アキラの事情
主人公がイマイチがっついてない理由的な話です。
ボンボンに会った翌日は完全休日とした。
正直、8番入り口に入るなと釘を刺されたのが痛い。
ウチのパーティはある意味特殊だというのは理解していたため、なるべく人の少ない入り口に行きたかったのだが・・。
こっちとしても奴らとは会いたくはないし、そういう意味で他の入り口の進捗や込み具合を調べる日が必要だった。
競技祭は気になるものの、まだ一ヶ月半以上先の話だ。今から気にしていてもしょうがないだろう。
ノーラが打つという手を待つ必要もあるしな。
ミランが一緒に行きたいと言い出したので、一緒に見てまわり、調べたところ、大体こんな感じでまとまった。
1番:地図完成率8割 ボス撃破報告少数 難易度 やや低い
2番:地図完成済み ボス撃破報告多数 難易度 低い
3番:地図完成率7割 ボス撃破報告なし 難易度 最初低い 途中から高い
4番:地図完成率5割 ボス未発見 難易度 最初普通 途中からやや高い
5番:閉鎖中
6番:地図完成率6割 ボス撃破報告少数 難易度 最初やや低い 途中から普通
7番:地図完成率3割 ボス未発見 難易度 高い
ミランのお勧めの店で2人で話しながら食事をする。
「どう思う?」
「そうですね・・今のところは7番が一番よさそうですが・・」
「・・またあのボンボンが着そうなんだよな。」
あのパーティには探索者いなかった。しかし、8番入り口のボスを倒すには隠し扉を発見する必要がある。
さすがに学園側も毎回同じ隠し扉を配置するとは思えないし、仮に同じ位置にあったとしても探索者なしで開けるのは難しいだろう。
その点に気が付いてはいたが、あの場でわざわざ忠告してやろうとは思わなかったが。
8番を攻略できないとなれば、次に難易度の高い7番を狙ってきても不思議はない。
「そういえば3番は難易度が高いのに割合攻略されているな。ボス部屋も見つかってるのか。」
「そこは意地みたいですよ。最初に3番で手荒な歓迎を受けたパーティが挑戦しているようです。最も全滅パーティが多い入り口だとか。・・無理せずに他の入り口に行けばいいと思いますが。」
ミランが笑いながら言う。
「・・適当なのは4番くらいか。」
「そうですね。とはいえ、一度1番や2番で弱い魔物のカードを集めておくのも良いかもしれませんね。単位のためにも。強い魔物は既に必要数抑えれていますから。」
「あれは人多すぎだろ。」
今日チラッと見ただけでもかなりの人数が入っているようだった。集めるために入る必要があるとしても、ある程度時間がたって他の入り口に人がはけてからでも良いだろう。
「合理的ですね。」
「そうか?・・まあ院の教育方法がそうだったからかもな。」
ずいぶん厳しかった記憶がある。ま、自分の記憶じゃないからインパクトはやや薄めだけど。
「・・少し立ち入ったことを聞きますが、孤児院の出身なんですか?」
「ん、ああ。」
そう珍しくもないだろう。身分が低い、あるいは無いものが立身出世を目指して冒険者を目指す。
どこにでもある話だ。
「・・・それにしては・・・いえ、何でもありません。」
「なんだよ、気になるじゃないか。」
「何でもありませんよ。・・少し話を変えますが、ウチのパーティの中で好みなのはどの娘ですか?」
ぶ。
危うく飲み物を噴出すところだった。
何で急にそんな話になる・・・。とりあえず何も考えずに切り返す。
「ミランこそどうなんだよ。」
「エルフに『そういう』話題を振るのは50を超えてからにしてくださいよ。」
そっか、そういえばエルフは長命な種族ゆえ15で成人と認められはするものの、結婚したりするのはずいぶん先だものな。
「悪い、そういえばそうだったな。・・しかし、急に話題を変えてくるな。」
「同室の人によると男同士はこういう会話で親睦を深める、と聞いたものですから。」
にこりと悪気無く微笑む姿に毒気を抜かれる。
「・・それは騙されてるぞ・・間違いなく。」
「そうなんですか?しかし、実際どうなんですか?」
ため息を一つ付く。
「皆それぞれ魅力的だとは思うんだけどな。・・孤児院暮らしが長かったせいか、イマイチそういう気分にはならないんだよ。」
コレは本当だ。むしろこういった方面では『アキラ』としての記憶が優先されているようだ。
院じゃ男も女も関係なかったからなぁ。その上で院長が非常に厳しかったし。
「ま、せっかくうまくパーティがまわってるし、そういったことでトラブルになるよりはましだと思ってるけどな。ま、それ以前に皆高嶺の花だろ・・俺にとっては。」
なんといっても孤児だからな。相手は少なくとも騎士爵以上ばかりだし。身分が違うとかそういうレベルじゃないよな。
・・そういう意味では少しさびしいかな。
ミランが少しだけ複雑な顔をする。
「・・姉は・・いえ、姉だけではありません。皆、冒険者として名を上げない限り、将来意に沿わない相手に嫁がせられることになります。」
「・・そ、そうなのか?」
「ええ、なので期待していますよ。・・貴方とならせめて名を上げるチャンスは多そうだ。」
鋭い眼差し。
眼をそらさずに答える。
「ま、出来る限りは頑張ってみるさ。」
にこりと笑う。
「僕も頑張りますよ。冒険者として高い評価を得れば選択肢が多いですからね。」
その後、店を何件か冷やかし、晩御飯と言うにはやや早い時間にいつもの食事どころに着いた。
別に約束していたわけではないが、既に他の4人も集まっていた。
だが、少し入ったときの視線がきつかったような・・?
タイミング悪かったかな?
まだまだ先の話と言いつつ、(話数的な意味で)競技祭はわりとすぐそこですw




