パーティ編成についてのあれこれ
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3人からパーティを組むことは出来るが、出来れば回復役は欲しい。
3人で連れ添って訓練場に戻って探してみるが、流石に回復役で未所属と言う人物はいないようだ。
いったん3人でパーティ申請をして、明日探索してみてから考えるか。
実際迷宮に入ったこともないし、2人がどこまで「出来て」どこから「出来ない」のか判断しないと難しい。
何より自分もどの程度「出来る」のかも分からないからな。
そう判断し、一旦パーティ編成申請書を提出しに行った。
今期入学生の大半は既に申請書を出し終わったのか、ちょうどぞろぞろと出て行った後で、さほど待たずに申請書を提出する事ができた。
これで明日には『パーティカード』が用意される。
パーティ名は最初は番号であり、変更するには「特典」を利用する必要がある。俺達は「第273番隊」だった。別にパーティ名にこだわりはないし、毎期パーティ申請はしなければならないようなので、あまり名前を変えるつもりもない。今期生だけでなく1期生から3期生までいるし273と言うのは妥当な番号なのだろうか?
別に何番隊でも良いんだけど。
他の2人は過去に迷宮に入ったこともあるはずだし、色々ときいてみるか。
何より事前の情報収集は必須だからな。
そう判断して帰り道にある学内の喫茶店に3人で立ち寄り、主にシオンから色々と聞き出した。
色々と聞き出した事をまとめると
・学年によって入る迷宮は違う
・入り口は複数ある(以前は8個あった)
・入り口によって難易度が違ってくる
・簡単なところばかり攻略しても単位は不足する(強い敵を倒す単位がある)
・同様に難しいところばかりでも単位が不足する(弱い敵を複数倒す単位もある)
・ボスとでもいえる魔物が出る部屋がある
・通路や部屋に罠は割と少ないが、宝箱は必ず罠が仕掛けてある
・地図やモンスターカード、宝箱の中にある「宝」カードで「パーティポイント」が稼げる
・「パーティポイント」を消費することでポイントにあった「特典」を得る事ができる
・地図はある程度ごとに『パーティカード』に自動的に記入される
・朝の鐘(9時)でダンジョンが開放され、夕の鐘(17時)で閉じられる
・ここ1ヶ月で改装作業を行っているから過去の地図やモンスターの出現ポイント等の知識は役に立たない
と言うことらしい。
パーティポイントは学園内でのみ利用できる一種の擬似通貨と考えると分かりやすいか。
既に公開された地図なんかもこれで買える、と。そうなるとどこまでを公開するかとかも考えないといけないな。これは本格的だな。
まずは明日だが、「朝の鐘」から「昼の鐘」まで3人で洞窟に入り、問題なさそうであれば明日は「夕の鐘」まで迷宮に入り、明後日以降は当面の間午前中を個人訓練に当てて、午後だけ迷宮に入ることにした。
パーティポイントについては4で割って等分で使う。4で割るのは「パーティ全体として必要な特典」(例えば地図や回復アイテム等)をそこで消費するためだ。
この提案には少し驚かれたが、意図を説明するとすぐに納得してくれた。この方法だと誰かが貧乏くじを引く事がないからな。
そして、あくまで一応でしかないんだが、パーティ時の配置とハンドサインについても話をしようと話し始め、しばらくすると
「・・いや、すまない。ちょっと待ってくれないか。」
シオンが会話をとめる。
「正直混乱している。以前のパーティではまったく聞かなかった話だ。・・・過去の同級生達、祖父からでさえそんな話は聞いたことはない。」
「そうか?・・何のための探索者だ。身軽なものが先ず偵察し、敵を発見する。敵がこちらより強いようなら戦闘を避けるべきだし、先手を取れるようなら先手を取るべきだ。先行することで罠を調査することも出来る。ハンドサインならば単純な組み合わせで言葉を出さなくても伝える事ができる。誰も実践していないと言うのが不思議なんだが・・・。」
「いや、確かに利点があることは説明を受ければ分かる。のだがな・・・。」
シオンは自分の顔を両手でパンと叩く。
「・・・まだ混乱しているのかもしれないな。何だかとても自分が愚かだったことに気づかされたような気分だ。」
「話を進めても良いか?ルカも、ちゃんと理解しているか?」
少し遅れてコクコクとルカがうなずく。ほんとか?怪しいなぁ。
「その前にアキラ、貴殿に謝らせて欲しい。私自身、偏見などもってはいないつもりだったが、探索者を戦闘力が低いと言うことで侮っていたようだ。すまない。」
「実際にそのとおりだからそれは良いさ。俺には戦闘経験はまだないし、戦闘では大きな活躍は出来ないだろう。せいぜい敵を撹乱する程度で。だからこそ、戦闘外で役に立たなければ。」
シオンが大きく息を吐き出す。
「実際に戦うだけが戦闘ではない。分かっていたつもりだったが、つもりでしかないことを痛感するな。有利な位置、有利な状況に持ち込めるならそれに越したことはない。その状況を作り出す、と言う事か。」
「そのとおりだ。状況が許す限りだが、最悪でも「不利ではない」に持って行きたいところだな。」
「分かった。そのための『合図』か。すまないが、もう一度最初から良いか。ルカ、お前もちゃんと覚えておけよ、後で部屋で繰り返すぞ。」
「!?」
やっぱりちゃんと聞いてなかったな。慌てふためいている姿はうっかり寝てたけどちゃんと聞いてたよ?的な感じで動作がかわいい。
ごく単純なサインだけを軽く決める。止まれ、来い、自分、お前、魔物、別のパーティ、後は数くらいで必要性に応じてまた決めていけば良いか。
後は戦闘編成だな。ザコならば個人個人で戦っていけば良いだろうが、優先的に倒すべき魔物がいる場合とそうでない場合、また単体で高火力な魔物の場合、しっかりと役割分担をしておかないと。
「・・いかに自分が無知で蒙昧だったか、思い知らされた気分だな・・・。」
しみじみとシオンがつぶやく。
「悪いが、これで完全だとは俺はまったく思っていない。明日終了後は反省会をして実際に問題点を洗い出し、改善していきたい。出来れば毎日迷宮から出てきたら必ず反省会をしたい、と考えている。」
まるで頭痛を堪えるように頭を押さえるシオン。
「正直、このような着想すらわかなかった自分が凄く愚かしく感じるから、そういう事は言わないでくれ。」
「だが、これも・・」
「ああ、分かっているさ。確かに、『必要』なことだ。・・・祖父が言っていたよ。パーティには『共通認識が必要』だと。長く組んでいくうちにそれは少しずつ形成されていく、と言っていたが・・。確かに時間も必要だが、それ以上に会話が必要だな。」
「そういうことだ。」
「では明日、8時に講堂集合だな。」
「ああ、そこで軽く説明を受けてから迷宮に入ることになると聞いている。」
「では明日。ルカ、帰ったらサインの再確認だぞ。」
あからさまに帰りたくなさそうな感じで俺にしがみついているルカを引き剥がして無理やり連れて行くシオン。
なんでだろう、散歩から帰りたくなくて無理やり連れて帰られている犬の姿が幻視できる気がするんですけど。
ルカがいかにもいやそうに連れられて割り当てられた寮に帰りながら、それでもこちらに手を振って去っていった。
さて、回復役がいないことだし回復用のアイテムや、投げナイフぐらいは仕入れておきますかね。最初だしこのくらいは初期投資として出す必要があるだろう。
購買部によって部屋に帰ることにした。
同じ事を考える学生で購買部はあふれかえっていて、かなり待たされたのには参ったが・・・。
なかなか思うように進まないですね・・。