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強化合宿(初日)

眩しく光る太陽が暴力的なまでに肌を痛めつけてくる。


空は抜けるような青空。鳥が遠くを群れで飛んでいる。


足元にはじりじりと熱を発する砂浜。


そして目の前には押しては打ち返す大きな波。


・・・そう、海だ。


俺はトランクスに似た水着をなぜか着て、手には大きなビーチパラソルと飲み物が入った大きなバックを抱えて立ちすくんでいる。

似たような格好のミランに問いかける。


「俺達・・強化合宿(きょうかがっしゅく)に来たんだよな?」

「ええ、そうですよ。強化合宿(なつやすみ)に来たんですよ。」


なぜだろう?

同じことを言っているはずなのに違和感がある。


というか、俺達はなぜこんな格好でここに立っているのだろうか?

なぜこうなったのか、思い出してみた。


競技祭の1期生優勝が決まった後、会議室のようなところに呼び出され、優勝の特典について色々説明を受けた。

パーティポイントの増加や、訓練場の貸出、そして低レベルな迷宮限定ではあるが、本物の迷宮の攻略について等だ。


学園が管理している「踏破済み」迷宮に限るとはいえ、本物の迷宮に入れるというのはやはり大きい。

もちろんリスクは有る。ストレートに言うと死亡する可能性がある。

学園迷宮で出てくるような作られた敵とは全く違うからな。


ただ、今のところ優勝するようなチームで死亡者は出ていないとのこと。

まあ、仮に出ていたとしても挑戦するつもりではあったが。・・リスクばかりを恐れていてもしょうがないからな。


ちなみに、「踏破済み」というのはすでに完全に迷宮の地図が完成し、ボスも何度か退治されている迷宮を指す。

ボスを一定回数倒すと、迷宮の魔素が枯れ、「攻略済み」迷宮となる。


攻略済み迷宮となって迷宮の魔素が枯れると、迷宮内での魔物の出現率が急激に下がり、迷宮が『無くなって』いく。


迷宮を放置し続けると魔物を吐き出し続け、周辺の村や街を襲うため退治は必須だが、迷宮ボスを退治し過ぎて攻略済みとなるのもあまり美味しくない。

そのため、特に低・中級の魔物しか出ない迷宮は殆どの場合、ボスの退治回数・退治タイミングまで含めて『管理』されている。


管理している場所は王宮であったり学園であったり様々だが、うちの学園も複数の迷宮を『管理』している。

それらの迷宮は2期生、3期生となるたびに攻略可能となっている。・・もちろん、挑戦可能な迷宮はパーティの強さによって変わってくるが。


少し話がそれた。


そういった説明の最後に、

「特典として強化合宿を受けることができるが、どうする?」

と聞かれたのだ。


強化合宿と聞いて、冒険者の実力を高めるための合宿だと理解した俺は即断でYESと答えたのだが・・。


「なら、こちらについてこい。」

と、早速『転移の間』に連れてこられ、男性陣だけ何故かクッソ重たい荷物とともに転移門に蹴りこまれた。

・・転移門とはその名の通り、ある特定の場所とだけつながっている門のことだ。

学園では学園で管理している迷宮への直通の門がいくつもある。


蹴りこまれた転移門の先は島の高台にある3階建ての宿屋のような建物の中だった。

建物の中にはこの宿屋を管理しているという老夫婦がおり、どうもこの島での先生役らしいのだが、まず手始めに、ということで台所の掃除や自分達が泊まるための部屋を掃除させられた。


そこまで汚れてはいなかったお陰で2,3時間ほどでなんとか片付け、片付けが終わるなり荷物の中からビーチパラソルと飲み物が入ったバック、そして男性用の水着らしきものを取り出され、着替えて海にでろ、と言われたのだが・・。

ここまでの間、ミランと俺だけですべて行っており、女性陣の出番は一切なかった。先に蹴りだされたのは俺達だけなので、今どうしているのかも判らない。


何が起きているのか理解できない内に色々とさせられたため、混乱している感じが強い。


「とりあえず、日差しも強いし適当な場所にコイツを立ててしまおうぜ。」

なぜこれを持ってこらされたのかわからないが、ずっと持っているのも馬鹿らしいしな。


多分、水泳教練でもするのだろうか?

誰も人がいない上、随分澄み切った海に気後れしつつも、適当な場所にパラソルをさして日陰を作る。


ミランが持ってきたシートのようなものを引く。

3人程度ならともかく、6人全員が入るにはかなり狭いと思うんだが・・。


まあ、女性陣が持ってくるのかもしれないしな。

とりあえず、どっかりと腰を下ろす。


ミランがまるで堪えられないという感じで、クスクスと笑っている。

「なんだよ。」

少し不機嫌になりながらも問いかける。


「いえ、少しばかり意外だった、というだけです。あなたは冒険者になることに関しては情報収集を惜しみませんが、・・それ以外のことに少し鈍感すぎる気がします。」

む・・。確かに、特典や単位といったことは随分といろいろ調べているが、中にはあまり意味が無いような特典とかもあるため、結構スルーしてる部分はある。

「それを言われると痛いな。夏季合宿も知らなかったしなぁ。・・いや、見たのかもしれないけど、むしろ本物の迷宮に入れるとかそういう方面に目を奪われていた感はあるな。」

「少しだけ得心しました。・・この夏季合宿はむしろパーティの信頼関係を強めるための行事ですよ。・・優勝するようなチームには引き抜きも多いですからね。」


「そりゃあ信頼関係を深めるのは悪くないが、すでにパーティ本申請書まで出しているうちのパーティでは引き抜きなんて今更の話だろ?」

「まあ、そうですけどね。1期生では出してるほうが珍しい訳ですから、学園としても優秀なパーティの自壊を防ぐため当然の処置なのでは?」

「・・なるほどな。」


日陰にいるとはいえ、額から流れ落ちてくる汗を払う。

「そうこう言っているうちに、女性陣の到着ですよ。」

ミランが後ろを指す。


特に意識もせずに振り返る。

・・先ほどまでの会話で想像しておくべきだった。


女性陣は思い思いに粧し込んでいたのだから。


女性陣の水着を色々考えていたにも関わらず、結局記載がそこまで届かずw


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