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競技祭決勝(後半)

隙ありと斬りこむも、相手もさるもの。盾で防ごうとしてくる。

残念だけど、それは狙い通りなんだよ!


狙っているのはただひとつ。

相手の左肩に付いているダメージを判定するためのカードだ。


カードはトランプ程度の大きさであり、意図的に狙うというのは少し難しいが、やってできなくはない。

魔法使いなどは背中につけていて狙いにくいことも多いが、戦士系はだいたい鎧につけてる。


とはいえ、意図的に狙うには難しいアイテムだ。


狙うのには当然理由がある。

決勝戦第2回戦にて、たまたま偶然にこのカードに命中させたチームがあった。

相手のゲージはまだ余裕はあったというのに、『死亡判定が出た』のだ。

・・命中させた方は命中したと理解できてはいなかったが。


「『刺突!』」

・・当てる!

2回めの攻撃が当たる。


赤くなるカード。

やったか?そう思いながらも足を払い無力化を狙おうとするが、そう上手くは引っかかってくれない。

下がった上で槍で突いてくる。

短剣で逸しつつ下がる。


ちらりとだけ見るが、予想通りゲージ上では死亡判定になってない、と。


「『スタン・スマッシュ』!」

ルカのスタン・スマッシュが斧戦士に決まる。

これで10秒程度あいつは動けない。

10秒あれば十分か。


「ルカ、交代だ!」

ルカの後ろへ周り、左側に出る。

まずいと見た槍戦士がこちらへ攻撃をしてくるが、ルカが盾で受けてくれ、俺のところへは届かない。


痺れて身動きができない戦士の左手を通りぬけつつ短剣を腰に挿し、無手の状態になる。

詠唱途中の風魔法使いが驚きながらコチラを見る。


タックルの要領で腰に抱きつき、無理やりに持ち上げる。

「どりゃあぁぁあ」

物理的に投げ捨てる。・・試合場の外へむけて。

そうしてはならないというルールはないため、反則ではないはずだ。

どっと盛り上がる観客席。


基本的に迷宮の通路を想定した競技スペースな上、左隅にいてくれたため、投げ捨てるのは難しくはなかった。

右手にはボンボン。

慌てたのか、魔法をコチラに向けて打ってくる。


見え見えだし直線的すぎるだろ。

詠唱が完成しきれていなかったのか、さほど大きくはない火の魔法をステップすることで避け、接近する。


手加減も何もなしにおもいっきり回し蹴りを放つ。

「ガハッ!」

蹴った部分を抑えながら倒れ伏すボンボン。

感触的にアバラが逝ったか?


しかし、これ以上の追撃はキツイな。

斧戦士がなんとか、という感じではあるが動き始めた。


慌てて斧戦士の背後へと戻り、足を払う。

まだ痺れが残っていたのであろう。あっけなく後ろへ倒れ伏す斧戦士。

首筋へ短剣を突きつけ、大声で叫ぶ。


「審判!?」

明らかに『死亡』が認定できる状況では審判が死亡を判定できる。

これで審判まで向こうについていたらやってられないが、この状況で生存と言える根性はさすがにないだろう。


慌ててコチラを見た審判は、一瞬状況が理解できなかったようだが、

「ああ、そうか・・死亡認定!」

と死亡を認定してくれた。


立ち上がってゲージに目をやる。

さすがに審判の死亡判定は覆せないのだろう。ゲージが死亡扱いになっている。

場外に出てる風魔法使いが死亡判定を受けていないのは納得出来ないが、呆然としていて、こちらを攻撃する様子はないのでまあいいとする。


ボンボンはゲージ上は無傷扱いだ。


観客席から巻き起こるブーイング。

さすがにここまでハッキリとされると分かるよな。どう考えても明らかなジャッジの不平が有る。


槍使いのカードも真っ赤になってるし、いくらトランプ程度の大きさとはいえ見えないわけではないだろうしな。

審判もようやく異変に気づいたようだが、どうすべきか悩んでいるようで、試合そのものを打ち切る様子はない。


と、ここまで防戦一方だった剣使いが無理やり攻撃をする。

シオンの攻撃がクリーンヒットで入るが、それを耐えつつ剣を凪ぐ。

シオンには浅くしか入っていないはずなのに、即出る死亡判定。

当然ながら剣使いは(ゲージ上)無傷扱いだ。


おいおい、だんだんなりふり構わなくなってきたな。

これを誰がやっているかは知らないが、ここまであからさまにするのは『中立』を売りとする学園にとっては後日大問題になるぞ。


「『そこまでじゃ!試合終了!!』」

まるで拡声器で大きくしたような声が響き渡る。


学園長だ。来賓席からこちらへ上がってくる。

後ろには2,30人ほど衛兵がついてきている。


「この試合の採点に関わったものすべてを捕縛せよ、ただちにじゃ。」

学園長の命令で衛兵が待合室に駆け込んでいく。


学園長は観客席に向かい、

「『皆の者、見ての通りじゃ。採点に明らかな不正が認められた。学園の中立性を乱すものたちには厳しい処分をとることを約束しよう。』」

そして、俺の隣まで歩いてくる。俺の手をとって上に挙げる。

「『一期生優勝チームに拍手を!おめでとう。』」


俺は、といえば。

拍手をあびながら、ボンボンをもう2,3発殴っておけばよかったな、などと益体もないことを考えていた。

次回はノーラ視点です。

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