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競技祭予選(予選決勝)

アスは前にあったときとは明らかに違う格好をしていた。

木で作られた競技用の両手斧はともかく、鎧が明らかに新調されており、小手や足に装備しているものも違う。


学生がいきなり金回りがよくなったりはしないだろう。

「・・売り込んだのか。」

「おいおい、人聞きの悪いことを言ってもらっちゃ困るぜ。才能を見込まれたんだぜ?」

事実は何も変わって無いと思うが、物は言いようだな。

考えて見れば『あんなの』でも4大公爵とまで言われる大貴族の跡取りだもんな。取り入る奴は出るか。


アスの仲間の装備もどれもコレも新しい。金があるところは違うね。

これはまあ、あのボンボンからすればこちらを試しているつもりなんだろうな。


仮にこいつらに負けるようであればわざわざ優勝で戦うほどでも無いと見切れるし、こいつらが俺達に負けても決勝戦には出るわけだから露払いとして利用も出来ると。

なかなかよく考えていることで。

しかし、逆に言えばその程度はトーナメントいじってるって事か。

学園は権力に沿わずに独自性を守る、という学園理念があるはずだが、やはり建前って事なのだろうか。


まあいい。

明らかにこっちを嫌っている相手にわざわざ花を持たせる必要も無いだろう。


面倒くさいから聞き流しているんだが、色々と何か自慢らしきことを言っているアスに向かってぼそりと言う。

「・・良いから実力で語れよ。」

「!!!・・貴様・・覚悟しておけよ!!」

顔真っ赤じゃないか。こう言えばそうなると思ってたよ。

・・怒りと言うのは正常な判断を乱す。自分の感情をある程度コントロールするのも戦士の仕事だろうに。

さて、どう料理してやろうかね。


色々と悪態をついているのを無視して位置に付く。

相手は前衛に戦士3人、後衛に魔法使い2、槍戦士1か。

槍戦士は俺の前のアスの後ろになるか。


ハンドサインでノーラを俺の後ろに移動させる。


「はじめ!」

審判の声が響く。

「コレでも食らいやがれ、『ヴォルテックス・アック・・』」

最初から大技で来ることは分かっていたからな。

アスのすぐ近く、30センチ程度の場所に既に移動している。

この位置だと両手斧じゃ攻撃しにくいだろうな。アスが下がろうとすれば踏み込み、左右に避けようとしても同じ距離を保つ。

アスが邪魔になって後ろの戦士は攻撃が出来ない。

「このやろう!」

無理にでも斧を振りおろそうとするアス。


まったく、こらえ性がないな。だからダメなんだよ!

体をアスのほうに入れ込んで、足を払いつつ腕を取って更に加速するように引き込む。当然の結果としてアスは体勢を崩して前のめり、そのまま倒れこむ。

柔道や合気道の技でこういった技が何かありそうだな。・・あまり詳しくは無いが。


アスは無視して後ろの戦士と相対する。

「貴様、無視してるんじゃ・・グッ」

おいおい、見て無いにもほどがあるだろ?

俺の後ろにはノーラがいる。

ノーラの突きが早速決まっているな。

慌てて立とうとしているが、座り込んだ上後ろを向いてたんだ、避けれるはずも無い。


連打を浴びてカードが赤くなる。死亡判定だ。

にもかかわらず、立ち上がって斧を振りかざしてこちらに向かってくる。・・だからお前の攻撃は直線的すぎなんだよ。

するりと避けてまわし蹴りを入れてやる。

狙い通りにお仲間の戦士を巻き込んで倒れる。


「キ サ マ。ふざけるのも大概にしろよ!」

顔を真っ赤にしているアスを無視して審判をみる。

死亡判定を受けたにもかかわらず攻撃をしてくる奴は問答無用で失格扱いのはずだが。


審判が大きく笛を鳴らす。

「勝負あり!」

アスはそこでハッとしたかのように審判を見る。


「お前は周りが見えて無さすぎなんだよ。・・突破力はあるかもしれないが、それじゃ囲まれて終わりだろ。」

われながらおせっかいだとは思うが忠告してやる。

こいつの突破力はうまく利用できれば価値はあるだろう。ただ、本当にそれだけだ。

今のままじゃ制御できない猛牛みたいなもので、まったく役にはたたない。

『ヴォルテックス・アックス』を使えるってことはそんなに能力が低いわけでもなかろうし、そのあたりの能力を身につけて必要なときにだけその突破力を発揮できるようにすれば冒険者として名前をあげることは出来るだろうに。

今のままじゃ卒業後すぐに迷宮で死ぬ羽目になるだろうな。

改善するもしないもこいつしだいだけど。


予選決勝戦なのに相手の反則で勝つと言うイマイチ盛り上がりには欠ける展開になってしまった。

既にルカもシオンも担当していた戦士にダメージを入れており、全滅までさほど長くはかからなかっただろうが。


それでもこの展開はちょっと予想外なのだが・・。心配してノーラを見る。これで策が失敗したら眼も当てられないが。

ノーラは近寄ってきて

「現時点では影響はわからない。・・念のため本戦でも実力を発揮しておいて。」

とだけ耳打ちしてくる。

まあ確かに、急に弱くなったように見られるのも業腹だしな。


明日の本戦でも暴れてやりますかね。

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