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少しだけ未来の話を

この街に来て4日目。

毎日地図の提出を求められ、その度に大なり小なり指摘をもらったため、ある程度書き方がわかってきた。


凄腕だったという執事さんに色々聞く時間ももらえた。

残念ながら、戦闘方法が確立してきている俺達にとって、別の方法で確立したパーティの話から取り入れられる事は多くはなかった。

しかし、全く得るものがなかったわけではない。


生き延びたパーティだけはあり、危険の予知や勝てないと判断した時の対処方法など、参考になる点は多かった。


それ以外にも、体捌きでシオンが、投擲で俺が得るものが多かったと言える。


投擲のコツを掴んでからは、複数個同時に投げたりも出来るようになったからな。

さすがに複数個投げた時の精度はまだ問題があるが、そこは時間さえ掛ければそれはどうにかなるだろう。


迷宮に潜る前にはシオンに付き合ってもらって、こちらは投擲を、シオンは回避を磨くのに時間を取るようにした。

もちろん、木で出来た模型に衝撃を殺すゴムのような物を付けたやつを投げるのであって、真剣は利用していないが。


その間に、ノーラはルカから盾の取り回しを、リーゼはミランから物理魔法を学ぶ時間を取った。


これは昨日の打ち合わせで話したことでもある。

今の時点では無事学園に復帰できるか等も含めて不安も多いが、不安ばかりに囚われるのも良くはない。


ある程度将来的な展望を話すことで不安を紛らわせると共に、将来的な自分像というものを意識させる。

イメージがあれば、やらなければならないことも見えてくる。


何もしないと精神的に不安になってしまうこともあるが、やれることを作り、それに集中させることで一時的に不安は紛れる。

皆冒険者として生計を立てたいと考えているだけに、思ってた以上に上手く嵌ったのではないかと思う。


何より、レスティア家が直接雇っている冒険者用に用意している施設で俺を除く全員が初級職の上級まで上がっている事が確認できたし、そろそろ次を見据えるというのも悪く無いだろう。

俺もその施設を利用しても情報が伝わらない事を確認してから調べた所、怪盗(中級)まで上がっていることが確認できた。

さすがに、成長が早いギフトをもらっただけは有るらしい。


打ち合わせのことを思い出す。


「まだ早いと思う部分もあるが、このパーティーでの役割分担はだいぶ出来てきたと思う。今後を見据えてどんな上級職になりたいかもそろそろ話しておこうか」

「僕はこのまま、物理魔術師を目指しますよ」

一番最初に返答したのはミランだ。

現在の職業、物理魔法使いの上級職であり、まあ妥当な選択だろう。


「私も同様に、だな。剣闘士を目指すつもりだ」

シオンも順当なところか。剣術士の上級職で、より一撃必殺に近づく職業だ。

スキルの使い所は難しい職業だが、前衛としてもっと頼れる様になるだろう。


ルカがボソリと

「重戦士」

とだけ言う。


守備に特化したスキルを数多く要する戦士職。

いわゆる溜めに時間が掛かるが、一撃必殺の攻撃スキルも併せ持つ。

実にルカらしい選択、とも言えるか。重戦士のスキルを利用すれば今回のような突進してくる敵でも受け止めれるだろうし。


「まだ悩んでいる所はあるが、騎士、だろうな。で、ハルバートか槍か、ともかくその手の武器を装備する、と」

攻撃に防御にとバランスの良い上位職。盾も利用できる。現状と同様にいざとなれば前衛とも交代でき、後衛からも攻撃する手段も用意する、と。

現状の立ち位置をさらに強化する選択で、問題はないと感じられる。


リーゼは、少しだけ軽くため息を吐いてから、

「いろいろ考えたけど、司教がいいかな、と思ってる」

詠唱待ちを維持しつつ、他の魔法も唱えれるいわゆる特殊職。

中級の神聖魔法と、低級の物理魔法なら利用できる。

難点はやや成長が遅いことか。


「なら、その職になるためにやらなければならないことを考えないとな」

「そうだな。まぁ私はまずは回避だが」

シオンが自嘲気味に言う。シオンの回避はずいぶんとマシになってきているが、まだまだ成長の余地が有る。

鎧を貸せれば成長も早いだろうが、ここで使うわけにも行かないだろう。

いくら支援者になってくれるとはいえ、あの鎧までは知られたくない。


ノーラやミランから報告が入れば隠す意味は無いだろうが、一応話をしないようにお願いはしてある。

彼らが祖父にどの程度秘密を持てるのかは分からないが、今は秘密にしてくれていると信じるしか無い。


「私は、盾かな」

ノーラがボソリとつぶやく。訓練では割りと前衛に立つ機会を作っているのだが、実践ではなかなかそういった機会も少なく、まだ取り回しに慣れている風ではない。


「物理魔法ね。できれば、水・土あたりのミラン君が苦手なやつかしら」

リーゼは神聖魔法しかやってきてないしな。ミランの苦手な部分をフォローしてくれれば、弱点も狙い易くなるだろうし、戦闘がより楽になるだろう。


「一番使い慣れている雷魔法をまずは中級にすること、かな。火や風もですが」

ミランは長所をさらに伸ばす選択か。


ルカはきょとんとしている。

ルカにとっては今までの延長だから、特にコレを、というものはないのだろう。

既に盾の扱いは一流と言っていいレベルだし、攻撃もずいぶん安定してきた。


多少格下の相手でもまだ防御を優先しがちな部分はあるが、それを一概に悪いとも言い難いだろう。


「そういうアキラはどうなんだ?」

ノーラが訪ねてくる。


いずれこの話はするタイミングが来ると思っていたし、それなら予期しないタイミングで来るよりもこちらでコントロールしておきたかった。

あくまでも何気ない風でさらりと告げる。


「俺はまだ中級だからな」

少し驚いたような顔をしたのはミランとノーラだけで、他はさもありなんと頷いている風だった。


いや、ルカだけは我関せずだったけどね。

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