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情報収集

「怪しいとは思うが……。」

それはまあ、ボンボンに痛い目を見せてしまったし、恨まれる可能性があるとすればファーランティアだろう。

しかし、あくまで怪しいという程度だし、ボンボンも推測だが権力で救われてるんじゃないのか?

放校くらいでどうにかなる奴じゃないと思うのだが。


「……動機があって、実行能力があればそれを敵とみなすのが最もいいと思いますよ。……僕もファーランティアだと思っていますが」

訝しげに思っている俺に、ミランが口を挟む。

「それに、多分政治的な話なのよ」

ノーラがフォローする。


それならある程度納得できるか。

結局のところやり過ぎたということだろう。メンツに泥を塗ったので意趣返しという意図であれば分からなくもない。

「けど、直接は手を下してない、ってことでしょ?」

リーゼが尋ねる。


出た場所がファーランティアの領土ではないから、か。


「そうね、確実に自分ではやってないでしょうね。もし、ファーランティア公爵がやっているのであれば、私達は生きてここにはいないでしょ」

ノーラが身をすくませながら言う。

「ウルム?という一代爵がやったんじゃないのか?」

口を挟む。

「難しいところですね。ウルムはたまたま迷宮を利用されただけという可能性はあります」

ミランの言うことも最もか。


「だが、ウルムは敵側なんだろ?」

ノーラに確認をする。

「父の話で聞いたことが有る、という程度でどういった人物かは知らないんだが……。敵側なことは確か。一代爵なのに話題に上がるのだから、実力はあるんだと思うわ」

ふむ。


「可能性の話を論じてもしょうがないだろう。……さしあたりまだ敵地なのであれば、どう切り抜けるかを考えるべきだ」

それまで黙っていたシオンが方向性のずれかけていた会話を元に戻す。


「それもそうね」

あっさりとリーゼが同意する。


「とりあえず、もう少し色々と情報を仕入れてくるつもりだ。通行証もどうやれば手に入れれるかわからないしな」

「手分けして聞いたほうが効率的では無いか?」

ノーラが尋ねる。

「悪いが、俺達は目立ち過ぎだ。目立たない格好を仕入れてくるつもりではあるが、それまではおとなしくここで待っていて欲しい」

孤児として生活していたアキラとしての知識である程度は危険な場所、そうでない場所というのは推測がつくし、最悪一人ならいかようにでも逃げる方法はある。


少し不満そうだな。

「結局ダンジョンに戻る可能性もあるし、今日のところは休んで置いて欲しい。……まあ、そう無理はしないさ」

少なくとも通行書をゲットするか、取得方法が調査できるまで帰らないつもりではあるが、無理はしない方針なのは確かだ。


不満は消しきれていないようだが、反論はない。

戻ってきた時のノックの方法だけ言付けると、以前買い込んでいた黒いマントを羽織る。

正面を閉じれば『初心者っぽさ』は消えるだろう。あとは部屋を出てから少しだけ変装をすれば、かなり目立たなくなるだろう。


「じゃ、休んでいてくれよ。休息も戦士には必要なことだ。最悪迷宮に入ることになれば期待させてもらうからな」

本音をいうと、まったく関係ない方面で彼女たちに被害が出るのは勘弁してほしいからな。

冒険者として慣れてくればともかく、まだ一期生のうちにこういった治安の悪い街での過ごし方を期待するのは少し酷というものだろう。


外に出るなり手早く変装を済ませる。

なるべく印象に残らない方向に。


21時頃か。迷宮が多いのだろう。ある程度稼ぎを上げたと思わしき冒険者たちが酒場で思い思いに飲んでいる。

まだ冒険者相手に商売をしている装備屋でなるべく汚れている見た目の外套を買い込む。


流行っている酒場にはあえて行かない。

迷宮の情報を取得するにはいいかもしれないが、今必要としている情報はああいうところでは手に入りにくいし。


少し大通りから離れた界隈に落ち着いた酒場を見つける。

こういう所、かな。


店に入って、端の方の席に座る。

マスターが注文を聞きに来るタイミングで、マスターにだけ聞こえるように

「……この街には『耳』はいるのかい?」

と、だけ尋ねる。


マスターは何事も無かった風に俺から離れ、ロックに入ったブランデーのような酒を木製のソーサーと一緒に持ってくる。

ソーサの下に小さな紙。地図かな。


一杯だけくいっと飲むと、金貨を3枚ほど置いて地図を手に包み込み、店から出る。

耳は情報屋の隠語。たいていはマフィアや盗賊系のギルドの構成員で、1つの街に2、3人居ることもあるが、金さえ払えばある程度のことは教えてくれる。

もし、この街で仕事(盗み)をしたいならまずはこういった情報役に仁義を通さないと困ったことになりやすい。


地図の場所で情報屋から色々と教えてもらう。

……まさか耳の聞こえない風の爺さんとは思わなかったが。


予想はしていたが、あの城塞の中に発行所があるようだ。

誰かから盗む手もあるといえばあるが、あまり発行数が多く無い様で、持っている人物を見つけるのも時間がかかりそうだ。


一応、2,3日ほどかければ隣町にも行けるようでは有る。

さらに陸路だけでも一ヶ月ほどあれば学園都市までは戻れるが、どちらにせよそれは時間かけ過ぎだな。

実に簡素なものだが、城壁の中の見取り図を手に入れ、許可証を発行している場所……領主の館だったがも確認する。

領主の館のある程度の見取り図も手に入るとは、この手の情報屋は話に聞いただけで利用したことはなかったがさすがにすごいな。


「許可証は手にはいらないのか?」

「さすがに時間がかかるのう。……お前さんならそれこそ手に入れた方が早かろうて」


それもそうかな。

準備は終わった。もうすっかり夜も更けてきて、出歩いている人も少ない。


「爺さん長生きしろよ」

口止め料も含めて白金貨を投げてよこす。

「ほっほ。これを使うまでは死ねんのう」


闇の中に消える。この手のスキルを使う事があるとは思ってはいなかったが、学園でもこっそり練習しておいてよかったよ。『ハイドインシャドー』だ。

一路、城壁を目指す。

後ろで爺さんがポツリと呟く。


「恐れ入る腕前じゃな……ワシ程度の眼力では分からなんだ。いったい何処の使い手なことやら。」

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