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久々の学園

夏季合宿を終えた翌日の朝に転移門を使って学園に戻る。


久々に学園に戻ってきた気がする。

たった5日とはいえ、本物の迷宮に入れたのだから得るものはそれなりに多かった。

迷宮の難度には不満はあるが。


戻ってきてまず気がついたのは1期生の人数だ。

なんだかずいぶん少なくなっている気がする。


ボンボンが居ないのはある意味当然としても、いつも混雑していた2番入り口や3番入り口の順番待ちですらずいぶん改善されている様子だ。


もちろん、パーティ全滅のペナルティで居ないだけかもしれないし、競技祭の急増パーティが解散したりで一時的に減っている部分はあるのかもしれないが、そうだとしても少なすぎる。

競技祭の不正に関係していた人物は思っていたより多かったのか?……多くの一期生は競技祭に実際に参加していた、と聞いているのだが。


「どうじゃったか、海は」

俺達の帰りを待ち構えて探していたのか、クルトが向こうから近寄って来て話しかけてくる。

「クルトか、なんだか久しぶりに感じるな。」

「ずいぶんと女性陣が気合入れておったのではないか、の?」

ニヤニヤと笑いながら聞いてくる。


ここで動揺したらダメだな。

「皆綺麗だったよ。クルトも来たらよかったんじゃないか?」

何事もない風を装ってさらりと言い返す。

「本当かのう?」

……このまま話題を続けるのは危険だな。危険察知とかのスキルを利用しなくても分かる。


あからさまな話題そらしにはなるが、気になっていた事を聞く。

「それより、ずいぶん一期生が減っている気がするが?」

「競技祭の不正審判に関与して退学になった……ってのは少数派じゃな。じゃが、何らかの利益を受けていたり、ボンボンに対して何らかの形で取り入ろうとしていたりしていたのは結構おったようじゃの。」

「まさか全員?」

「さすがにそこまでは無理じゃな。とは言え大鉈が振るわれたのは間違いない。」


クルトの話によると、最も重い処分である放校となったのはボンボンと、直接ボンボンから利益を受けていたもの(ボンボンのパーティメンバーとアスのパーティ)、ついで重い処分である不名誉退学に不正審判に関わっていたものが全てが対象になったとのこと。

それ以外でボンボンに取り入ろうとして実際に何らかの行動をとったものはすべて強制労働5日の刑を受けている最中だそうだ。


アスはとばっちりを受けた感はあるな。放校処分はアスには重すぎるだろう。


とはいえ、学園は『中立』。どの国家にも所属しない。学園理念として最初に謳われていることだ。学園の規則にもこうある。

「自らの出処による利益の供与、または出処を利用した何らかの強要・教唆・煽動・その他の行為を行ってはならない」

「利益の供与を受けるために何らかの便宜を図るような行為を行ってはならない。」

「当学員の行為により学園の中立性を疑われる事案が発生した場合、厳罰を持ってこれを処す。」


実際はある程度建前と化してしまっている部分があるが。


ボンボンもどちらかと言うと取り入ろうとした1期生側に巻き込まれた感があるが、競技祭中に明らかな判定の不正に異を唱える様子はなかったし、聞き取り調査の時にも権力をちらつかせる態度があったようで、学園としての強い態度を示すためにも放校処分となったらしい。

まあこのへんは政治的な話も絡んでくるようだが。


「強制労働5日かぁ。……自業自得な面もあるだろうがすこしばかり可愛そうではあるな。」

合宿と同じ日数なのに強制労働が未だ終わってない理由は、単純に強制労働を命じられたのが俺たちが合宿に入った次の日からだから、とのこと。

冒険者になるために学園に入ってるんだから、腕を磨くのが一番だし、誰かに取り入るために労力を割くのは本末転倒だろうに。


なら、学園内の迷宮が空いてるのは今日までってことか。

少しばかり未だ入っても居ない入り口のボスと実際に戦ってみたいという欲求があるものの、わざわざ入るほどでもないか。

特典で行ける本物の迷宮は他にもあるし、訓練場も借りれるようになっているはずだしな。


夏季合宿の話題に戻される前に早々とクルトと別れ、事務課に成績表を提出し、そのついでに訓練場を借りる。


1期生が特典として使える訓練場ということもあって召喚できる魔物はある程度限られているが、これを使うことでいろんな戦闘のパターンを試せるのは大きいな。

早速ではあるが使ってみた。


最初から意図的にコチラの数が少ない状況や、相手の数が明らかに多い状態という普段ではなかなか試せない編成をメインに試す。

最初は思った以上に効率的に戦えていたため、昼休憩をとってからはより難度の高い設定にしてみたりと色々と試してみた。


練習として考えるならこれも悪くないな。

例えばシオン一人で敵は5体とかって状況も作れるからな。

個人訓練や連携の確認にと使い道は多いだろう。


その翌日は予定通り強制労働に行っていた一期生たちが帰ってきた。

皆疲れ果てて寮に直行していた姿に少しだけ同情してしまったが。


俺達は午前中に講義を受け、午後に次に行ける迷宮を調べていた所、事務課から事務員がやってきて、夏季合宿での成績が優秀だっただめ特別にもう一つ迷宮に入れるとのこと。


持ってきてくれた資料も合わせて検討したが、最後に提示された迷宮が一番良さそうだな。

山の中腹から洞窟に入っていくような形の迷宮。

とはいえ、実際の洞窟のように足場が悪いわけではなく、ある程度整地された道があるようだし。


今日は準備に当てて明日朝からチャレンジする事を事務員に伝え、ロープやランタンなど必要と思われるものを用意することにして購買部へ行く。


購買部で色々話しながら購入していく。

ポイントにも余裕が有ることだし、ラビの実をいくつか買っておくか。

あとは小腹がすいたとき用のクラッカーのような箱入りのおやつを何個か。


そして翌日、転移門で迷宮に向かうことに。

事務員からもらったとおりの道順では直通の転移門はないようなので、学園内の指定された転移門に入り、その先にある転移門をさらにくぐる。


すると、明らかに空気の質が変わる。

資料に書いてある迷宮についたようだ。


迷宮内の魔物よけの魔法で保護された小部屋に出ている。

迷宮にもよるがこの様に迷宮内に直接転移門が置かれている場合は少なくはない。


真っ暗な室内だが、転移門の前で用意しておいたランタン2個が早速活躍しているため、現時点では視界には問題ない。


足場も正確に直線に切り取ったかのような石で、足場で困ることはさしあたりこの迷宮では無いだろう。


パーティ内での準備を確認し、まさに部屋を出ようとしたその瞬間だった。

急激に光沢を失っていく転移門。

そして大きくヒビが走り、甲高い音を立てて割れる。


割れるまではあっという間だった。


「まさか……閉じ込められた、か?」

転移門の破壊はそう簡単には出来ない。

だが、予め十分な準備さえして置けるのであれば転移門を壊すことは割と容易だ。


転移門は基本的に一対として作られ、片方が壊れればもうひとつも壊れるようになっている。

何もしてないのにコチラの転移門が壊れたということであれば、おそらく入ってきた方の入り口が破壊された、ということ。


復旧はほぼ無理だ。


半呼吸だけ遅れて皆がそれを察する。


これは事務員さんからもらった地図も正しく無いと考えたほうが妥当だろうな。

間違った地図しかない状態で、どこにあるかもわからない出口を探せ、と。


なかなかハードな状況じゃないか。

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