愛が重い人達に囲まれる英雄に転生したんだが
「あっ、これ俺Tueee系小説の中の世界じゃん」
俺が前世を思い出したのは、どっかの悪徳令嬢の小説と似たようなもので魔物に襲われ食べられ掛かった寸前のところでした。あっちょっと規模は違うな...
ソエル カーミラ、十二歳
普通の平民として今日まで普通に暮らしてきた。隠れて魔法や剣術の練習していたのでもうすでにかなり強さをなっている。
今日、村のみんなになにも言わずダンジョンに向かった。そしてダンジョンをクリアする予定だった。
しかし結果は惨敗。あの時通りかかった冒険者がいなかったら自分はこの世にいないかっただろう。
しかしそんなことはハッキリ言ってどうでもいい。いやどうでもいいわけではないが、問題はこのままでは俺が英雄になってしまうことだ。たしか小説によると俺が物心つく前に既に五大精霊と契約しているはずだ。しかもついさっきまでの俺は英雄にかなり憧れていた。『おれは英雄になる!!』って村のみんなや両親に言い張ってもいた。今じゃあ立派な黒歴史です、はい。
そして俺は正に英雄になる最大の要因の一つであろう魔法学校に入学させられようとしている。理由は二ヶ月前に村で行われた魔力の検査で強い適性を持っていたからであるからだ。まじで思い出すの遅いよ俺...
そもそも俺がこの小説の英雄になりたくない理由は【この小説のハーレムの人達の愛が重すぎる】からだ。
一人は王女様でありそしてメンヘラキャラだった【ナルシャ ルーイン】。この人とは学園で出会う。最初は主人公に対して素っ気ない態度を取るが命を助けられ主人公に惚れる。彼女の名言として有名なのは『愛してくれないならここで死んでやる!!』である。
二人目は回復魔法の使い手でヤンデレキャラでだった【ノルウィン カーベルト】。この人とも学園で出会う。編入直後から何かと主人公に対して気を配ってくれる。二人でダンジョンをクリアしていき段々主人公に惹かれていく。彼女の名言として有名なのは『愛してくれないの?あの人が悪いのね...』である
三人目は近接武器の使い手でツンデレキャラであった【アイナ メーシェ】である。やはりこの人とも学園で出会う。落ちこぼれとして蔑まされていた彼女を主人公が救う。案の定彼女は惚れる。彼女の名言は『ア、アンタなんて魔王に五百回くらい殺されちゃえばいいのよ!!』である。その後主人公は骨を五ヶ所折るなどの重傷だったらしい
四人目は別国の王女様であり、主人公大好きキャラ?である【カルーシャ セルベント】である。彼女とは学園ではなく学園の校外実習で出会う。主人公は彼女の暗い過去 (父さんが暗殺された)を引きずるのを、『過去に囚われすぎるな!!』と激を飛ばし立ち直らせる。彼女は自分を立ち直らせてくれた主人公に惚れる。彼女の名言は『あっ、もう私たち夫婦になったんだよ』である。
精神的に追い込む系一人、他人をすぐ殺したがる系一人、主人公を瀕死にされる系一人、火に油を注ぐ系一人が見事に揃ったハーレムなのである。これに耐えれたのは主人公が強いからでなく、【鈍感】で【優しく】て【器量が大きい】からである。そのどの属性も持っていない俺が耐えれることなんてできっこないのだ。
「あら起きたんですか」
俺は魔物に襲われた後気絶してしまい村の病院に運び込まれた。小説ではもう魔法学校なんか行かせませんって言われてその夜隠れて家を出る設定だったはず...
「は、はい...母さん...」
「私が言いたいこと分かってますよね」
キタ―!!ついに言い渡されますよ!!魔法学校に行くことを禁止されますよ!!フラグを折るときが来た。
「いや、わかりません」
俺はにっこり笑う、ここら辺は小説通りにしとこう。
「魔法学校に行くことを禁止します!!」
「分っっかりました!!!」
よし!!これで俺は魔法学校に行くことがなくなり英雄になることもない!!
「何で喜んでるんですか!?」
俺の母さんがかなり驚いた顔をする。
「いや別に...」
俺はにやけそうになる表情筋を努めて真面目な表情にする
「約束ですからね」
そして母さんは部屋を出ていった。さて寝るか!!
ソエル カーミラには幼なじみがいた。【マルシャ カミン】である。小説では一巻ではまるでヒロインのような扱いを受けていた。しかしあまりにも人気がなく、なにもなかったかのように一巻以降登場することがなくなってしまった不遇の少女である。なぜ人気がなかったのかというとただのいい子だったかららしい。しかし俺はマルシャが好きだった。ならば結婚するしかないだろ!!これが俺の夢である。
「学園に迎えにあがりました」
「なん...だと」
俺が村に三週間籠っていると変なおじさんがきて俺を迎えに来た。
何でこんなイベントが?主人公が通うことになる学園は実力主義なのでまだ強さも分からない子供を迎えに来るなどあり得ない...だとすると考えられることは一つである。
ゲーム補正ならぬ小説補正のせいだ。
結局俺は学園に行くことを余儀なくされた。学園には前も述べたようにヒロインが全員揃っている。俺はマルシャたんと結婚するために絶対にフラグをたてない!!悪徳令嬢を見習って傍観します!!俺の敵は魔物でも魔王でもない小説補正だ!!なんとしても英雄になんかならないんだからね!!