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会談後

ノーラの祖父と話し終えて個室に案内される。

個室と言ってもずいぶん広い。あちこちに置かれた趣味の良い調度品の金額を考えると頭がクラクラしそうだ。

こりゃ、うかつに傷もつけられない。孤児院育ちにはすこしばかり居心地の悪い部屋だ。


そう思いながら、ベットに腰掛ける。

こちらの世界では味わったこともないようなフカフカな布団に驚きつつもノーラの祖父との会話を思い出す。


最初の感想としては正直な所驚いた、というのが本音だ。

4大爵筆頭の偉大な祖父、と紹介を受けていたため、もっとこう、厳ついお爺さんなのではないかと思っていたのだが、まったくそういう雰囲気を感じさせない。

シワクチャな顔は無表情だと確かに怖いかもしれないが、コロコロと表情を変える。

話術もどちらかと言うと商人のそれで、偉い貴族と話しているという印象は全く受けなかった。


しかし、ぴっしりと伸ばした背筋、足が悪いということで杖をついてはいるものの、全く乱れもしない歩調。

凛とした佇まい(たたずまい)はさすがに4大爵筆頭。


髪はほとんど白髪になっており、髭も白いが、なんというか立ち居振る舞いからにじみ出るオーラとでもいうべきものが違った。


会話は、と言うとさすがに殆ど向こうに主導権を取られていた感じだった。

といっても向こうが一方的に話していたわけではない。


話し終わって少しばかり冷静になった今だからこそわかるが、なんというか、殆ど予め想定された筋道通りに話を進められた気がする。

現代で言うセールスマンのセールストークを聞いていたらうっかり商品を買っていた、という感触に近いだろうか。


こりゃ、仕事でもっと交渉術を培って(つちかって)おくんだったなぁ。

元の世界で営業担当じゃなかったのはあるが、全く勝負になってなかった。

土台、勝負の場所が違うのだから本職に勝てないのは当然ではあるのだが。


まずは向こう側の感謝の言葉から始まった。

「不肖の孫達ではあるが、よくもまあ、連れ帰って来てくれた。まずはそなたに感謝を」


そのやりとりの後、学園からの敵の排除と庇護を得る話になった。

「確かにこちらで処理しておこう。そうじゃな、7日もあれば戻れる程度には掃除も終わるじゃろう。」

庇護に関しても、

「こちらからお願いしたいほどじゃよ。貴殿のような腕の立つ冒険者であれば何人いても困らん。もっとも得難いものは腕の立つ人材、じゃしのう」

と、すんなりと決まった。


その後、ノーラが俺から渡した方が良いというので、一度返してもらっていた書類と謎の欠片を渡した。


「このようなものでお礼の品になるかどうかはわからないのですが」

「礼など不要じゃったというのに」

と、いいつつも悪びれる風もなく受け取る。……受け取ったのは執事さんの方だったが。


レスティア公爵の表情は読めない。欠片を見た瞬間、ほんの一瞬だけ違和感を感じたが、どのような感情だったのかはわからない。

こちらに対してネガティブな感情では無いようではあったが。


反応があったということは、あの謎の欠片が何かを知ってるんだろうな。さすが、というべきか。

多分だけど、驚きだったんじゃないかという気がする。


感情を表情に出さないことに慣れているであろう貴族が驚くほどのレア物、だと理解したほうがいいのかもしれない。

そうだとすると少し礼を払い過ぎたのかもしれないが、あれが何なのかわからないのに俺が持っていてもなぁ。

効果的に手札として切れる人の手元に渡ったほうがいいだろうし。


そういったことを思い返しながら、手のひらの中の転移カードをくるくると回して遊ぶ。

学園の掃除の間、この屋敷でのんびりしているのも暇だろう、とノーラの祖父がレスティア家にて所管している迷宮への転移カードを貸してくれたのだ。


さすがの俺も完全な好意からこんなものを貸してもらえるなどとまでは思ってはいない。

向こうにも思惑があるのだろう。


最もありそうなのはテストということだが、既に十分な素質は見せているという認識だ。

明らかに格上の洞窟から生きて帰ってきたわけだし。


慎重な人なら複数回テストするというのもあるだろうが、多分それは違うと思う。

イマイチ相手の思惑が見えないが、こちらにとってもメリットになる以上、全く挑戦しないという選択肢は存在しない。


「ま、取り敢えずはテストだと思ってやるべき、なんだろうな。いずれにせよここで7日もぼんやりしているわけにも行かないし」

そうなると打ち合わせ用のスペースとかを借りたいが。


しばらくノーラを探して館を歩き、ノーラとミランが絞られているのを遠目に見つける。


……明日でいいか。

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