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王都の食事処にて

思った以上に長い間寝てしまっていたようだ。

ふと気がついて外を見ると既に日が落ちかけている。


昼まで休むつもりが、もう夕方といった方がいい時間帯だ。


軽く伸びをしてから起きる。

なんだか、ずいぶんスッキリとした印象だ。


そこに、控えめなノックの音。


「アキラさん、起きていますか?」

ミランだ。

「ああ、つい先程な」

「そうですか、では良い食事処を紹介してもらえましたので皆で行きませんか?」

「……そうだな」


ノーラがなにか話がある風だったし、食事のあとに時間をとるか。

祖父に力を借りるという話もしなければいけないだろうし。


軽く用意をして部屋を出る。

既に他のメンバーは宿屋の1階部分の待合室で座って待っている。


連れ立って行った食事処はやはり、というべきか個室で独立しているところだった。


「商人さんたちが重要な商談をするときに使うところだそうです」

「……なんというか、高そうだなぁ」

完全前払い制で、ノーラが払っていた為金額ははっきりと分からなかったが、金貨を何枚か渡してたよな。

宿泊費より高い食事処って……。


その後出てきた食事は確かに、金額に見合うものだった。

多分豚肉だろうもの等、元の世界ならともかく、こちらの世界に来てからはとてもお目にかかったことが無いような食事。

……こういう食事ばかり食べていると普段の食事が食べれなくなりそうだな、という心配をしてしまうほどには豪華なものだった。


食後にコーヒーより少し苦味の強いアニューという飲み物をゆっくりと飲んでいる時に、ノーラが意を決したかのように切り出した。

「……正直、この話を聞くべきかどうかは悩んだ。聞かぬままこのままパーティとして共に歩む道も有る事は分かっている。……そちらのほうが賢いということも」

視線が俺をとらえた後、シオンに向かう。

シオンはすっと視線を下げる。まるで何かを悔いているかのように。


「色々と聞きたい事があってまとまっていないんだけど、一言で言うならば何故、かな」

「何故、とは?」

聞き返しては見たものの、要件の想像は付いた。切り札ともいうべきアイテムを見せてしまったからな。

疾風の短刀だけなら聞かずにいてくれたかも知れないが、傷知らずの革鎧と魔法の袋まで見せてしまったし。

俺が名の知れた冒険者や実は王族とかであればともかく、孤児だということは最初の自己紹介の時にも言っているし、「なんでそんな物を持っているんだ」、と聞きたくなるのは分からなくは無い。


「魔法の袋には驚いたが、見たことがないわけでもない。……だけど、あの鎧は見たことがない」

「鑑定も通らなかったしね。知ってる?冒険者になるなら、下級鑑定は貴族では必須よ」

リーゼが横から口を挟む。

下級鑑定が通らないということは少なくとも希少以上、という品質まで特定できるわけか。


「パーティの戦力を把握しておきたいだけですよ」

ミランがニコニコといかにも何でもない風で口を出してくるが、フォローのつもりなのか、聞き出すつもりなのか、どちらにしてもあまり上手くはないな。


パーティの戦力を正確に把握しておきたいというのは分かる。

今までの打ち合わせでも俺から他の人に何が出来て何が出来ないのかをずいぶんと聞いてきているからな。

それはあくまでスキルや戦闘スタイルがメインで、武器や防具ましてや家のことなんて聞いたことはなかったが。


「と、言ってもな。信じてもらえるかどうかは分からないが、この魔法の袋の中に入ってたんだよ」

嘘はついてないな。

本当のことなんて言っても信じてもらえないだろうし、嘘はつかないけど本当のことは言わないという路線が正しいだろう。


「その袋は……?」

ノーラが更に追求してくる。

「最初から持っていたんだが」

どの時点を最初、とするかは難しいところだが、俺から見るとアキラになったあの瞬間こそが初めて。ここにも嘘はない。


「……アキラさんは本当はどこかの王族とかではないんですか?」

ミランが呆れたかのように聞いてくる。

「まさか、と言いたいところだけど親なんて知らないからな」

自身の出自を知らないことを強調する。


孤児という出自に感謝することが有るとは思わなかったな。

分からないという事には可能性が無限にあるということだし。


予想外の返事だったのだろうか、ノーラは固まってしまっている。


「……魔法使いになりたかった、という話を聞いたけど」

リーゼが絞りだすかのように聞いてくる。


ああ、アキラはそういう予定だったみたいだな。

「色々と思う所があってな。要はこのアイテムを自分で使いたかった、ということかな」


「それはまあ、逸品なんて人には貸しにくいですよね」

いつもより笑顔成分が多いぞ?ミラン。

さり気なく品質を確認しようとしているあたり、最も油断ならない相手はコイツかもしれない。


でもまあ、隠し続けるというのは難しいだろう。

何より、まだ1年も経ってはいないとはいえ何度も同じ死地をくぐり抜けた仲間だ。


「そうだな」

何事も無い風を装って同意する。


ミランはあっさりと同意されたことに少し驚いていたようだが、すぐに立ち直ると、

「聞き出すようなことをして申し訳ありません。……でも、確証を得ておきたかったので。姉のためにも」

まだやや混乱している風のノーラを見ながら言う。


「それが何故ノーラのためになるのか、よくわからないんだけどな」

ポツリと本音を漏らす。


「……それは僕からは言わないでおきますね」

なんだか困った風な苦笑いだけが印象に残った。

アキラが嘘はついていない、という事は他のメンバーも理解している感じです。

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