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学園に戻る

何日ぶりだろうか?転移門を利用して久々に学園に戻る。

学園自体には特段変わった様子はない。


顔見知りと軽く挨拶を交わしながら校内を歩く。

なにか特別な視線で見られたりするのではないかと思っていたが、特段今までと変わりはなさそうだ。


朝もソコソコに早い時間なのだが、学園迷宮にはいつも以上に多くのパーティーが並んでいてずいぶんと盛況なようだ。


どうも今まで以上に皆が熱心だな?

しかし、大きな変化といえばそのくらいだろう。


一体どんな掃除をしたのだ?掃除出来たという言葉を信用していないわけではないが、これといって大きな変化がないというのもそれはそれで落ち着かないな。


と、クルトがこちらを見つけたのか嬉しそうに駆け寄ってくる。


「ずいぶんぶりじゃのう。お主らの腕前を疑うわけではないが、遠征先の迷宮で怪我でもしたのではないかと心配しておったところじゃ」

「……まぁ色々あってな」

正直に答えるのもあれだし、ごまかすかのように返答する。


本物の迷宮に入れるようになったパーティーにはありがちなパターンだし、あまり的はずれな心配というほどでもない。

神聖魔法にも限界はあるし、何よりまだ学園で学ぶような腕前の神聖魔法では大怪我の前では無意味だ。

さすがに死ぬような事はめったにないが、過去には文字通り全滅したパーティというものもいないわけではないらしい。


……今回俺達は文字通り死ぬような迷宮に送られたわけだが、な。

誰が聞いているかもわからないこんな場所でクルトに話すのも問題だろう。


「久々に戻ってきたらなんだかずいぶんと皆がやる気だな?」

話題をそらす意味でも早速気になっていたことを聞いてみる。

「6日ほど前じゃったか、レスティア家から使者がやってきての。この学園から巣立って行く冒険者に興味がある、との話があったそうじゃ。」

「……それは学園の中立性には問題ないのか?」

「あくまで卒業生についてのことじゃしのう。それに、学園がより中立性を高く担保するに当たり支援準備がある、とまで話が出たらしいぞい。」

「なんだかずいぶん気前がいい話にも聞こえるけどな」

というか、あのお爺さんはどこまで俺達の事を買っているんだ?こういった費用だけでもかなりの額が必要だろうに。


「ここは地理的にレスティアからは離れておる事もあるし、影響を及ぼすと言ってもそう強くは出せまいて。レスティアといえば4大公爵筆頭。もしかすると雇われるチャンスとばかりに皆が張り切っておるよ。」

苦笑するしかない、と言った気分だな。


その後少し近況についての話をしてからクルトとは今日の夕方にいつもの食事処で会うことを約束して別れる。

「詳しい話はそこでな」

とだけ伝える。


今日は迷宮に入るつもりはない。

一応後ほど訓練場で軽く汗を流すつもりではあるが、個人的なニーズとして学園内を軽く調べてみたいというのもある。


今まで気が付かなかったのに今さら調べたところで何か気が付けれるとは思わないのだが、こればかりは性分だな。


昼に訓練場に、と皆に伝え一旦自分の部屋に戻る。


特に何かがあるわけではないが、ずいぶん久しぶりに戻ってきた気がするな。

夏季合宿で5日離れて、戻ってきたあと次は今回のトラブルだしな。


特に貴重品などは置いていないが、なくなっているものがないか確認し、軽く部屋を掃除してから部屋を出る。


まず調べるべきはあの事務員の人からだな。


学園の事務室まで行ってみるが、普通に仕事をしている様子だ。

特に隠れることなく行ったため、しばらくしてからこちらには気がついたようだが、特に驚いた風もない。


……予想はついていたけどやっぱりシロか。

もし彼が俺達を嵌めていたのであれば、多少なりとも驚きはするはず。


罠に誘い込んですぐに忘れるというスキルでも持っていれば別だが、仕事ぶりを見る限りではそこまで優秀な職員というわけでもないようだ。

優秀な人があえてそう振る舞う事は不可能ではないが、しばらく見た限りそこまでの人物でもないだろう。


「どうでしたか、迷宮は」

手が空いたのか、こちらに話しかけてくる。


いずれ例の迷宮に連れて行かされた転移門用のカードは返さなくてはならないだろうが、現時点ではまだ返すには早い。

「程々に、ですね。まだまだアタックしたいので、こちら借りていてもいいですか?」

カードを見せながらにっこりと笑いながら聞く。

「ええと……ええ、いいですよ。そちらはあまり人気のない迷宮になりますので。……とは言っても延長の手続きはしに着てくださいね。」

手元の資料を確認しながら返事をしてくれる。


「明日にでもみんなでまた着ますよ。」

迷宮へ行く転移門カードは基本的にはパーティ全員での総意という形で申請依頼が必要になるため、俺1人では手続きができない。

もし回収されそうになればそれを指摘するつもりで見せたが、事務員さんは予想通り特に慌てることもなく話を進めた。


早速調査するための手がかりが切れたな。

もし、彼が意図してこのカードを渡したのであればなんとか回収しようとしたはず。

この行動を見る限り、確実にシロだと断言してもいいレベルだ。


一応、事務員内に元凶がいる可能性も考えて他の事務員の様子も伺っていたが、特に疑わしい様子を見せた人物もいなかった。

やれやれ、これは前途多難だな。


事務員がこれで全員とは限らないので、事務員全員がシロとまでは言いづらい部分はあるし、どう細工をするにも彼にこのカードを俺たちに渡させる必要があったはず。

それは同じ事務員でないと難しい行為だ。


このカードだ、という情報だけを得て転移門側を交換したという可能性もあるにはあるが、それだと夜と早朝しか時間はなかっただろうし、かなり難しいのではないだろうか?

転移門を破壊したままだと足がつくだろうし、当然何の問題もない転移門をおいているはず。2度も転移門を置き換えるような手間を取るか?


いずれにせよ、転移門を利用する方法自体は元々用意されていた罠で、俺達ではなく転移門を利用するような人物ならだれでもこの罠にかけれた、と見るのが正しいだろうし、であればこそ、カードか転移門のどちらかが差し替わったと見るのが最も腑に落ちるんだけどな。

さすがに同じ方法でもう一度俺たちを嵌める、ってことはないだろうが。


転移門まで行ってこのカードで転移が可能かも当然確認する必要はあるな。

ほぼ確実に転移は出来無いはずだが。


一度転移門にいって予想通りこのカードでは転移ができないことも確認する。

国内では転移門に使うカードを同じ魔素にならないよう調整されているらしいし、あまり驚くような結果ではなかったが。


俺達が少し難度の高い迷宮を選ぶだろうことを予想してそこのカードと予め差し替えていた、って可能性もありはするのか。

一期生で成績優秀なパーティーには必ず紹介されている迷宮らしいし。


訓練所で汗を流しながらも、犯人の可能性がある人物を考えていた。

まあ、多分その犯人も誰かに指示されているのは間違いないし、犯人そのものは掃除されてなくても指示した人物は掃除されているんだろうな、とは思っているのだが。

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