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宿屋に戻る

宿屋に戻る。

草木も眠る丑三つ時と言うんだったか、深夜2時を回っている。


予め取り決めてあったノックで合図する……が、反応がない。

まさか、俺を追って街に出て行ったりしていないよな?色々と悪い予想をしてしまう。

念のためもう一度ノックをした所、内側からたどたどしく合図が帰ってきて扉の鍵が開く。


すっと中に入ってドアを閉める。

全員、居るな。……寝てるが。


なにか話し込んでいたのだろうか?

車座に座り込んだまま力尽きたかのように横になっていたり、座ったまま寝ていたり……。


内側からドアを開けてくれたルカが、「私は起きてたよ?」という感じで眠そうな顔をこすっているが、どう見ても合図のノックで起きた風で、ほっぺに絨毯の跡がついている。

それに、ルカ。フルプレートを装備していればともかく、未装備のその格好で起きていたところで……。


色々と言いたいことはあるが、声には出さずに頭をグリグリと撫でる。

ルカは痛そうにフルフルと顔をふる。


……しょうがないか。皆疲れていたのだろう。毛布を掛けて回る。


仮眠を少し取りたいが、さすがに無理か?

まあ、一日程度は徹夜してもそこまで問題はないだろう。


明日の朝には王都に行けるのだし、そこで休みをとってもいいだろう。

直接学園に帰るのが正しい選択とは限らないし。

確実に仕掛けた奴は学園に居るわけだからな。……何か手を考えないと。



朝方に少しうつらうつらしてしまったが、結局翌朝まで寝ずの番をした。

ルカは早々と丸くなって寝ていたが。


一応、要件しか言わない彼女の説明によると、彼女たちヒューイ族は気配や音に割と敏感らしく、寝ていても起きることはできるらしい。

……種族の特性はそうかもしれないけど、彼女の普段の姿的に余り信頼出来ないんだよなぁ。


結局何事も無かったので、休んでいても良かったかもしれないが。結果論だな。


朝方に昨日の少年が御用伺いに来たので、タオルと水と軽い食事を頼んだ。


その音に気がついたのだろうか?最初に起きてきたのはミランだった。


「おはようございます。……ずいぶん遅かったですが、帰ってこなかったのはある意味で運が良かったかも知れませんね」

意味ありげに微笑む。


「どういうことだ?」

問い返すが、ミランはニコニコと笑うだけで何も答えてくれず、タオルで顔をふき始める。


その後、朝食を持ってきてくれた少年に再度金貨を握らせる。アキラの頃に通った道だからな。どうしても他人とは思えない。

治安が悪い都市でこの手の少年に大金をもたせすぎるのはあまり良いことではないのだが、彼なら上手くやるだろう。


朝食の匂いに気がついたのかルカがふっと起きて顔を洗う。

そして、シオンをゆさゆさと揺さぶる。


「……眠ってしまったか。……色々と済まない」

シオンが起きるなりわびを入れる。


寝てしまったことへの謝罪、というわけだけではなさそうな申し訳なさげな表情を訝しんでる暇もなく、ルカがノーラもリーゼも起こしてしまい、早々と朝食を食べ始める。


「寝てしまっていたのか……。悪い」

ノーラがこちらを見て、ほぼ貫徹なのを察したのだろう。謝罪を投げてくる。


「ふぁふぅ……おはよう……」

眠そうにあくびをしているのはリーゼだ。


「リーゼは朝に弱いからな。しばらくかかるぞ」

ノーラが俺に説明しながら、色々と世話を焼いている。


なんだか奇妙な雰囲気のまま朝食を取り終わる。

ノーラが何か聞きたいようだが、まだリーゼが半分寝てる感じだからか、話題にはしてこなかった。


なんだかあまりいい予感はしないし、さっさと主導権を奪ってしまうに限る。

「とりあえず、コレが昨日の戦果だな」

全員分の外套と、許可証を出す。


「……まさか許可証を持って帰ってくるとは思ってなかったですよ」

と、ミラン。


「で、これはノーラ向けのおみやげかな」

奪ってきた権利書のような書類をすべて取り出す。


「なんだか、何処から聞いたらいいのかという感じだな」

ノーラが面食らったかのような表情で受け取り、軽く目を通し始める。


「最後にコレだな」

俺から見ると青いガラスの破片にしか見えない謎のアイテムを取り出す。

そういや鑑定してなかった、と思って鑑定を通す。


物品名:『欠片のようなもの』 分類:地図の欠片 品質:???


「!?」

危うく変な声を出すところだった。

これ、鑑定が通ってないってことか。


過去に鑑定が通らなかったのは初めてなので少し驚く。

分類だけ鑑定が通っているというのも謎だな。


「見たことがないな……」

シオンが覗きこむ。


「あまり価値がありそうなものには見えませんが……。何かの欠片ですかね」

ミランもいぶかしそうに言う。


「済まないが私もコレはわからない。祖父か父に見せてみることにしよう」

ノーラが受け取る。


さて、と。

「通行書はとれたことだし、まずは一度王都に向かおう。それから先が問題だが」

と、方針も決めてしまう。


ここにいるよりは王都に移動したいというのは全員の一致する思いで、早々と移動してしまうことは決まり、準備を始める。


最後に、ノーラが

「……王都に着いたらら聞きたいことが有るから時間をとってほしい」

と俺に向かって宣言する。


ゾクリ、と走る悪寒。

なんだ……?嫌な予感しかしないが。

「あ、ああ」

断れる雰囲気ではなかったので取り敢えず答えたが、失敗だった気がしてならない。

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