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パーティ編成

祝、お気に入り10件突破!

一人取り残されてしまった俺だが、さほど慌ててもいなかった。

取り残された理由というのも、どうやら先ほどの魔素不足の一件が知られていた為であり、転職時に魔素不足を引き起こしておいて「探索者(下級)」というのだから「もともと魔素を扱う素質が低いか何かで使えない奴」と判断されてしまったらしい。

せめてこれが、下級ではなく中級や上級、または下級といっても上位職の下級ならば引く手あまただったのだろうが、そうでない以上「使えない奴」判定は仕方ないと思う。

しかも、探索者という職業は「一つのパーティに一人」いれば要件を満たす。正直上限が6人というパーティに、前衛としては直接的な攻撃能力が戦士に劣り、後衛としても魔法使いに劣るという探索者を2人も3人もいれるような酔狂な奴はいない。

結果として、どうしても探索者がいない、とか言うのではなければわざわざ使えない奴に声はかけない、という判断は正しい。

自分のことだけに少し寂しいが、俺が向こうの立場なら、よほど探索者に困らない限りは入れないなぁ、と自嘲気味に思う。


ま、そんなにあわてなくても問題は無い。

そもそも、今日ごく短時間で場当たり的にパーティを組んでいるわけで、必ず「パーティ方針」で考え方の違いが出てくるはずだ。

例えば単純なことだが、「こちらに恐れをなして逃げていく魔物」をどうするか、ということをとっても「追いかけてでも倒す」「見逃す」という2つの選択肢が出てくる。

戦っていた魔物が逃げ出したのなら、追いかけて倒すのはさほど問題にはならないかもしれないが、戦ってもいないのに「少し離れたところにいた魔物が逃げ出した」というならばどうだろうか?

どの程度までは追いかけるべきか、あるいは罠や奇襲を警戒して追いかけないべきか、必ず意見が分かれるのは必至だ。

事はそういった戦闘だけに限ったことではない。

迷宮に入って直接敵と戦ったほうが実技面でもプラスになる「戦士」系の職業と、当面は迷宮より魔法の学習に時間を取りたい「魔法使い」系とはある程度対立する定めなのだ。

そういった方針の違い等で必ず人の入れ替えが発生するのは疑いないので、極端なことを言うとそういう入れ替えが発生する時期までずっと個人で実技をしていてもいいのだ。

この学園都市は一定の単位を取ることで卒業できる、ある意味大学に近いシステムがとられている。一定期間単位が取れなかったり、実力試験での評価が悪いと落第や特典の剥奪に直結する。

単位には学園の「迷宮」に入って戦うことでもらえる単位もあるが、探索者なら「鍵開け」や「罠感知」「罠解除」など、学園迷宮内で「実技」としてはやりにくいスキルが単位として設定されているし、そういう意味で当面個人で実技を集中的に行うというのは悪くない選択肢だ。


とはいえ、確か入学時のパンフレットに「パーティに不参加の人」がパーティを探すための訓練場があると書いていたな。そこで登録しないといけなかったはずだった。

まずはそこに行って見るか。もしかしたらそっちでパーティに参加できるかもしれないしな。


少し迷いながらも訓練場へ着いた。

訓練場の中では何人かが戦闘訓練を行っているようだ。訓練場では迷宮内同様に魔物と戦う事ができるため、特にパーティに不参加の戦士はここで訓練を行っているものも多い。

もちろん、パーティーに参加しているとここでは訓練できない。あくまでこっちはパーティに参加できない人用の模擬施設、という扱いだし、実際に戦う事ができる魔物の数も少ない。もっといい訓練場はあるが、それはパーティで高い成績を残して、訓練場を貸し出すという「特典」でしか利用できない。そういった貸し出し専用の訓練場は学園内に10個しかないため、競争も激しいらしい。まあ、まだパーティにすら参加できていない俺には無縁の話だが。


訓練場の受付に向かおうとしたところ、ちょうど戦闘訓練を行っていた中にひときわ目立つ甲冑姿の人物がいた。いわゆる完全鎧フル・プレートアーマーに大きなカイト・シールド。MMO的に言うならば完全なタンク(敵の攻撃を一手に引き付ける役割)仕様だ。

正直、完全鎧はものすごく体力を消費するため、ピュアファイターでも身につけている人はほとんどいない。俺ならこの格好で長時間戦えるのならすぐにパーティに招くけどな。

なぜこんな人物に誰も声をかけていないのだろう、と疑問に思いながらその人物の戦闘を見ていると、すぐに弱点も分かった。

右手にメイスを持って攻撃しているのだが、ぜんぜん当たらないのだ。

相手は小さく、背中に蝙蝠のような羽を持つインプ。迷宮内では割と一般的な魔物で、確かに爪によるすばやい攻撃が売りの魔物ではあるものの、正直に言うと「それだけしか取りえはない」魔物で、所謂序盤のザコモンスターといってしまえるような相手なのだ。

耐久力も高くないため、あの空振りしまくっているメイスがラッキーヒットでもいいので当たりさえすれば、一撃で即終了だろう。

反面、盾の使い方は凄く上手であり、全ての攻撃を危なげなく防いでいるのは高評価だが、いかんせん攻撃に難がありすぎる。

これでは声がかからないのも納得だ・・・。


しばらく見ていると、誰が見ても分かるようなラッキーヒットでようやくインプを退治した。メイスをかなり振り回していたし、盾での攻撃防御もかなりの数をこなしている筈で、疲れていても不思議無いのだが、まったく疲労を感じさせない足取りで、もくもくともう一度インプと戦おうと呼び出し始めた。


