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パーティ本申請書

目の前に出された『パーティ本申請書』に少しだけ驚く。

既に女性陣の名前が書かれていることにも驚きだ。


「いずれこの申請書の話はしよう、とは思っていたが・・」

「なら、良いじゃないですか。」

ミランが気負わずに書類を引き寄せ、さらさらと名前を書き始める。


メリットが少なすぎる、いや、デメリットが大きすぎるというところだろうか。

誰かが単位を取れなければ全員留年、最悪は全員退学となる。


正直、俺から今この申請書の話をするのは憚られた。

この話をするというのは、今後ありえるかもしれないボンボンからの攻撃に対して一蓮托生となることを意味する。


いや、そもそも『アキラ』には何の後ろ盾もないのだ。

虎の威を借りるつもりはないが、後ろ盾を皆に借りるような形になってしまいかねないので、言い出すことは出来なかった。


ミランが必要事項を書き終えて俺に回してくる。


「・・いいのか?」

皆を見渡して訪ねる。

「前も言っただろう。我がパーティのリーダはお前だよ。」

少し微笑みながらシオンが。

「・・(コク)」

目があったルカはただうなずくだけ。

「いまさらでしょ。」

リーゼがやや困ったような顔で。

「期待していますよ。」

ミランはしっかりとこちらを見ながら。

「皆一蓮托生と言うことで、分かりやすいんじゃない?」

ノーラが少し人の悪い笑みを浮かべている。


「言いだしっぺはノーラか。」

「悪いとは思って無いわよ?・・こちらにもリターンのある話だから。」


やれやれ。

どんなリターンを見込んでいるのか知れないが、大きな借りになりそうな気がするな。


書類に必要事項を記載していく。

まだ2度目だが、リーダに探索者と書くのはやはり不思議な印象があるんだが。


本申請でリーダが探索者だというのはかなり珍しいんじゃないか?

そんなどうでも良い事を考えながら記載を終える。


翌日から4番入り口で戦うことだけを決め、本申請を受付に提出しに行った。


・・受け付けた先生はかなり驚いていた。

そりゃま、1期生でコレを出すなんて多分前代未聞だよな。


色々とデメリットを説明していたが、こちらの意志が固いことを理解してあきらめて紙を受け取る。

「・・1期生からコレが出るようになるか・・」

深々とため息を付いていたのが印象的だった。



翌日から4番入り口に入ることになった。

そして、他のパーティを見る機会にも恵まれたのだが・・・。


「嘘・・だろ?」

少し前で戦っているパーティを見て愕然とする。

連携もクソもあったものではない。個人が個人の判断で戦っている。

いや、それ自体は悪いとはいえない。あらかじめ打ち合わせた上なのであれば。


回避の高い敵に対してがむしゃらに武器を振り回している戦士がいると思ったら、守りの堅い敵に攻撃をはじかれて窮地に陥りかける戦士。

魔法使いはいるものの、戦士がそんな感じなものだからどちらから攻撃するかを迷っているようで攻撃できていない。

間違えて戦士に当てたら、と思うとアレじゃ魔法は打てないよな。


放置して先に進みたいが、割と入り口の近くで他の道が無いようなところでコレだ。


横殴り(他のパーティが戦っている敵をとる行為)は最悪のマナー違反だとされているし、さっさと倒してくれないかね。


らちが明かないと感じたのだろう。

「いったん下がるぞ!」

と叫んでこちらに向かって逃げてくるパーティ。


ウチのパーティには気が付いたようだが、かといって今更体勢を整えて迎え撃つのも難しいだろう。


「悪いが任せた!」

と言ってうちのパーティの後ろに下がる。


これはこれで「なすりつけ」と呼ばれるマナー違反行為だけど、まあしょうがないよな。


硬い「ストーンゴーレム」が2体、すばしっこく回避し、電撃で攻撃してくる「ウイスプ」が1体。

コレに苦戦するというのが標準なのか?・・1期生とはいえ弱すぎじゃないのか?


多少は苦戦したほうがいいのか?

すぐ近くまで来た敵をどうするべきか一瞬の逡巡。


しかし、皆は迷うことはなかった。

それはそうだ。8番入り口ではこのストーンゴーレム(下級)より一回り強いストーンゴーレム(中級)と戦っているんだから、今更苦戦するような敵でもない。


ルカがシールドバッシュでストーンゴーレムを弾き、メイスによる強打を入れる。

ウイスプを一刀で切り捨てるシオン。


俺の目の前に来たもう一体のストーンゴーレムにノーラの石突が決まる。

ここまで来たら今更だな。そう思いつつ一歩だけ下がる。


たたらを踏むような格好になった2体のストーンゴーレムにミランの魔法が突き刺さり、3体はあっと言う間にカードになる。


「は、はい!?」

後ろでなにやら騒がしいが、面倒くさい。


「いくぞ。」

何か話しかけてこようとしているのを無視して先に進む。

こんな面倒が増えるようなら迷宮に挑むのを午前中にしてもいいかもしれないな。


強い敵が出てくるエリアまで進めば、ほとんど他の学生を見かけることも無くなった。

ここまでどうやって早く来るかが問題だな。

2、3日の間には確立するか。


そうやって通り道などを確立している間に、8番入り口が完全攻略されたと噂になった。

結局隠し扉をどう攻略したんだろうな?そう思いながらも特に悔しさは感じない。


まあどうせ本当の迷宮じゃないしな。

アレだけ金をかけれれば学園迷宮くらいであれば余裕だろう。


とはいえ、「本物の」迷宮では手加減してやる義理は無いが。

悔しくないと言いつつ、結構主人公怒ってますね。

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