりひとつ想い出をつくった君

作者: Soraきた

少しずつ気づいていたのかもしれない

君は僕とのほんのわずかな距離を

黙っては言葉を続けない最近の君を見ていて

もっと早く気づいてあげればよかったのかもしれない

君越しの僕は、いったいどんな風に映っていたのだろう

この波の音を聞きながら、そう思った

君とは2年半前に出会い、いつしか惹かれ合ってつきあうようになった

湾岸道路(通称タカトミ通り)のバス停でバスを待つ君の姿を何度か追ってみては

この場所がとても気に入っていた

君は僕が描いたこともある湾岸道路からの風景画を見ては

いつか、こんなところに住んでみるのもいいのかもと思っていたらしい

夜になると、「For Season」の店にも活気が入って

僕たちを見るとマスターも上機嫌で迎えてくれた

あるとき、マスターが僕にこっそりと教えてくれたことがあった

西窓近くにあるひとつのテーブルを指さし

「ほら、あそこのテーブル、ななめ半分を月明りが照らしているだろう」

「あの瞬間に恋人が告白すると結ばれるという伝説があるんだよ」

テーブルを照らす角度と時間はとても微妙なものらしく

1年間に巡り合うのは、この時期の3日くらいと

あとは2か月に1回ほどあるらしい

僕はそれこそコロンブスにでもなって、新大陸を発見したかのように話をする

真剣な表情のマスターに少し笑いが止まらず

その場はそれ以上、聞かなかったけど

今から思えば、ちゃんと日にちを聞いておけばよかったかなと後悔もした


君には、いろんなことを教わった

2つ年上の君は、僕を尊敬もしてくれた


二人で波の音を聞いては、何度も話をしたし、ケンかもした


カレンダーはあたりまえのようにこの先の日を示しているけど

僕たちの示す日は今日が最後なのかもしれない

僕はこの部屋を出るとき、今までを思い起こしながら

波の音を50回聞いて部屋をあとにした。


君は今までを思い出すように波の音を聞いていたらしい

僕と君の共通の友達からあとで聞いた話


そして、君は波の音を51回聞いて部屋をあとにしたらしい

僕よりひとつ多く波の音を聞いていた君は

きっと僕よりひとつ多く、素敵な思い出をつくっていたのだろう・・・・


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