見てられないな、これは。守りの才能は秀でているだけに惜しい。

呼び出すための『カード』に魔素を流しているその人物に近づき、

「ちょっといいか、次に戦うとき俺が『今だ』、といったら『シールドバッシュ』(盾を魔物に叩きつける打撃スキル)を使うんだ。」

「・・・?」

「使ったところでお前にはデメリットはないだろ?その装備ならダメージも入らないだろうし。」

「・・・(コクン)」

無言のまま軽くうなずく。

納得したのか?せめて喋って欲しいのだが・・。まあいい。

指示に従わないところでこちらにデメリットがあるわけでもないしな。


インプの絵柄が書かれた『カード』を魔方陣におくと、魔方陣が軽く光り、インプが出てくる。学園迷宮ではこのように魔物を『カード』から召還するのが一般的だが、これはあくまで学園迷宮内で魔物を再現するために作られたもので、この作り方で作られた魔物は現実の魔物より明らかに弱くなっている。ただ、特徴はうまく表現されており、本物と戦うときに経験として役に立つのだ。


そして、呼び出されたインプが甲冑に襲い掛かる。

タイミングを計り、インプがちょうど攻撃しようとするタイミングで

「今だ!」

「『シールドバッシュ』」

体勢が崩れるインプ。そこにすかさずメイスが命中し、インプは『カード』に戻ってひらりと落ちる。

「!?」

何だかとでもびっくりしているようだ。それはそうだろう。あれだけ苦戦していたインプが瞬殺だもんな。

慌てふためいてコチラにやってきてあわあわと何か言っているのだが、相当混乱しているのか何を言っているのか分からない。声も小さいし、フルフェイスの兜だから余計もごもごとしか聞こえないんだよな。

声は少し高いけど、男でも女でも通りそうな声だな。こんな甲冑を着てるんだからたぶん男だとは思うんだけど、種族によっては女でも着れたりするからなぁ。

何とか聞き分けれた限りでは、どうやらもう一度やって欲しいらしい。

「ああ、いいぜ。」

フルフェイス越しでもとても喜んでいる事が分かる。

慌てて違うカードを取り出して魔素を流し始める。


カードを横から見ると、「ボギーキャット」だ。

一言で言ってしまうと人のサイズくらいある大型の猫という感じなのだが、猫にしてはかなり凶暴な顔が残念な感じだ。

猫という見た目どおりの素早い身のこなしでこちらの攻撃を回避するし、相手の攻撃はといえば両手両足を自在に操って連続攻撃してくる。その上でスタン(気絶)の状態異常スキルもちという凶悪さ。

戦士殺しとして恐れられる魔物であり、こいつに苦戦しなくなったら学園迷宮は卒業、とまで言わしめる魔物だ。


召還すると、インプとはまるで比べ物にならないスピードで襲い掛かってくる。

その上で右に左にと目にもとまらぬ速さで多彩な攻撃を仕掛けてくる。

攻撃を全てシールドで捌いているのはさすがだが、さすがに受けるので精一杯という感じだ。

こちらとしてもインプとは比べ物にならない攻撃の多彩さでタイミングを計りにくい。


「・・・今だ!」

「『シールドバッシュ』」

体勢が崩れるが、浅い。

メイスによる攻撃をよけて後ろに飛びのくボギーキャット。

「悪い、少し遅れた。」

謝る。早すぎたのでタイミングが遅れた。

ボギーキャットは警戒して距離をとっていたが、猫らしいバネを利用して飛び掛ってくる。

それは悪手だな。

「今だ!」

『シールドバッシュ』が正面から迎撃する。ボギーキャットは盾に叩きつけられ、空中に浮かび上がる。しかしさすがは猫、というべきだろうか。一回転して足から着地する。だが、着地した地点にドンピシャでメイスが襲う。

ズバン、といういい音がしてカードがひらひらと落ちる。

飛んじゃうと体勢変えれないから悪手だよな。まあ、魔物にそれを言ってもしょうがないんだろうけど。

訓練場内でざわめきが起こる。そりゃ、こいつ倒せる様な奴がパーティからあぶれて訓練場にいるというのは反則だよな。

とはいえ、倒せたのも運が良かった。メイス攻撃を万一防がれたり、耐えられていたら苦しかっただろう。

カードから召還した相手だからこそ勝てたが、本物相手だとすればまだまだ勝てるレベルではないし、たぶんカード相手でもう一度戦っても勝率は五分はないだろう。


倒した本人はといえば、感無量という感じで立ち尽くしていたが、われに返ってカードを拾って慌てて近寄ってくる。

そして、甲冑の横につるしてあった袋から紙を取り出す。


「・・・パーティ編成申請書・・・?いっしょにパーティを組みたいって事か?」

コクコクと頷く。

そして書類のパーティリーダ-のところを指で指す。

「リーダーをやれと?」

コクコク。


さて、どうしますかねぇ。

「おれ、探索者なんだけど?」

たいてい、戦士か魔法使いがリーダーをするものだ。探索者がリーダーというのはほとんど聞かない。

それでも、相手はフルフルと首を振りながら必死にリーダーの項目を指す。


困ったね、これは。

戦闘シーンを書くのは難しいですね。脳裏にイメージは出来ているんですが、うまく文章に落とせなくてもどかしい感。

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