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公爵と執事の会話(執事視点)

「で、どうであった?」

「は、ご報告させて頂きます。まずは最も気になっておりますでありましょう物から」


渡されたあれを見て私もとても驚いた。

ウルム騎士爵が重用されていた理由もわかろうというものだ。


いつも求められているように、簡潔に結果だけを報告する。


「間違いなさそうです」

珍しく息を長く吐く公爵様。

無理もない。


「何年ぶりであったか?」

「新規発見となりますと6年ぶり、ということになります」

もし仮に何処かから盗んできているのであればその限りではないが、おそらくは新規発見物。

ウルム爵が重用された時期から考えると発見自体は3,4年は前である、ということまでは推察できる。

公になったのが今というだけで。


この辺りは私があえて言うまでもなく、公爵様は既にご認識のあることであろうが。


「どう、すべきであるかの」

既にいくつかの選択は考えていらっしゃるであろうが、あえて私などの意見も聞かれるので、こちらも無策とはいられない。


「まず考えれるのは一旦保管しておくことでしょうか」

使ってしまってはカードとして切れない。いざという時の為に保管して置くのが上策。

皆がそう考えるが故にこそ、コレは表には出てこない。


前回出てきたのはたまたまその価値に気づかぬ者が報告したからだ。

情報が秘匿されているため無理もないことだが。


「まったく、ずいぶん高く付きそうだな」

「このようなものを持ってこられるとは、予想だにしておりませんでした」

「この礼はいずれせねばなるまい」

「御意」

深々と頭を下げる。

いくつあるとも知れない欠片とは言え、伝説級アイテム「始まりの場所の地図」の欠片。

たとえ一欠片でも十分な功績になる。向こうが知らぬとはいえ、礼は必要だろう。


「で、他は?」

「裏付けが取れましたのが3、未だ確認中が2、他は影響度の少ないものとなります」

「どの程度まで出せそうだ」

「使うタイミングや使い方にもよりましょうが、5家や6家程度であれば爵位の降格、剥奪は可能でしょう。」

「一番の大物は?」

「伯爵止まりです」

せめて侯爵を引きずり出したかったのだが、いくら公爵様の手腕が優れていても名前すら書かれていない人物の位を下げるのは不可能だ。


「なかなかうまく立ちまわっておるのう」

「御意」

「そちらは後に報告書を上げよ。で、冒険者としてはどうじゃ?」


まだ2日しか見ていないが、冒険者としてどのステージに立っているのかを知るには十分な時間だった。

「本日時点での私見となりますが、既に冒険者としては中堅クラスと言ってよいでしょう」

「……まだ一期生、じゃぞ?」

「無論、色々と指摘すべき点はございます。しかしながら、冒険者として最も重要な事は既に理解しているようです」

駆け出し冒険者に見られる無鉄砲さがない。同時期のパーティと比べるとむしろ慎重すぎるほど。


だが、慎重なことは悪くはない。

一つのミスが死につながることを知っている上級の冒険者ほど慎重なものだからだ。

しかし、慎重なのは準備期間だけだ。いざ迷宮に入れば即断即決が求められる。

その切り替えを上手くやっているように見える。

こういった段階にたどり着くためには、たいてい一度や二度痛い目を見ないといけないものだ。

にも関わらず、実際に迷宮に入る前から必要性を理解し、実践しているだけでも優秀と言える。


「お主がそこまで言うとは、かなり有望と見て良いのかの?」

「御意。4、5年で次代を担えましょう。……ここにいるのは短い期間ですが、必要な部分についてはそれとなく指摘しておきます」

「是非にでも取り込まねばならぬな」

「御意。幸いながらノーラ様と親交があるご様子。見限られないようにノーラ様への指摘は必要でしょうが、いずれ我が公爵家お抱えの冒険者として長く名を馳せてくれましょう」

深くうなずかれる。


「で、報告に合った新しい概念、とやらはどうだ?」

「それが……大変申し上げにくいことながら、殆ど調査はできておりません」

「何故だ?」

「……打ち合わせを庭園の外れで行っております」

周辺の視界が開けている場所のため人を近づけられない場所。

メイドにより差し入れを持って行かせたが、受け取りはするものの後はこちらでやるから、とやんわりと拒否される。

庭師をそれとなく近寄らせても同様。


まさか強行させるわけにも行かないため、打ち合わせをしていることはわかるが、はっきりとした内容がつかめない。


「あの場所に目をつけるとは、なかなかやるではないか」

「御意。探ることは難しいかと。こちらに取り込んでから教えを請うた方が良かろうかと存じます」

こういった用心深さも同じ冒険者だった私から見ると評価を高くする要因だ。


「報告を見た時はまさか、と思ったが、思いもよらぬ拾い物をしたな。下がって良い」

深く一礼して下がる。


公爵様が普段は演じないような珍しい仮面をつけてまで話したかいがあってか、彼の表情を見る限りかなり好感は得れた様子だった。

あの才能がこちらに牙をむかぬよう、今後とも上手く付き合わねば。


メイド長を呼んで彼に不自由を感じさせないように上手く取り計らうよう再度言い含めなければな。

仮面を付けるというのは比喩的な表現です。話す相手によって「どういうふうに見られたいか」というのを制御して意図的にやっている、というふうに理解頂きたく。

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